取締役とは?わかりやすく

 

企業に勤めていれば、何らかなの形で係わりを持つことになるのが取締役という立場の方々です。

大企業に勤めていれば、「取締役は雲の上の人」という感覚の方もおられるでしょうが、時には以前の上司が「取締役に就任した」なんてニュースを耳にすることもあるでしょう。

また、小さな会社なら自分の直属の上司が「取締役である」というパターンも多いでしょうし、仲間と会社を設立することになり、「取締役になって欲しい」なんて依頼を受けることもあるはずです。

しかしながら、この取締役という立場は一般の社員とは大きく扱いが異なる上、ネットで詳細を調べようとしても難しい説明が出て来るばかりで、『今一つ実態が見えてこない』というのが実情なのではないしょうか。

そこで本日は「取締役とは?わかりやすく解説致します!」と題して、取締役という立場の実態に迫ってみたいと思います。

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取締役の立場

社会に出て間もない方ですと、「取締役」と聞くと漠然と『会社の偉い人・・・』くらいのイメージしか持っておられない方もいらっしゃるかと思いますので、まずは取締役という立場のご説明から解説を始めていきましょう。

過去記事「会社の種類の比較と解説をお届け致します!」の中でも触れていますが、株式会社を設立するに当たっては、会社法の定めによって一定数の役員を置くことが原則となっており、その内訳は取締役が3名、監査役が1名です。(取締役1人という特例もありますが、こちらは「新会社法の影響」の項で後述します)

よって、株式会社の設立に取締役は欠かすことの出来ない存在となっていますが、実はこの取締役という立場は社員でもなければ、役職でもなく、「会社の運営を取り仕切る機関」という位置付けであり、会社と取締役の関係は『会社(株主)から経営を委任された者(会社と経営に関する委任契約を結んだ者)』ということになります。

そしてこうした立場である故に、労働基準法などによる就業上のルールは適応されませんし、雇用保険や労災保険などにも加入できないのがルールです。(但し、実際に業務を行っていれば社会保険への加入は可能)

またその報酬も給与ではなく、役員報酬という位置付けになりますから、一度金額が決定すると1年間は変更が効かないといった独自のルールが適応されることになります。

では、取締役になるにはどんな資格が必要なのでしょうか。

まず一番大切なことは「会社から指名(委任)を受けること」となりますから、『株主総会にて選任を受ける』ことが必要となります。

なお自分で起業した場合などは、自身が最大の大株主となることが多いでしょうから、自分で自分を代表取締役に任命している状態となるのです。

但し法律上、株主となれないケースも定められており、成年被後見人や被保佐人、一定の罪を犯した過去のある者などがこれに当たります。(未成年者は法定代理人の許可が必要)

因みに「破産者は取締役になれない」なんてお話も耳に致しますが、こちらは誤った情報ということになるでしょう。

ただ、現在取締役の者が自己破産をした場合には、「一旦解任される」ことにはなりますので、その点はご注意下さい。(一度解任された後、再度就任することが出来ますから、取締役になれない訳ではありません)

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取締役の責任

ここまでの解説をお読み頂ければ、取締役の立ち位置についてはおおよそご理解頂けたことと思いますので、ここからは取締役が負う責任についてお話しして参りましょう。

取締役は会社(株主たち)から経営を委任されている立場ですから、当然ながら重い経営責任を負わされています。

では、万が一会社が倒産する様なことになった場合、会社が抱えていた負債なども取締役が引き継がねばならないのでしょうか。

まず結論から申し上げれば、この疑問に対する答えは基本的に「No」ということになります。(株式会社の場合)

会社組織等のことを「法人」なんて呼び方を致しますが、法律上、法人は人間ではないものの「人」として、認められる存在となります。

よって銀行などから借り入れをしたとしても、それは「あくまでも法人が借りた」ことになりますから、経営を任されている取締役に責任が及ぶことはありません。

但し、借り入れをする場合などには「代表取締役に連帯保証人になって欲しい」なんて条件が金融機関から提示されるケースが殆どですから、実務上は責任を逃れられないケースも多い様です。(連帯保証の場合は当然、責任を負うことになります)

また、連帯保証人となっているケース以外でも、以下の場合には取締役の責任が問われる可能性があり得るでしょう。

取締役に明らかな落ち度がある場合

前項において「法人は別人格だから、原則として取締役に責任はない」なんてお話しを致しましたが、法人が勝手に経営判断を行えるはずもありませんから、明らかに方向性を誤った事業上の判断を取締役が行えば、その責任を会社に対して負わねばならない場合があります。

