検察官とは

 

近年、某ドラマのヒットにより、広く人々に知られる様になったのが 検察官というお仕事です。

以前は法廷劇などで「悪役(被告人を追い詰めるという意味で)」として扱われることも少なくありませんでしたが、今では文字通り「ヒーロー」として認識しておられる方の方が多いのではないでしょうか。

また例のドラマなどにおいては、検察官の日々の仕事や日常について描かれたシーンも少なくありませんでしたが、「現実の検察官がこんなことをするの?」という疑問を感じられた方も多かったのではないかと思います。

そこで本日は「検察官とは?わかりやすく解説致します!」と題して、知られざる検察官の使命や日常業務、労働環境などについてお話してみることに致しましょう。

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検察官って何?

ではまず最初に「そもそも検察官って何なの?」という点から解説を始めて参りましょう。

我が国の司法システムを支える上で、重要な役割を果たしているのが法曹三者と呼ばれる職業であり、裁判官・弁護士・検察官がこれに当たります。

ご存じの通り、裁判官は法廷にて判決を下す立場となりますし、弁護士は被告人の弁護を行う存在となりますが、「検察官は何をする人だっけ?」と考え込んでしまう方も多いことでしょう。

実はこの検察官という職業は、法律違反を行った者を裁判の場へと送り込み、法の裁きを受けさせることが主な業務となります。

こんなお話をすると「被害者が加害者を告訴する」なんて話をよく耳にしますから、『裁判に被告人を送り込むのは被害者の権利なのでは?』とお思いになる方も多いかと思いますが、実は我が国でこの権利を持つのは検察官のみとなっているのです。(これを「公訴権」と呼びます)

被害者が加害者を告訴した場合でも、裁判に掛けるか否かの判断は検察官が行いますし、犯罪を行った者が警察から検察に送られた場合も同様となります。(検察官が犯人を裁判に掛けることを「公訴(こうそ)する」或いは「起訴(きそ)する」と言います)

そして公訴(起訴)が行われ、裁判が始まった後は、被告人の犯罪事実を立証するべく、検察官が一方の当事者として裁判に臨むことになるのです。

因みに検察官の業務はこれ以外にも、有罪になった者の刑の執行(懲役刑・禁固刑・罰金刑等)を指揮したり、既に当事者が死亡している家庭裁判所の事件で相手方を務めるなど、多岐に渡るものとなります。

検察組織について

ここまで簡単に検察官の立場について解説を行って参りましたが、本項では検察官が所属する組織等についてお話して参ります。

前項でお話した通り、検察官は刑事事件を起こした者に対して、起訴するか否かなどを決定する立場となりますが、街を歩きながら犯罪者を探している訳ではありません。

検察官となった者は検察庁という組織に所属し、警察から上がって来る案件に対して、起訴・不起訴を決めて行くことになります。

よって検察官は、警察官と同様に「国家公務員の一員」という立場になりますが、その地位は少々他の公務員とは異なるものとなっているのも特徴です。

実は検察官という職業は、その一人一人が独立した地位として定義されており、例え組織に所属していなくとも、自由にあらゆる犯罪に検察権を行使することが可能となります。

これ対して、警察官や他の公務員は組織に席を置くことで初めて公務員として扱われる訳ですから、この点はかなり意味合いが変わって来ますよね。

但し、個々の検察官が自由に活動していたのでは、犯人が複数存在する事件を担当するは困難ですし、検察官によって起訴する基準が異なるのでは、我々国民が迷惑を被ることにもなります。

そこで便宜上、検察庁という組織を作り、個々の検察官の意思を統一することとしているのです。

なお検察官にも様々なクラスがあり、その頂点に立つのが「検事総長」と呼ばれる役職で、その下に次長検事・検事長などのポジションが続きます。

ただ、これらの役職は僅か一握りのエリートのみが就けるポジションであり、その他の者は検事(同じ検事でも1号~20号の階級あり)或いは副検事(1号~17号の階級あり)という地位に身を置くことになるのです。

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検事になるためには

では、そんな検察官になるためには、一体どんなステップを踏む必要があるのでしょうか。

まず最もメジャーなルートとなるのが、司法試験に合格するという方法です。

司法試験というと「弁護士になるための試験」というイメージが強いかもしれませんが、冒頭でお話した法曹三者(裁判官・弁護士・検察官)となるためには、等しくこの試験をパスする必要があるのです。

