釣り禁止

 

私たちの身の周りには様々なレジャーが存在しており、土日や長期休暇の時期には多くの人々が山へ海へと押しかけて行きます。

最近では登山が一大ブームとなりましたし、ゴルフやアスレチック、川下りに海水浴など、その枚挙には暇がありません。

そんな数あるレジャー中でも、近年人気が再燃しているのが「釣り」であるとされています。

9.11のテロ事件の影響で海釣り可能な場所が次々に閉鎖された上、東日本大震災の原発事故の影響による風評被害で、一時期は釣り人の姿もまばらな時期もありましたが、今ではそれが嘘の様に釣り場は賑わいをみせています。

そして、大手釣具メーカーの業績も好調の様ですし、土日の海釣り施設では前日の夜から徹夜で順番待ちをする方もいらっしゃるようですから、これは最早、新たな釣りブームの到来と言っても差し支えがないかもしれません。

但し、海辺や川辺という特殊なエリアで獲物を狙うのが「釣り」ですから、一歩間違えれば、思いもよらないリスクを背負わされる場合もあるのです。

そこで本日は「釣りの禁止行為と法律について解説致します!」と題して、釣りに潜む法律的リスクを解説して行きたいと思います。

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海釣りでの禁止行為

日本は国土をぐるりと海に囲まれた島国ですので、釣りとなれば海は避けて通れないフィールドとなるでしょう。

法律上、海は国有地となりますから、何をしても自由!という気持ちにもなるものですが、海に関する法的なルールも実は少なくありません。

立ち入り禁止ゾーンへの侵入

冒頭でもお話致しましたが、9.11のテロ事件以来、多くの釣り場が立ち入り禁止ゾーンとなってしまいました。

これはテロ事件を受けて、「海上における人命の安全のための国際条約(SOLAS条約)」という条約の内容が改正されたことによるもので、全国で100ヶ所を超える釣り場が失われたとも言われています。

またテロ事件の影響を逃れた釣り場についても、漁港等では漁業権の関係や釣り人が出すゴミの問題で、一般人立ち入り禁止の措置がとられているケースも少なくありません。

そして、こうした立ち入り禁止ゾーンに釣り人が無断で侵入した場合には、「軽犯罪法違反(1日以上30日未満の拘留又は1000円以上1万円未満の科料)」や「建造物侵入罪(懲役3年以下又は10万円以下の罰金)」といった罪に問われる可能性があります。

軽犯罪法違反なら大した罪にはならい気も致しますが、これは立派な前科となりますし、工場等の建物の敷地に釣り目的で立ち入ったケースでは、より罪の思い建造物侵入罪となる可能性が高いですから、注意が必要です。

釣り方の問題

釣りに出かけると、釣り人たちが思い思いの仕掛けで釣りを楽しんでいるのを目に致しますが、この釣り方にも注意が必要です。

ご存知の方も多いと思いますが、我が国では漁業権という権利が認められています。

この漁業権とは、漁業に従事する方々の利益を保護するために設定された権利であり、この権利に基づき漁業調整規則など、細かな法的なルールが定められているのです。

因みに漁業調整規則の内容は、地域によってかなり異なるものとなっているのですが、場所によっては撒き餌やギャング針(複数の針先が付いた釣り針)の使用が不可となっている場合がありますから、注意が必要でしょう。

なお漁業調整規則には罰則もあり、数か月の懲役刑や高額な罰金が定めている地域も存在しています。

釣りの対象魚の問題

釣りの仕掛けに関するルールがあるのなら、釣りの対象となる魚や生物についても規則が存在しています。

こちらも漁業権に係わる規制(共同漁業権)となりますが、サザエやアワビ、伊勢エビ・海藻類などは捕獲が禁止となっているエリアが多い様です。(禁止対象魚については各行政が独自に取り決めを行っていますので注意が必要)

また珍しいものとしては、タコ、イカ、ナマコなどを捕獲禁止としている地域があり、釣りの外道として針に掛かって来ることも少なくありませんので、注意が必要でしょう。

なお、こうした捕獲禁止の獲物を持ち帰ろうとした場合には、漁業調整規則に基づき、逮捕・起訴される可能性がありますし、地域によっては1年以下の懲役または50万円以下の罰金なんて言う厳罰が用意されている場合もあるのです。

※漁業調整規則が定められていない地域では、漁業法143条による取り締まり(20万円以下の罰金)を受ける可能性もあります。

投げ釣りでの事故

防波堤や釣り施設で釣りを楽しむ際に、必須となるのが投げ釣りの技術となります。

もちろん、足元の海にも魚は泳いでいますが、仕掛けを沖まで投げることが出来れば、より効率良く獲物を捕らえることが出来るはずです。

しかしながら竿のしなりを利用して、鉛の錘がついた仕掛けを遠くに投げ込む以上、それなりの危険も付きまといます。

まず注意しなければならないのが、投げ釣りを行う者の周囲に関する注意です。

思い切り竿を振ったは良いが、後ろに通行人がいた場合には、針が皮膚に引っ掛かるなんて事故も発生し得ます。

こんな事態となれば、治療費等を求めて損害賠償を請求される(民事上の責任)ばかりか、過失致傷罪・重過失致傷罪などの刑事上の責任も生じて来るのです。

一方、仕掛けが飛んで行った先にも多くの危険が待ち構えています。

腕が未熟な者が投げを行えば、あらぬ方向に仕掛けが飛んでいく可能性も充分にありますし、まっ直ぐに飛んでも、目の前を航行する船舶ががあれば、これは非常に危険な行為となるでしょう。