既にお話した通り、取締役は会社(株主たち)から経営を委任されていますが、業務を行う際には「善良なる管理者としての義務(善管注意義務)」を負うことになりますので、『明らかに採算の合わない事業に多額の投資を行った』なんて場合には、この注意義務に違反したことになる訳です。

そして、こうしたミスを犯した者には「任務懈怠責任(にんむけたいせきん)」という責任が生じることとなり、会社から損害賠償を求められる可能性があります。

但し、ビジネスの世界は「生き馬の目を抜く」とも言われる厳しい世界ですから、時には取締役の思い切った経営判断も必要になりますし、これが大失敗に繋がるケースもありますよね。

もちろん法律も、こうした取締役の判断(経営判断の原則)が重要であることも認めていますから、問題が発生した場合には、その取締役の行為が「任務懈怠責任」であるのか「経営判断」であるのかという点で、慎重な判断がなされることになります

第三者から損害賠償を求められて場合

さて、会社が経営破綻などに陥った場合には、第三者にも大きな損害が生じるものです。

例えば建築会社が、下請け会社に多くの工事を依頼して、一部の工事が完了している状態で倒産をすれば、下請け会社は未回収の工事代金を請求して来ますよね。

こうした状況において、取締役は個人的に責任を負うのか否かは、非常に気になるところかと思いますが、その答えは「取締役に悪意や重過失がある場合は、責任を負う」ということになります。

倒産するのが判っていたにも係わらず発注を行ったのであれば、完全に「悪意があった」と判断されることになりますし、取締役という立場にありながら、どんぶり勘定で経営を行っていた場合には重過失が認められる可能性もあるでしょう。

但し、「法人は別人格」という大前提がありますから、軽度の過失については、被害を被った第三者も責任を追及することは出来ないのです。

 

さてここまで、「法人と取締役が別人格」という前提にも係わらず、取締役がその責任を負わされるパターンを見て参りました。

そして、ここで気になるのが、これまでとは反対に「取締役の個人的な行動が会社に影響を及ぼすことはないのか」という点なのではないでしょうか。

近年では様々な立場の方の不祥事が報道されおり、時には取締役が犯罪に手を染めることもあるでしょうし、取締役が自己破産してしまうケースだってあるはずですが、原則として取締役の行為について会社が責任を負うことはありません。

冒頭でも申し上げた通り、会社は取締役に経営の委任を行っているだけですから、取締役個人の行いは会社とは無関係と判断される訳です。

但し、業務中に取締役が事故を起こしたケースなどには、会社法の定めによって「会社が責任を負わされる」ことになりますので、この点だけはご注意頂ければと思います。

新会社法の影響

会社関連の法律を調べていると、時折目にするのが「新会社法」なるワードです。

実は現在運用されている会社法は「2006年から施行」という非常に新しいもので、それ以前には複数の会社関連の法律をまとめて「(旧)会社法」と称していました。

そして新たな会社法の設立によって、「有限会社の設立が不能になる」など様々な制度変更が生じることになりましたが、本項ではこの改正に伴う取締役関連事項の変更点を解説して参ります。

まず一番大きな変更点として挙げられるのが、これまで4人の役員(取締役3名、監査役1名)が必要であった株式会社の設立が、特例を用いることによって、取締役1人でも設立が可能となった点です。

但し、この特例を利用するには「株に譲渡制限を付ける」などの一定の条件をクリアーする必要があります。

また、この一人取締役が可能となったことで、以前に横行していた「会社を作るので、名前だけ貸して欲しい」という取締役の名義貸しを行う必要もなくなりました。

名義貸しが行われていた頃は、「名前を借りるだけで、一切迷惑は掛けないから」なんて甘い言葉に乗って、重い責任を負わされる(「取締役の責任」の項を参照)方も少なくありませんでしたが、近年ではこうした被害もかなり減少している様です。

ただ、過去の犯罪歴などから取締役になれない方が、名義貸しを求めて来るケースは未だにあるようですから、この点には是非ご注意を頂ければと思います。

因みに一人取締役が可能となったことにより、取締役会や監査役の廃止も出来る様になりましたから、これから企業を目指す方にとっては、非常にありがたい変更ということが出来るでしょう。

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取締役まとめ

さてここまで、株式会社には欠かせない取締役という立場について解説を行って参りました。

会社役員というと、「偉そうにふんぞり返っている・・・」というイメージの方も多いかと思いますが、重い責任を背負いながら必死で頑張っておられる方も多い様ですから、是非温かい目で見て頂ければ幸いです。

ではこれにて「取締役とは?わかりやすく解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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