現在、我が国が抱えている大きな問題の一つが「少子高齢化」となります。
生まれて来る子供の数が減り続ける中、高齢者ばかりが増えていく状況は、誰が聞いても「非常にマズイ」ことあるのは自明のことでしょう。
もちろん政府も、少子化に歯止めを掛けるべく様々な試みを行っているところですが、それ以上に深刻なのが高齢者問題への対処となります。
今、我が国が抱える65歳以上の高齢者数は3000万人を超えると言われており、総人口に占める割合は25%と過去最高。
そして20年後にはその割合が30%を超える予測となっていますから、高齢者の介護等について、様々な対策が必要となっているのです。
そこで本日は「介護保険法とは?わかりやすく解説致します!」と題して、我が国における介護制度の実態に迫ってみたいと思います。
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介護保険法の成り立ち
現在、我が国の介護制度の根底を支えているのが、介護保険法という法律となりますが、実はこの法律、施行されてから僅か20年という非常に新しいものとなります。
実はこの法律が出来る以前にも、老人福祉法という法律が存在しており、70歳以上の高齢者の医療費を国が全額負担する制度が執られていました。
しかしながら増え続ける高齢者の数に財政が破綻を来たし、新たな介護制度の確立が急務となっていたのです。
こうした状況の中、施行されることとなったのが介護保険法であり、その主な内容は保険制度によって破綻した介護制度を立て直すというものでした。
なお財政が破綻したいっても、以前の老人福祉法は今もなお存在はしていますし、「高齢者の医療の確保に関する法律(1982年施行、2008年の大改正により改称)」によって高齢者の医療費負担を10%に軽減するなど、他の法律による介護制度の下支えがあることもまた事実です。
但し、現行制度の中では介護保険法が介護制度の大部分を担っているのは紛れもない事実ですので、今回はこの法律を軸にして介護制度の解説を行って参ります。
介護保険法の概要
前項にて、介護保険法は「保険制度に我が国の介護制度の立て直しを図った」と申し上げましたが、まずはこの点から解説を進めて参りましょう。
過去に介護制度の根幹を成していた老人福祉法では、70歳以上の高齢者の医療費を賄うために、税金が投入されていました。
但し、少子化が進む中、この方法を続けていたのでは「財政が破綻するのは火を見るより明らか」です。
そこで介護保険法では、健康保険と同様に保険制度を執ることにより、財源を確保することにしました。
さて、ここで気になるのが「実際に介護保険制度を運用する上で、誰がどれだけの費用を負担しているのか」という点であるかと思いますが、その内訳は国や地方自治体が50%(税金)、40~64歳が負担する保険料が約30%、65歳以上が負担する保険料が20%となっています。
つまり介護保険法においては、給付を受けることになる「65歳以上の高齢者も保険料を支払い続ける仕組み」になっているのです。
ではこの保険制度では、具体的にどの様な運用が行われているのでしょうか。
特徴的な点を以下にまとめて参ります。
保険料の支払い義務と給付が受けられる者
介護保険法では、その保険料の支払い義務を負う者は40歳以上の者と定めらています。(健康保険と同様、法令により保険への加入義務が発生)
また、一般的には介護保険のサービスが受けられるのは65歳以上と思われていますが、実は40歳以上であれば状況次第で保険の給付を受けることが可能です。
介護保険法では、40~64歳の者を第1号被保険者、65歳以上の者と第2号被保険者と定義しており、第1号被保険者でも若年性の認知症やガン等の疾病に対しては、給付を受けることが出来ます。
なお、保険の給付が開始された後は、原則10%の自己負担にて様々なサービスを受けることが可能となるのです。(但し、年収によっては自己負担率が20%以上になることも)
介護保険制度のサービス
保険の給付というと、「お金がもらえるのでは?」と思われる方もおられるでしょうが、介護保険においては原則「様々なサービスを僅かな自己負担金で受けることが出来る」という内容になります。
具体的には自宅に業者が訪問しての入浴をさせたり、家事の補助やリハビリのお手伝いをすること等がこれに当たります。
また、街を歩いているとデイサービスやデイケア―などの施設を見掛けることがありますが、こうした施設に一時的に高齢者を収容して、運動や脳トレ、リハビリ等を行うことや、特別養護老人ホームなどに入所して、生涯に渡って介護を受けることも、介護保険制度のサービスの範疇となるのです。
この様に、保険の給付を受ける方の状態に合わせて、多種多様なサービスを受けることが出来る点も、介護保険制度の特色の一つに挙げられるでしょう。
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介護保険制度について
前項にて、介護保険の概要についてご説明を致しましたが、本項ではより具体的にこの制度の内容に切り込んで行きましょう。
保険の給付を受けるには
「65歳以上になると、自動的に保険の給付が受けられる」とお考えの方も多いかもしれませんが、実は介護保険を利用するには一定の手続きが必要となります。
そして、その大前提となるのが「介護認定」という制度における「要支援1~2」「要介護1~5」の認定を受けることです。