こうした船舶絡みの事故が発生すれば、先程のお話した民事・刑事上の責任に加え、威力業務妨害罪(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)に問われる可能性も出て来ます。

釣った魚を食する場合のリスク

仕掛けに掛かった魚を上手く取り込み、タモに収める瞬間は、釣り人にとって正に「至上の時」となるでしょうが、釣り上げた魚によってはその後も注意が必要になります。

サバなどには近年マスコミでも騒がれているアニサキス等の寄生虫が潜んでいることがありますし、ご存知の通りフグ類には命に係わる程の猛毒を有する種も存在していますよね。

また、珍しい魚ではバラムツやアブラソコムツなどの仲間は、人間の消化器では消化できないワックスが身の中に含まれており、食品衛生法にて販売禁止というルールが定められているのです。

更には、オニカマスや大型になった石鯛には、シガテラ毒という毒素が含まれており、刺身はもちろん、煮ても焼いても重大な食中毒を引き起こすとされています。

そしてこうした問題のある魚をホームパーティーなどで振る舞い、犠牲者が出た場合には、民事上の損害賠償責任や刑事上の過失致死傷罪などに問われることになるでしょう。

ボート釣りの注意点

釣りにのめり込んで行くと、「より大きな獲物を!より多くの獲物を!」と欲が出て来るもので、さらなる釣果を求めて船釣りに進出して行く方も多いことでしょう。

もちろん、正規の乗合船などで釣りを楽しむ分には問題がありませんが、手漕ぎボートなどで沖合に出る行為は様々なリスクを伴います。

転覆や遭難の可能性は誰もが想定出来るでしょうが、運行中の漁船等と接触事故を起こしてしまった場合には、法律的な問題も生じて来るでしょう。

海の船舶の航行に関しては、海上衝突予防法や港則法などの法律が定められており、港則法では手漕ぎボートに関する規定(衝突しそうな場合は、手漕ぎボートに回避義務がある等)も存在していますから、海のルールをしっかりと把握した上で、釣りを楽しんで頂ければと思います。

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川釣り・湖釣りでの禁止行為

釣りのジャンルとして海釣りと人気を二分しているのが川での「渓流釣り」や、湖・池での「バス釣り」などです。

これらの釣りには、海釣りとは一味違った楽しさがありますが、やはりそれなりのリスクも潜んでいます。

漁業権との問題

海釣りの項でも漁業権の問題を取り上げましたが、川等の釣りではより一層の注意が必要となります。

まず川等で釣りをする場合には、遊漁券という漁業組合等が発行する券を購入するのが通常です。

この券を保有している(購入した)ことにより、漁協から釣りを行うことへのお墨付きを得たことになるのですが、この遊漁券の購入を拒んだ場合には漁業調整規則に基づき、処罰を受けることになるでしょう。

因みに釣りをしていると漁協の方が見回りにやって来るのですが、例え遊漁券を買い忘れていても、その場での購入が可能です。

但し、現地購入での価格は釣具店等で購入するよりも高額となりますから、事前に買っておく方が賢いかと思います。

また、川釣りには魚種によって禁漁期間が設けられていますから、これを無視して釣りを行った場合には、逮捕・起訴という憂き目に遭うことになるでしょう。

外来種の問題

近年、テレビなどでも度々話題に上っているのが外来種の問題です。

そして、湖や池で釣りを楽しむ場合には、時としてこの外来種が竿を揺らすこともありますが、その生き物が特定外来生物に指定されている場合には注意が必要でしょう。

特定外来生物とは外来種被害防止法という法律にて、飼育や野に放すことはもちろん、生きたままで移動させることさえ禁止とされており、これを破った場合には3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(法人については1億円の罰金)という厳罰を受けることになります。

よって、ブルーギルやブラックバス、アリゲーターガーなどの魚を生きたまま持ち帰る行為は、それ自体が罪となるのです。

但し、一部の湖などでは漁業が観光資源とするために、特別な許可を得た上でブラックバスの放流を行い、これを釣る釣り人に遊漁券を発行するといった、一見矛盾した制度の運用がなされているエリアもあります。

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釣りの禁止行為と法律まとめ

さてここまで、釣りにおける法律的な禁止行為について解説を行って参りました。

釣りなどに行くと、ついつい開放的な気分になってしまいますが、そんな場でも守るべきルールはあることがご理解頂けたことと思います。

また、釣り場にゴミを放置して帰る釣り人も少なくありませんが、不法投棄は立派な犯罪となりますし、自ら釣りが可能な場所を減らす行為ともなりますので、こうした行いは絶対に控えるべきでしょう。

ではこれにて、「釣りの禁止行為と法律について解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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