また、単に司法試験に合格しただけでは検察官になることは叶わず、その後に司法修習という研修をこなした後、二回試験と呼ばれる更なる国家試験をパスする必要があります。

そして二回試験を通過した後に、検察官志願者の中から採用者が決定されることになりますから、これは正に「狭き門」としか言いようがありません。

※司法試験の詳細につきましては別記事「弁護士になるには?その道のりをご紹介致します!」をご参照下さい。

一方、検察官の仕事を補佐する国家公務員である検察事務官から、検事になるという方法も存在します。

検察事務官は通常の国家公務員の一種となりますから、司法試験に合格するよりも遥かにそのハードルは低くなるはずです。

そして検察事務官の仕事を3年以上こなすことにより、副検事(区検察庁にて一定の事件に対して検察官と同等の業務を行うことが出来る)へと昇格するための試験を受けることが可能となります。

更には3年以上副検事の職に就くことにより、検事となるための試験を受ける資格も得ることが出来ますから、この試験にパスすれば、司法試験を受けることなく検事の地位を手に入れることが出来るのです。

※この方法で検事となった者を「特任検事」と称しますが、実際に検事になれた者は極少数ですから、狭き門であることには変わりはないでしょう。

検察官の仕事

さて、こうして検事となった者には、一体どんな仕事が待ち受けているのでしょうか。

某ドラマでは、まるで警察官のように現場に赴き、証拠集めをする姿が描かれていましたが、実は検事の仕事の殆どはデスクワークとなります。

多くの場合、警察に容疑者として逮捕された者が検察官の下に送致されて来ることになりますが、この段階で警察がかなりの捜査を行っていますので、その資料を基に「起訴すべきか、否か」を判断することになるのです。

※もちろん、警察の捜査内容に疑問点がある場合には、検察官自身が捜査や取り調べを行うこともありますし、場合によっては警察官の捜査の陣頭指揮を執ることもあります。

また検察官の捜査が完了し、自分の判断が決定しても、独断で行動を起こすことは殆どなく、まずは上司にその結果を報告した上、判断を仰ぐことになるでしょう。

こんなお話をすると「個々の独立性が認められている検察官なのに、上司の言いなりなの?」というお声も聞えて来そうですが、起訴・不起訴の判断は人一人の人生を大きく左右するものとなりますし、

場合によっては凶悪犯を野に放つ結果にもなりかねませんから、こうした局面では必ず上司の決裁が必要となるのです。

なお、こうした検察官のお仕事ですが、実は深刻な人手不足の状態が続いており、1人当たりの検察官が抱える事件の数は膨大な量に及ぶと言われています。

よって、定時に仕事を切り上げられることは殆どなく、連日の残業に加え、時には泊まり込みで仕事をこなすことも珍しくないのです。

転勤や給料について

検察官の日常業務に続いては、転勤や収入面について解説を加えて行きましょう。

「検事になるためには」の項でもお話した通り、司法修習を経て二回試験に合格した者が検事として採用されますが、いくらなんでも「いきなりの実戦配備」という訳には行きません。

そこで最初の1年間は東京や大阪の本庁にて修行を積み、その後に比較的仕事の少ない地方の支部などで2年間業務に当たることになります。

そしてその後は、A庁と呼ばれる都心部の本庁や支部(東京・埼玉・千葉・大阪・神戸等)にて更に2年間仕事を経験して、ここでよやく一人前の扱いを受けることになるのです。

なお、一人前をなった後は再び地方の支部へ赴任することとなりますが、職業柄、一つの地域に長く勤務することは様々なリスクを負う(地域権力の癒着等)ことになりますので、2年から数年のスパンで日本全国を転勤して回ることになるでしょう。

因みに検察官の給料は初任給で月額20万円強程度、中堅で40万円程であり、トップである検事総長でも150万円くらいと言われていますから、激務で転勤が多い仕事の割に、少々給料は控えめというのが実情の様です。

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検察官まとめ

さてここまで、検察官という職業について解説を行って参りました。

難関の司法試験を潜り抜けたエリートのみが就ける職業だけに、華麗なる日常を想像していた方も多いかと思いますが、実は非常に地味な上に、多忙な毎日を送っているのが現実なのです。

また、定期的な転勤は大きな負担となるはずですし、公訴した被告人から逆恨みされることも多いでしょうから、強い信念と高い能力を持った選ばれた者のみが就くことの出来る職業とも言えるでしょう。

ではこれにて、「検察官とは?わかりやすく解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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