介護認定とは、介護保険法にて定められた被保険者(サービスを受ける人)の状態を表す認定であり、どのクラスの認定を受けるかによって、受けられるサービスも変わって来ます。(クラスによって給付を受けられる金額の上限も異なります)
よって申請を行ったものの、どのクラスにも当てはまらない(認定を受けられない)と判断された場合には、保険の給付自体を受けることが出来ないのです。
では、この認定を受けるにはどんな手順が必要となるのでしょうか。
介護認定はそれぞれの方が暮らす市区町村等の行政機関が、その申請窓口となります。
所定の書式に必要事項を記載し、介護保険証・診断書等を添付して提出を行うと、後日、訪問による面談の審査が行われ、介護支援専門員(ケアマネージャー)や審査会での検討を受け、認定が行われることになるのです。
地域包括支援センターと介護支援専門員(ケアマネージャー)
前項にて介護支援専門員(ケアマネージャー)という用語が出て参りましたが、こちらは介護保険法の施行に伴って新設された介護関連の資格となります。(資格を得るためには都道府県が実施する試験への合格が必要)
ケアマネージャーの主な仕事は、介護を受ける方やその家族と相談しながら、介護保険法に基づいた介護の計画(ケアマネジメント)を立てることであり、例えば「Aさんには週2回のデイサービスが必要と思われる」、「Bさんについては訪問による入浴介護とリハビリのサービスを受けるべきだ」といったプランを作成して行くこととなりますから、前項にて触れた介護認定には欠かせない存在となる訳です。
なお、ケアマネージャーの勤務先は各種の介護施設など様々なですが、その代表的なものの一つとなるのが、地域包括支援センターとなるでしょう。
こちらの地域包括支援センターも、ケアマネージャーと同様に介護保険法の定めによって置かれることとなった施設であり、その多くが市区町村によって運営されています。
地域包括支援センターには、ケアマネージャーや保健師などが常駐し、地域住民の介護に関する相談等に対応するのが任務となっていますから、この施設は言わば「介護相談の最前線基地」とも言うべき存在なのです。
介護保険の対象となるサービス
では最後に、介護保険によって受けることが出来るサービスについて、解説させて頂きます。
特別養護老人ホーム等
介護と聞いて、真っ先に老人ホームを頭に浮かべる方も多いかと思いますが、もちろん老人ホームへの入所に際しても介護保険の利用が可能です。
但し、一言で老人ホームといっても、特別養護老人ホームや介護医療院等の行政が運営する施設から、有料老人ホーム等の民間企業が運営するものまで、様々な種類が存在しています。
行政が運営する特別養護老人ホームなどは当然ながら費用も安く済みますが、それだけに人気が高く、入所の順番待ちに数年物期間を要する場合もあるようです。
また、民間が運営する施設の中でも、特定施設(特定施設入居者生活介護の認定を受けている施設)については、行政が運営するものよりもコストが掛かるものの、毎月定額での入所が可能となります。
一方、この認定を受けていない施設では「入所する場所のみが提供され、介護のサービスは個々の業者と別途契約をする」というシステムが執られているため、選択するサービスによって利用料金に大きな差が出ることになるのです。
短期宿泊サービス
前項の老人ホームが長期の入所を前提にしているのに対して、短期宿泊サービスは同居する家族が旅行に行く際などに利用されるものとなり、「ショートステイ」などの呼び名が一般的です。
また、ショートステイと言っても様々なタイプのものが存在しており、宿泊と同時にリハビリのサービスを受けることが出来るタイプの施設や、有料老人ホームの個室を短期で提供するものなど、用途によっての使い分けが可能となります。
通いで受けるサービス
近年、街中で見かけるデイサービスやデイケアがこれに当たります。
基本的には、デイケアが介護に加えてリハビリを行う施設、デイサービスが機能訓練やレクリエーションをメインとした施設という区別がなされていますが、サービス内容については実に様々なパターンがある様です。
訪問サービス
家事や掃除の補助、入浴やトイレのお世話など、自宅での日常生活に手助けが必要な方が受けることになるのが、この訪問サービスです。
また、このサービスの中には自動車で浴槽を運んで入浴をさせてくれるものや、出張看護、出張リハビリなど、実に多くのバリエーションが存在しています。
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介護保険法とは?まとめ
さてここまで、介護保険法というテーマでお話をして参りました。
冒頭でもお話しした通り、今や介護は我が国で直面する最重要課題の一つであることは間違いがありませんし、何時かは必ず自分自身の身にも降り懸かって来る現実ですから、この機会に是非、介護制度に関する知識を身に付けておいて頂ければと思います。
また若い方にしてみれば、保険料を負担することで今後高齢者たちの生活を支えていく立場となりますから、「大きな重荷だ・・・」と思われるかもしれませんが、第二次世界大戦で焼け野原となった我が国を立て直して来た先人たちのために使われる資金となりますから、感謝の念を忘れずに国民の義務を果たして頂ければ幸いです。
ではこれにて、「介護保険法とは?わかりやすく解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
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