遺言書の種類

 

人間誰しも、何時かはこの世を去らなければならない宿命を背負わされています。

そして「亡くなることが自然の摂理である」ということは皆が理解していることですが、いざこの世を離れる際には様々な想いが残るものです。

近年では、こうした想いを少しでも残さぬ様に「終活」なんて活動も脚光を浴びていますが、その中でも大きなウエイトを占めると言われているのが遺言書の作成となります。

実際に本屋さんを覗けば、様々な遺言HOWTO本が並んでいますし、ネットで検索すれば膨大な遺言関連情報を閲覧することが出来ますから、皆様の遺言に対する関心は非常に高いものとなっているようです。

また近年では、銀行や証券会社が遺言作成のサポートを請け負ったりすることもあるようですが、遺言書を作るハードルもかなり下がって来ている印象を受けますが、実は「なかなか作成にまでは踏み切れない」という方も多い模様。

そこで本日は、「遺言書の種類と作成方法などを解説致します!」と題して、今から知っておいて決して損はない遺言の基礎知識をお届けしたいと思います。

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遺言書の基礎知識

サスペンスドラマなどではすっかりお馴染みとなっている遺言書ですが、実は様々な種類が存在しており、それぞれ書き方や作り方に違いがあったりします。

また、記載する内容についても法律上のルールが存在しており、一定の要件をクリアーしていなければ、折角書いたのに「無効」となってしまう場合もあるのです。

そこで遺言書の種類を詳しく解説する前に、遺言に関する基礎的な知識を抑えておきましょう。

「相続の順位や割合について解説!」という記事にて詳しく解説していますが、どんな方法で遺言書を作ろうとも、我が国の法律では配偶者や子供に対して『遺留分』という「遺言に左右されない財産の取り分」が保証されています。

よって『全財産を長女に相続させる!』なんて遺言を残しても、他に配偶者や子供が居れば、結局は長女が他の親族に遺留分を請求されることになってしまうので、こうした遺言は意味を成しません。

因みにこの遺留分のルールから言えば、遺言で自由に分配出来る財産は、全資産の半分までということになります。

また遺言の作成にあたっては、「自分が持っている財産の内容をしっかり把握しておくこと」も大変に重要です。

せっかく全財産を遺言で上手に配分したと思っていたのに、実は忘れている資産や、借金があったのでは、遺言の意味が無くなってしまいますのでご注意下さい。

こうしたトラブルを避けるためにも、遺言書を作成する際には、相続の基礎知識を学ぶことと、全ての財産を正確に把握しておくことを重要です。

 

遺言書の種類と作成方法

では続いて、様々な遺言書の種類をご紹介しながら、作成の方法や注意点をご説明して参りましょう。

 

自筆証書遺言書

最初にご紹介するのが、遺言書の中でも最もポピュラーな自筆証書遺言書と呼ばれるものです。

その名の通り「自ら書く」というのが要件となり、用紙などに指定はありませんし、自分で全ての作業を終えられる為、このタイプの遺言書を残す方が最も多いと言われています。

しかしながら「自由に書ける」という意味を裏返せば、「自由に間違えられる」ということにもなり、作成したは良いが『無効となってしまった』というケースが最も多いのも自筆証書遺言書なのです。

そこでまずは、自筆証書遺言書の作り方の注意点を解説して行きましょう。

この項の冒頭でもお話した通り、自筆証書遺言書は「自筆」が肝となりますから、パソコンなどで作成された遺言書は原則無効となります。

必ず全文を自筆で書き上げ、日付を記して、署名・捺印を行わなければなりません。

また書き損じてしまった場合には、二重線を引いてから訂正印を押すことで修正が可能ですが、大切な書類ですから「書き直し」がベターでしょう。

因みに、書き上げた遺言書は封筒などに入れて封印しておけば、第三者による改ざん等を防ぐことが出来ます。

なお封印の際には綴じ口に印鑑を押し、開封した際に証拠が残る様にしておくのお勧めです。

そして自分が亡くなった際に、必ず誰かの目に触れる場所に遺言書を保管しておくことが重要となりが、不安な場合は家族に遺言書の在処を伝えておいたり、顧問弁護士に預けておくというのも一つの方法でしょう。

 

自筆証書遺言を受ける側のルール

ではここで、残された遺族が自筆証書遺言書を発見した際に、何をすれば良いかをまとめておきましょう。

封印がされた自筆証書遺言書を見付けた場合には、決して封筒を開封してはいけません。(封印がなされていない場合は、中身を読んでも差し支えはありません)

勝手に開封した場合には、民法の規定により5万円以下の科料が課せられることとなりますから、未開封のまま家庭裁判所に持ち込み、他の相続人と立会いの上で中身を確認することとなります。

また、民法は開封された遺言書の内容を家庭裁判所が審査する「検認」という作業を定めていますから、開封された遺言書はそのまま検認を受けることになるでしょう。(検認を受けない場合については罰則があります)

