近年、よく耳にする言葉に「借金整理」なるものがあります。
読んで字の如く、「膨らみ過ぎた借金を整理する」と言う意味のこの言葉ですが、その方法には自己破産、個人再生など、実に様々な種類があり、『何が何やら判らない』という印象をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。
そこで本日は「任意整理とは?メリットやデメリットについて解説!」と題して、数ある借金整理の中でも、最も手軽に行える任意整理についてご説明して参りましょう。
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任意整理って何?
ではまず初めに「任意整理とは何なのか?」という点から、お話を始めましょう。
借金整理の主な方法として、自己破産、個人再生、特定調停、任意整理の4種類が存在しています。
これらの方法はそのどれもが、膨らみ過ぎた借金を減額してくれたり、支払いを免除してもらうことの出来る手続きとなりますが、任意整理以外は全て裁判所への出頭が必要となる正式な法手続きなのです。
これに対して任意整理は、債権者(お金を借りた先)と「直接交渉を行うだけ」ということになりますから、煩雑な手続きや書類の作成などは殆ど不要という、手軽な手続きとなります。
では一体、債権者に対してどんな交渉を行うのでしょう。
最も効果的な交渉は、借金の元金自体を減額して貰う交渉、つまり「借金をまけてくれ」というお願いになります。
そんなお願いを消費者金融が聞いてくれるとは到底思えませんが、「自己破産などという事態になるよりはマシ」というケースもありますから、成功する確率は低いものの不可能な交渉ではありません。
また高額な金利を下げさせたり、金利自体を無しにしてもらうという方法もあります。
こんなお話しをすると「今さら金利が0になっても、焼け石に水」と思われるかもしれませんが、場合によってはこれまでの金利分に加えて、将来の金利まで無しと出来る場合もあるのです。
そしてもう一つが、返済年数を伸ばす代わりに、月々の返済額を下げてもらうという手法となります。
こちらも破産などに比べれば、お金を貸している側には「お得」ということになりますから、交渉の余地はあるはずです。
この様に考えてみると、債権者相手に出来る交渉は意外に数多いことがご理解頂けることでしょう。
但し、相手は海千山千の金融屋さんですから、素人が正面から話し合いに臨んでも有利な約束に漕ぎ着けるのは困難です。
そこで登場するのが法律の専門家である弁護士や司法書士であり、こうした専門家を代理人として交渉を行い、借金の整理をすることが「任意整理」という手段になります。
具体的な任意整理の作業
では具体的に、任意整理を始める際にはどんなアクションを行えば良いのでしょうか。
前項でも申し上げた通り、まずは専門家の助けを借りるのが第一です。
弁護士を雇うとなると、何やら腰が引けてしまいそうですが、弁護士会などでは無料の法律相談会なども開催していますから、まずはこうしたイベントを利用してみるのも一つの方法でしょう。
また、同じ弁護士でも専門分野というものがあり、中には任意整理は不得意という先生もいるでしょうから、経験豊かで依頼者の目線に立ってくれる弁護士を見付けたいところです。(弁護士の見つけ方は過去記事「弁護士の選び方を解説致します!」にて詳細な解説を行っております)
なお弁護士費用については通常、着手金と成功報酬の二本立てとなりますが、任意整理の場合には「交渉する債権者一件についていくら」という報酬形態の先生が多い模様。
因みに弁護士以外にも、司法書士が代理人を務めることが可能ですが、法令により借金の総額が140万円以下の案件のみの扱いとなります。(但し、一般的に弁護士よりも報酬が安価です)
さて依頼する専門家が決まったら、まずは先生との打ち合わせを行う必要があるでしょう。
任意整理はあくまで借金の減額を求める交渉となりますから、自力で返済が可能なレベルの条件を相手から引きだけなければ意味がありません。
よって総額でいくら借金があり、どこまで減額や条件の緩和を受けられれば、社会復帰が可能なのかを詳細に相談する必要があるのです。
そして、任意整理だけでは解消出来ない程に借金が膨らんでいる場合には、自己破産や個人再生など別の方法を模索して行くことになるでしょう。
こうして方向性が定まり、任意整理を実行することとなれば、後は法律家が代理人となって債権者との話し合いが始まりますから、一時的に督促の電話なども停止することになります。
最終的に債権者との話し合いがまとまれば、合意書などを作成して、依頼者は減額を受けた借金の返済を続けていくことになるでしょう。
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任意整理のメリット・デメリット
ここまで任意整理の概要や、具体的な手続きの方法について解説して参りましたが、本項ではこの借金整理方法のメリットやデメリットをご紹介して参ります。
任意整理のメリット
任意整理のメリットとしてまず挙げられるのが、手続きの手軽さです。
前項の解説でもお話した通り、法律上の手続きではなく、あくまでも示談に近い内容になりますから、時間も費用も最小限に抑えられます。
また、借金をした時期が平成18年以前であれば、グレーゾーン金利と呼ばれる支払い義務のない金利を払っている可能性がありますから、こうした金利がある場合には借金との相殺などを行うことが出来るでしょう。
更には自己破産や個人再生の様に、政府発行の冊子(官報)などに名前が載ることもありませんし、職場や近所の方に任意整理をしていることがバレる可能性も殆どないのが魅力となります。
任意整理のデメリット
さて、この世には「良いことばかり」なんてものは殆ど存在しませんから、当然ながら任意整理にもデメリットはあります。
任意整理の問題点としてまず挙げらえるのが、「あくまで債権者を相手にした示談である」がために、借金自体はなくならないという点です。
例え満足のいく合意に至れたとしても、その後再び返済が滞るような事態となれば、これは元の木阿弥。
再び督促地獄に陥ることは確実でしょう。
また交渉であるが故に、「相手が応じてくれない」という事態も無くはありませんから、こうした場合にはやはり自己破産や個人整理などに切り替えることとなります。
更には交渉をしくじった場合、債権者から「借金を返せ!」という訴訟を起こされる可能性もゼロでないですし、
借金に保証人が付いているケースでは、例え合意に至っても保証人への督促が過熱することがありえるでしょう。(保証人が付いた借金は任意整理から外すのが一般的です)
因みに任意整理とは言え、金融業界では事故と扱われるますから、ブラックリストに掲載され、今後の借入などが不能となる可能性があります。
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任意整理とは?まとめ
さてここまで「任意整理は何なのか?」というテーマで、その概要やメリット・デメリットなどについて解説して参りました。
確かに、元本が減ったり、利息が免除されるのはありがたいことですが、「借金に悩む方全ての救いになる方法か?」と問われれば、その答えは「人による」としか言えないのが任意整理の本質です。
場合によっては、自己破産や個人再生、特定調停などの手続きを行った方が有利なケースもありますから、まずは信頼できる専門家の門を叩くのが一番でしょう。
ではこれにて、「任意整理とは?メリットやデメリットについて解説!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
参考文献
弁護士法人ベリーベスト法律事務所著(2016)『自己破産と借金整理を考えたら読む本』日本実業出版社 181pp ISBN978-4-534-05424-1
藤田裕監修(2010)『図解とQ&Aでスッキリ!クレジット・サラ金の法律と実践的解決法』三修社 238pp ISBN978-4-384-04360-0
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