皆様は「法律家」という言葉を聞いた際に、どんな職業を頭に思い浮かべるでしょうか。
最も多い答えは、おそらく「弁護士」となるかと思いますし、少々法律に詳しい方からは「裁判官」や「検察官」なんてお答えが飛び出すかもしれません。
ところが我が国には、もう一つ「司法書士」と呼ばれる法律家が存在しており、実は私たちの生活に欠かせない最も身近な存在であったりもするのです。
そこで本日は「司法書士とは?わかりやすく解説致します!」と題して、知られざる司法書士という法律家の実態について解説させて頂きたいと思います。
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司法書士とは?
司法書士と聞いて、直ぐに「どんな職業であるか」が頭に思い浮かんだ方は意外に少ないのではないでしょうか。
また、「不動産を売買した際に依頼を行った・・・」「会社を設立する際にお世話になった・・・」なんて方も多いかもしれません。
実はこの司法書士という仕事は、明治時代に制度化された代書人(だいしょにん)という職業に由来するものとなっています。
司法制度が出来たばかりの当時の日本では、裁判を起こすにも訴状などの書類を作成出来る者は殆どいませんでした。
そこで代書人という法的書類作成のプロを育成することになった訳です。
因みにこの際、代言人(だいげんにん)という「裁判で当事者の代理を務める職業」も生まれましたが、こちらは現在の弁護士の祖とされていますから、弁護士と司法書士はその生まれから深い関わりを持つ職業と言えるでしょう。
こうして誕生した司法書士は、第二次世界大戦後に施行された司法書士法により更なる制度整備を加えらえながら、現在の「最も身近な法律家」としての地位を確立して行くことになったのです。
司法書士の主な業務
さて、そんな司法書士は一体どんな仕事を主に行う職業なのでしょうか。
以下にその主な業務をご紹介してみたいと思います。
不動産登記・法人登記の代理
法務局にて行う各種登記の代理は、司法書士が請け負う仕事の中でも最もポピュラーなものとなるでしょう。
登記に関する詳細は別記事「法務局とは?わかりやすく解説致します!」にて詳しく解説しておりますが、不動産登記における「所有権の移転」や「抵当権の設定・抹消」等は、不動産取引において欠かせぬ手続きとなっているでしょうし、
法人登記においては「会社の設立登記」に「役員変更」などがありますから、一言で登記の代行と言っても、司法書士が請け負う仕事は実に多岐に及びます。
なお、司法書士の業務を監督するのは法務局である上、登記の代行は司法書士の独占業務とされていますから、「登記こそが司法書士の本業」とも言うことが出来るでしょう。
裁判所・法務局等に提出する書類の作成
続いてご紹介するのが、裁判所や法務局に提出する書類の作成業務となります。
前項にて、法務局にて行う登記の代行は「司法書士の独占業務である」とご説明致しましたから、法務局に提出する書類の作成も仕事の一部となるのは当然ですが、裁判所に提出する訴状や答弁書などの作成も司法書士は請け負うことが出来るのです。
冒頭の「司法書士とは?」の項でもお話した通り、司法書士という職業は本来、裁判所への提出書類を作ることが主たる業務だったのですが、近年では弁護士が訴状等を書くのケースが多く、今ではこうした業務を請け負う機会は減少傾向にある模様。
しかし司法書士の資格取得には、未だに訴状や答弁書の書き方の知識は必須とされていますから、弁護士を擁立せずに訴訟を起こす場合などには、司法書士に書類作成を依頼するのが良いでしょう。
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供託に関する手続きの代理
供託については、過去記事「供託とは?わかりやすく解説致します!」にてその詳細をご説明していますが、簡単にご説明するならば、国が行う財産の預り制度を指す用語となります。
選挙に出馬する際の保証金の差し入れや、賃貸物件で大家さんとトラブルになり、賃料を受け取ってもらえない時などには、資金の供託が必要となりますが、
預入れに当たっては、書類の作成や厳密な法的根拠の明示が必須であり、素人には少々荷が重い点も多く、ここで供託の代理を行ってくれるのが司法書士という訳です。
後見人・保佐人等の代理
認知症などを患い、物事の正常な判断が困難となってしまった場合に利用されるのが、被後見人や被保佐人等の制度となります。
