映画やドラマを見ていると、法廷を舞台に大活躍する弁護士の姿を目にすることがありますよね。
正義を貫き、弱者を守るべく巨悪に立ち向かう姿は、それだけでも憧れの対象となるでしょうし、実際に自分の身の上に降り懸かって来たトラブルを弁護士に解決してもらった際などには、「自分にもこんな能力があれば・・」なんて想いを抱いてしまうものです。
※弁護士資格に関する詳細は別記事「弁護士とは?という疑問にお答えします!」をご参照下さい。
しかしながら弁護士になるには、司法試験を始めとした様々な関門をクリアーする必要があり、弁護士の資格を手に入れることは正に「至難の業」となっているのが現実です。
そこで本日は「弁護士になるには?その道のりをご紹介致します!」と題して、資格を得るまでの困難な道程にスポットを当ててみたいと思います。
なお今回の記事では、2006年に新たにスタートした新方式のみならず、それ以前に行われていた旧司法試験(2011年まで)についても解説させて頂くつもりです。
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司法試験を受けるために
弁護士になるための試験と言えば、「司法試験」というワードが誰の頭にも浮かぶことと思いますが、新方式の司法試験では受験資格を得るに当たって、法科大学院を卒業していることが条件付けられています。
法科大学院とは、司法試験受験に向けての基礎知識を学ぶ専門職大学院を指す言葉であり、ここで3年間研鑽を積んで「法務博士」の学位を身に付けることが、司法試験の受験資格となっているのです。
※超難関と言われる司法試験予備試験というテストに合格した場合には、法科大学院に行かずとも司法試験の受験資格が与えられます。
こんなお話をすると「法科大学院て何処にあるの?」と疑問に思われる方も多いでしょうが、法学部が設置されている大学の殆どに法科大学院コースが用意されており、大卒の資格(卒業見込みでもOK)させ持っていれば、法科大学院の受験が可能です。
但し「受験が可能」という言葉の通り、入学には当然試験が用意されており、「適性試験」と「論述試験」の2つをクリアーした者のみが入学を許可されることとなります。
なお「適性試験」においては、法律に関する知識を問われることはなく、『受験者が法曹の道に進むべき素質を持っているか』を見極める試験となりますので、論理的な思考能力や長文の読解力などが問われることになるでしょう。
一方、次に控える「論述試験」では、法学部出身の者には法律系の論述問題が出題され、他学部から志願者には法律以外の分野から設問が作成されることになりますが、いずれにしても適性試験と同様に「弁護士や裁判官を目指すに値する人物であるかを評価される」ことになります。
因みに旧司法試験では、法科大学院という制度は設けられておらず、大学卒業者には誰でも司法試験の受験資格(2次試験)が与えられていた上、高卒や中卒といった経歴の持ち主に対しても、一般常識を問う1次試験をパスすることにより、受験資格が与えられルールでした。
司法試験ってどんなテスト?
さて法科大学院での勉強を終え、法務博士の学位を得ることが出来たなら、次はいよいよ司法試験へと駒を進めることになります。
現在行われている新方式の司法試験では、短答式・論文式という2つのタイプのテストを受けることとなり、試験は年に一度、5月中に4日間の日程で開催されるのが通常です。
なお、短答式と論文式の2種類の試験と聞くと、何やら手軽なテストの様に感じてしまうかもしれませんが、日程によっては1日に7時間も回答用紙と向き合わねばならないケースもあると言いますから、やはり並の資格試験とは比べ物にならないハードな内容となっている模様。
因みに試験の内容は、論述試験が
- 公法系科目【憲法・行政法】2問
- 民事系科目【民法・商法・民事訴訟法】3問
- 刑事系科目【刑法・刑事訴訟法】2問
- 選択科目【租税法・労働法・国際法など】1問
となっており、一問の試験時間は2時間にも及びます。(論述試験は3日に分けて行われます)
そして最終日の4日目に行われるのが短答式試験であり、公法系・民事系・刑事系の3分野に関する選択回答式のテストを、一分野について約1時間の持ち時間で受験することになるのです。
因みに旧司法試験では、短答式と論文式に加え、口述試験という3つ目の科目も用意されており、2人の試験官を相手に2時間近くも法律に関する知識を語り続けなければならなかったと言いますから、これはかなり厳しいものがありますよね。
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司法修習とは?
こうして司法試験の難関を突破した者は、「晴れて弁護士の資格を手に入れることが出来る・・・」と言いたいところですが、実は夢を叶えるためには「司法修習」というステップを経る必要があります。
司法修習とは、プロの法律家を育成するために用意された実務研修プログラムを指す言葉であり、司法試験合格者は最高裁判所に司法修習生として採用され、その後約1年間に渡り更なる勉強の日々を送ることになるのです。(旧司法試験合格者には1年半近い司法修習期間が定められていました)
因みに司法試験に合格すると、弁護士はもちろん、裁判官や検事になることも出来ますが、どの進路を選択するにしても司法修習は全員同じカリキュラムで行われることになります。
なお、司法修習生は公務員に準じる地位とされており、修習期間中はそれなりの給料をもらうことが出来ますが、講義を受けるだけではなく、実際に裁判所や弁護士事務所に出向いて実務をこなしたり、検察においては取り調べなどの調査にも参加させられることになるでしょう。
この様に非常に実戦的な研修を強いられる司法修習期間なのですが、実はこの過程を終了するに当たっても「考試」と呼ばれる試験をパスする必要があります。
他の資格試験においては、本試験に合格した後の研修で行わるテストは、あくまで便宜的なものとなりがちですが、この司法修習生考試はそんなに甘いものではありません。
別名「二回試験(司法試験から2回目の試験という意味)」と言われるこのテストは正式な国家試験と位置付けられており、多い時には100人以上の不合格者を出すこともあるのです。(一回の司法試験合格者数は1500人~2000人程度)
試験の内容としては、民事・刑事それぞれの検察や弁護等についての筆記試験となりますが、判決文を書かされたり、事件に関する事実認定を行ったりと、その内容は大変に難解なものとなっている上、試験は1日1科目、5日間5科目(民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護)というハード日程も特徴的でしょう。
また司法修習生は、ここまでお話して来た厳しい実務研修の合間を縫って考試の勉強を行う必要があり、この点も試験のハードルを上げる一因となっているのが現実です。
そして万が一考試に落ちてしまった場合には、一度司法修習生をクビになった上で、再び一年間の修習に臨むことになりますが、3回試験に落ち続けると司法試験の合格自体が取り消される(正確には再び司法試験に合格しないと司法修習を受けられない)ことになりますから、これはかなり厳しい制度と呼べるでしょう、
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弁護士になるには?まとめ
さてここまで、弁護士になるためにクリアーしなければならい関門についてお話をして参りました。
読者の中には「司法試験さえ通れば、弁護士になれる!」とお考えだった方も多いかと思いますが、現実は更にシビアなものであるようです。
しかしながら、弁護士や裁判官、検事が扱う仕事は、人の一生を大きく左右する重大事項に係るものが殆どとなりますから、我が国の司法制度のレベルを維持するためにも、こうした厳しいシステムを置かざるを得ないのが現実でしょう。
そして、もしこれから弁護士を目指そうとお考えならば、こうした弁護士の存在意義を理解した上で、来たるべき難関をクリアーして行って頂きたいと思います。
ではこれにて、「弁護士になるには?その道のりをご紹介致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
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