そしてここで、「遺言書が有効である」と裁判所と判断すれば、無事に遺言書にて定められた相続が可能となるのです。

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秘密証書遺言書

さて次にご紹介するのが、秘密証書遺言書というタイプの遺言です。

この遺言の特徴は、自分で作成した遺言を公証人役場という役所で保管してもらえるという点となります。

公証人役場についての詳細は、過去記事「公正証書とは?という疑問にお答えします!」にてご確認頂ければと思いますが、簡単に言えば元裁判官や元検事といった法律のスペシャリストが公文書を作成してくれる行政機関ということになるでしょう。

よって公証人役場に遺言書を預けておけば、遺言書の紛失はもちろん、第三者による改ざんも完璧に防ぐことが出来ます。

また、公証人が本人から直接遺言書を預かることになりますので、遺言書の真偽についても争いが生じない上に、秘密証書遺言書については署名さえ自署で行えば(捺印も)、遺言書の本文をパソコンなどで作成することが出来るのです。

なお実際に遺言書を預ける際には、証人2名(家族や相続関係者以外、成年を第三者)を伴って役場に出向く必要がありますし、費用も発生します。

因みに秘密証書遺言書について注意すべき点としては、公証人に遺言書を預けるとはいっても、内容を確認して貰うことはありませんので、家庭裁判所での検認の際に、中身に不備があれば無効と判断される可能性がある点です。(秘密証書遺言書も検認が必要)

更には依頼者が亡くなったからといって、公証人が連絡をして来てくれる訳ではありませんので、親族が自分で遺言の返却を申し出なければなりません。

 

公正証書遺言書

続いてご紹介するのが公正証書遺言書という遺言書です。

こちらも公証人役場にて手続きを行うタイプの遺言となりますが、秘密証書遺言書とは異なり、公証人が遺言書を作成してくれます。

作成の方法は、証人2名(家族や相続関係者以外、成年の第三者)を連れて公証人役場を訪れ、遺言内容を公証人に口頭で伝えるという方式です。

そして話した内容を、公証人が公正証書という公文書にした上、役場で保管してくれますから、正に信用度抜群の遺言書と呼べるでしょう。

また、遺言の内容に法的な問題がある際には、公証人がしっかりとツッコミを入れてくれますし、遺言内容に迷いがある時などは相談にも乗ってもらえるとのことですから、後々争いない遺言を残したければ、この方法が絶対におすすめです。

なお、公正証書遺言書には家庭裁判所の検認も不要となっていますので、残された遺族への負担も軽減されるでしょう。

 

特別な方式の遺言

ここまで3つのタイプの遺言をご紹介して参りましたが、これらはいずれも「余裕のある状態」でなければ、作成出来ない代物となっていますよね。

しかしながら人間は時に、急病や事故などに巻き込まれ、亡くなるまでに遺言書を書いている余裕がない場合だってあります。

こうした事態に備えて、法律は特別方式の遺言書の作り方を定めていますので、本項ではこちらをご紹介して参りましょう。

 

臨終遺言書

突然の事故や病気などで、もはや自分で遺言書が書けない上、命の危険が迫っている状態の時に認められる遺言方法となります。

遺言の方法は、証人3名(家族や相続関係者以外、成年の第三者)に立会いを求め、証人の1人に口頭で遺言内容を伝達。

そしてその者が紙にその内容を書き記し、他2名の証人と遺言者にその内容を読み聞かせ、内容に問題が無ければ、遺言書に3人の証人が署名捺印をすることで完成となります。

なお病気や怪我ではなく、海難事故や飛行機事故の際には、証人は2名に減らすことが出来るルールです。(難船危急時遺言)

因みに遺言がなされた後、本人が死亡した場合には、証人か相続人が20日以内に家庭裁判所に遺言書を持ち込み、審判の結果問題無しとなれば、遺言は有効とみなされます。

因みに遺言はしたが、本人が生き残った場合には、6ヶ月で遺言の効力は消滅します。

 

隔絶地遺言書

隔絶地遺言とは、刑務所などに入っている場合に許される遺言方法となります。

この場合には証人1人と警察官が1人が居れば遺言が可能となりますが、前項の様に命の危険がある状態ではないはずですから、自分で遺言を書くことが必要です。

そして警察官と証人、そして本人が完成した遺言書に署名捺印を行えば、遺言書は完成となります。

また、船などに乗っていてという意味で「隔絶」された者にも、この遺言方式は許可されるルールです。

但し船の場合ついては、警察官ではなく船長などの船の職員1人に加え、証人2名の立会いと、各々が遺言書に署名捺印を行うことが必要とされています。

なお隔絶地遺言書も、本人が6ヶ月以上生き続けている場合には、効力を失います。

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遺言書の種類まとめ

さてここまで、日本の法律が認ている様々な遺言の形態をご紹介して参りました。

一言で遺言書と言っても実に様々な種類がある存在するものですし、方式毎に細かなルールが定められていますから、遺言を行う際には充分に注意を払うべきでしょう。

なお遺言書は相続財産の分配方法を指定する以外にも、様々な方法で残された者たちに故人の遺志を伝えるこのと出来るツールとなりますから、その使い方を充分に理解して来たるべき時に備えたいものです。

ではこれにて、「遺言書の種類と作成方法などを解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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