これらの制度を利用する際には、家庭裁判所の審判を受けた上で、登記(被成年後見人等の登記)を行う必要がありますが、
一度手続きが完了すれば、不動産の取引など重大な法律行為に対して、後見人や保佐人などの代理や同意が必要となりますから、知らぬ間に本人が契約などを終えていても、財産の散逸を防ぐことが出来るのです。
もちろん、親族の方がこうした後見人等の地位に就くことも可能ですが、素人では判断に困ることも多いでしょうし、それなりの手間も掛かるもの。
そこで司法書士に依頼を行えば、親族の代わりに後見人などを任せることが出来るのです。(弁護士も後見人等に就任出来ます)
相続に係る業務
続いてご紹介するのが、相続に係る業務となります。
例えば、遺言書を作成する際などには、司法書士は法律家と大いに力を発揮することになるでしょう。(遺言に関する詳細は別記事「遺言書の種類と作成方法などを解説致します!」をご参照下さい)
また、「相続の順位や割合について解説!」の記事にてお話した法定相続分の割合や、遺産分割協議書の作成に関しても充分な知識を持っているはずですから、安心して相続関連業務をお任せすることが出来るはずです。
更には、司法書士は職権で戸籍謄本を取得することが出来ますから、隠し子や行方が判らない相続人がいる場合でも、相手に辿り着ける可能性が高いですいし、登記の専門家ですから、相続財産に不動産が含まれている場合には非常に便利でしょう。
司法書士に出来ること、出来ないこと!
これまで司法書士の主な業務内容についてお話して参りましたが、「法律家とは言っても、弁護士とはだいぶ違うのね・・・」という印象をお持ちの方も少なくないことでしょう。
確かに弁護士は、依頼者のあらゆる法律行為の代理人となることが可能であり、当事者に代わって民事訴訟を戦うことが出来る権限も与えらえています。(詳しくは「弁護士とは?という疑問にお答えします!」の記事をご参照下さい)
こうした点を考えれば、確かに司法書士には案件の解決を任せられない事態も多々あることと思いますが、実は近年、こうした司法書士の立場に大きな変化が生じているのです。
実は平成14年の司法書士法の改正により、100時間に及ぶ特別研修を経て、試験に合格した司法書士には訴額140万円以下の民事裁判や調停にて、当事者の代理を務められる制度が設立されました。(認定司法書士制度)
これによって司法書士は、140万円という訴額の制限こそあるものの、ケース次第で弁護士と同様の業務を行うことが可能となったのです。
その上、司法書士の依頼料は弁護士に比べてかなり安価な場合が多いですから、借金問題に絡む任意整理や、交通事故の示談交渉などにおいて、その活躍が期待されています。
司法書士の資格取得について!
この様にトラブルに直面した際には、非常に心強い味方となってくれる「身近な法律家」である司法書士ですが、その資格を取得するためには相当な労力が必要となります。
司法書士の資格は国家資格となっている上、司法試験や公認会計士試験に次ぐ程の難易度(税理士と同クラス)とされており、 その合格率は3%に満たない年もある程なのです。
因みに試験は年に一度、7月の上旬に行われ、憲法・民法・商法・刑法・民事訴訟法・民事執行法等の択一試験に始まり、不動産や商業登記法に関する記述試験、そして最後に面接形式の口述試験まで用意されています。
よって受験者は合格までに数年を要することも珍しくはなく、弁護士等となるための司法試験に失敗した者たちが、司法書士試験の合格者に名を連ねるケースも珍しくはないのです。
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司法書士とは?まとめ
さてここまで、司法書士という身近な法律家について解説を行って参りました。
法律トラブルに直面した際には、「弁護士に相談!」という方が殆どであるとは思いますが、ケースによっては司法書士に依頼することで、よりリーズナブルに解決への道を見付け出すことも出来るのです。
この記事を切っ掛けに、司法書士という法律家の真価を再確認して頂ければ、筆者としても非常に喜ばしいことです。
ではこれにて、「司法書士とは?わかりやすく解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
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