公正証書とは

 

社会生活を送っていると、時折馴染みのない言葉に遭遇することがあるものですよね。

多くの場合、それらの言葉は専門用語や業界用語であり、意味が判らなくとも「問題のない」ケースが殆どなのですが、中には知っておくべき重要なワードが混ざっていたりもするもの。

そんな得する言葉の一つに挙げられるのが「公正証書」なるものです。

そこで本日は「公正証書とは?という疑問にお答えします!」と題して、非常に便利なこの公文書について解説してみたいと思います。

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公正証書って何だろう

公正証書と聞いて、パッとイメージが湧く方はあまり多くないかもいれません。

この証書は、大きな街なら確実に一軒は存在している「公証人役場」という場所で、費用さえ払えば誰でも作ることの出来る「公文書」を指す言葉となります。

通常、お金の貸し借りや、不動産の契約などに用いられ契約書は「私文書」と言われる種類のもので、あくまでも個人と個人が作成した文書に分類されるもの。

しかし、こうした私文書を公証人役場に持ち込めば、そこに居る公証人と呼ばれる公務員と手で「公文書」に作り替えることが出来ますから、後から問題が生じた際にも「お金を借りた覚えはない!」、「無理やり判を押さされた!」なんて言い訳は出来なくなるのです。

この証書を作成する公証人は、法務大臣から任命を受けた元裁判官や元検事という法律の専門家であり、公証人法という法律に則って証書を作成することになりますから、その内容は裁判による判決にも匹敵する威力を有していると解釈されます。

 

公正証書の威力

では、具体的に公正証書はどの様な威力を持っているのでしょうか。

 

強制執行が容易

まず挙げらるのが、公正証書で約束された内容に背く行為をした場合、簡単な手続きで強制執行を掛けられることが挙げられます。

個人同士でお金の貸し借りを証する「借用書」などを交わし、返済が滞った場合には、まず裁判を行って勝訴し、それでも支払いがない場合に初めて相手の資産を没収する許可(強制執行)が得られるという通常です。(強制執行の詳細については、別記事「強制執行とは?という疑問に解り易くお答えします!」をご参照下さい)

しかし公正証書の場合は、この判決に匹敵する力を有していますから、約束が破られた旨を裁判所に申し出ることで、素早く強制執行に踏み切ることが可能となります。

 

証拠能力がハンパない

また公正証書は、公証人によって作成される公文書であることに加え、署名捺印にも公証人が立合いますし、その控えも公証人役場に保管されることとなります。

よって公正証書が持つ信頼性は、どんな文書よりも高いと判断されますから、後々解釈に疑問が生じそうな契約書や合意書などに活用すれば、裁判などに発展した際にも強力な証拠能力を持つこととなるのです。

 

公正証書で作成すべき文書

ここまでのご説明で、公正証書が持つパワーはご理解頂けたことと思いますが、では実際にどんな文書で用いられることが多いのでしょうか。

 

金銭消費貸借契約書

簡単に言えば、お金の貸し借りの際に交わされる借用書のことです。

既に申し上げた通り、公正証書でこれを作成すれば強制執行を容易に行うことが可能ですが、それには少々条件があります。

まず必要なのが、その文書に「一定の金銭の支払等が目的として書かれていること」であり、もう一つが「執行認証約款」と呼ばれる『約束を破った場合には強制執行に同意する』という約款が書かれていることです。

この二つの要素が公正証書に組み込まれていると、その文書は債務名義と呼ばれる「即時強制執行可能な文書」となり、万が一滞納が発生した場合には、公証人から執行文が発布され、これを裁判所に持ち込むことで強制執行が可能となります。

 

損害賠償債務弁済契約書

解り易り事例でいうと、交通事故の示談書などがこれにあたります。

事故を起こした加害者が治療費の支払いなどを約束しても、支払いの途中で焦げ付いてしまうことも多々あること。

そこで公正証書で示談書を作成していれば、支払いが滞り次第、強制執行に踏み切れるという訳です。

なお前項の借用書と同様に、債務名義とするための二要素を加えた内容にしなければなりませんので、その点にはご注意頂きたいと思います。

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不動産の賃貸借契約書

一般的なお部屋の賃貸などでは滅多に使われませんが、借地の契約や賃料が高額が店舗物件などではしばしば公正証書が用いられます。

こちらも上の2例と同じく、債務名義となっていれば即時強制執行が可能ですが、注意すべきは「あくまで相手の所有物を差し押さえられるのみ」であるということ。

例え何か月賃料を滞納しても、契約者の資産に対して強制執行は出来ても、物件を立ち退かせる強制執行は不可となりますから、この点には注意が必要でしょう。

 

遺言書

遺言書も、公正証書で作成されることの多い文書に挙げることが出来るでしょう。

遺言書自体は、本人が手書きで書いたもの(自筆証書遺言)さえ有効なのですが、その内容が法律的に問題があるものですと、無効になってしまう危険性もあります。

その点、遺言証を公正証書で作成すれば、公証人から法的なチェックを受けることが可能ですから、これは非常に確実性が高いですよね。

また本人が動けない時には、公証人が出張してくれることもあるといいますから、実に親切。

なお公証役場の遺言制度にはもう一つ、秘密証書遺言というものがありますが、こちらは「あくまで本人が自筆し、公証人が誰にも見せずに預かってくれる」というだけの制度になりますから、内容に問題がある場合には「無効」となってしまいます。

 

公正証書作成のプロセス

では、ここで実際に公正証書作成までのプロセスをご説明してみましょう。

相手方と公正証書作成の合意が出来たなら、文案を作成してから、相手と共に公証人役場に出向き、証書作成の依頼をしましょう。

またこの際、持ち物として各々の「実印」と「印鑑証明書(発行より3ヶ月以内のもの)」が必要となります。

公証人役場に行ったなら、公証人による文書のチェックが行われますが、あまりに不適切な内容や、法律上問題がある文言が含まれている場合は、訂正されることになるでしょう。

公正証書の内容は、当事者年で自由に決めることが出来るのが原則ですが、賭博や人身売買など法令に違反するものは認められません。

チェック作業が完了すれば、数日以内に公証人の方で原案に基づいた公正証書作ってくれますから、ここに当事者それぞれが署名・捺印(実印)すれば、公正証書は完成となります。

なお、作成費用は証書で約される金額が100万円以下なら5000円、1000万円までで13000円、1億までで43000円と、金額毎に決まっているとのこと。

因みに本人が出席出来ない時は、実印を押し、印鑑証明書を添付した委任状があれば、受任者でも作成が可能ですが、勝手に内容を書き換えられる可能性もありますから、委任状には記載する証書の内容を一言一句違えずに記入しておくのがベストです。

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公正証書まとめ

さてここまで、公正証書の活用法や作成方法についてご説明して参りました。

「何やら面倒くさそう・・・」と思われる方も多いでしょうが、大切な約束をしっかり守ってもらうには、やはりこの制度を利用するしかありません。

個人間で取り交わす契約などは、後々裁判などの発展した際、「内容が不適切だから無効」なんて言われるケースも少なくありませんから、『ここぞ!』という際には是非公正証書をご利用下さい。

ではこれにて、「公正証書とは?という疑問にお答えします!」ご説明を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

自由国民社編(2015)『土地家屋の法律知識』自由国民社 864pp ISBN978-4-426-12021-4

 

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