個人再生の手続き、流れ

 

この社会に生活する多くの方々は、借金を抱えているものです。

こんな言い方をすると「私は借金なんかしていない!」と怒られてしまうかもしれませんが、ご自宅を持つ多くの方は住宅ローンを抱えておられるはずですし、学生や新社会人の中には奨学金の返済が残されているという方も少なくないでしょう。

そして、こうした借入のある状況で会社を解雇されたり、会社が倒産してしまえば、更なる借金を重ねてしまう可能性は充分にあるはずです。

また近年では、社会的にもこうした借金問題に対する関心も高まっており、自己破産や任意整理などの言葉を耳にする機会も増えつつあると思いますが、そんな借金整理方法の一つとされる「個人整理」という手続きについては、詳しくご存じない方も多い模様。

そこで本日は、「個人再生の手続き、流れについて解説致します!」と題して、詳しいご説明をさせて頂こうと思います。

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個人再生とは?

ではまず最初に、「個人再生とは何なのか?」という点からお話をスタートさせましょう。

テレビの報道番組などを見ていると、経営不振に陥った企業などに対して「民事再生法の適応を受けることになりました」なんて言葉を耳にすることがあるかと思います。

この民事再生法なるものは2000年に施行された法律であり、企業などが経営に行き詰まった際に「破産を回避して、経営を建てなす機会を与える」という内容となっているのです。

そしてこの民事再生法の13章に規定されているのが個人再生なる手続きであり、簡単に言えば「個人版の民事再生手続き」となっているのです。

なお企業の場合ですと、社長が交代したり、人員削減などの方法で経営再建が計られることとなりますが、個人再生においては借金の圧縮及び減額がメインとなります。

つまり借金まみれ状態で、個人再生の適応を受ければ、借金が大幅に減額してもらえるということになります。

そしてここで気になるのが、「一体どれだけ借金を減らしてもらえるのか?」ということになるでしょう。

これはあくまで「原則として」ということになりますが、下記に減額の一覧を示しておきます。

  • 100万円未満    ・・・ 0円
  • 100万円~500万円 ・・・ 100万円
  • 501万円~1500万円 ・・・ 総額の20%
  • 1501万円~3000万円・・・ 300万円
  • 3001万円~5000万円・・・ 総額の10%
  • 5001万円以上   ・・・ 個人再生の適応不可

因みに個人再生が適応出来る限界は5000万円以下と定められてはいるものの、その圧縮・減額幅は相当なものとなりますよね。

そして減額された債務を3年(36回払い)などに分割して、返して行くことになるのです。(例外的に5年払い【60回払い】が認められることもあります)

なお個人再生は、裁判所にて厳格な手続きを踏んで行われるものとなりますから、個人再生の適応が決まれば債権者が法人であろうが、個人であろうが、その決定に従わざるを得ないこととなります。

但し、それだけに手続きも煩雑なものとなりますから、弁護士などの助けを借りずに、自力で手続きをするのはまず不可能と言えるでしょう。

また個人再生には、住宅ローンを再生手続きから除外することで、マイホームを手放さないで済む可能性もあるのです。(住宅資金特別条項)

 

小規模個人再生と給与所得者再生

ここまでの解説で、個人再生の基本はご理解頂けたことと思いますが、これだけでは「あまりに債務者に有利だな」と思われた方も多いはず。

そこで法律は前項の減額ルールに加え、もう一つの減額基準を用意しています。

また実は、個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者再生」の二種類があり、どちらの適応を受けるかで減額基準も微妙に変わって来るのです。

 

小規模個人再生

小規模個人再生は、原則あらゆる個人が受けることの出来る再生制度となります。(但し、借金の返済が困難であり、且つ継続的な収入が見込める人という条件はありますが)

そして小規模個人再生を受ける場合には、「前項の減額基準一覧」と『自分が保有している財産の評価』を比較して、より高額な方を圧縮金額としなければならないのです。

例えば、80万の借金が返せない人については、前項の一覧なら借金0円まで圧縮が可能なはずですが、50万円で売れる自動車を持っている場合には、より高額な50万円が個人再生によって決定される借金の圧縮額となります。

なお、小規模個人再生においては債権者の半数、または貸付額の50%以上を占める者が個人再生に反対の意を示した場合には、再生手続きが出来ないという弱点があります。

 

給与所得者再生

これに対して給与所得者再生は、原則サラリーマン向けに造られた再生制度となりますから、「借金の返済が困難であり、且つ継続的な収入が見込める人」という条件に加えて、『収入に激しい増減がないこと』という追加条件が付されています。

よって自営業などを営んでおり、今月は20万の収入だけど、来月は50万円なんて方の適応は困難となるでしょう。

なお、小規模個人再生でご説明した債権者の反対によって再生手続きが不能となるルールは、給与所得者再生では適応されません。

また給与所得者再生の場合は、圧縮金額決定に際して、「前項の減額基準一覧」と「財産の評価」に加え、『二年分の年収から、家賃や生活費の差し引いた金額(言い換えれば、貯金に回せるお金)』という、合計三点の比較が行われることとなり、この中で最も高額なものが圧縮金額とされるのです。

こちらも例を挙げてみれば、同じく80万の借金が返せない人の場合、「減額基準一覧なら0円」、「財産評価50万円」、「貯金可能額2年分60万円」だったとすると、圧縮可能額は60万円ということになります。(因みに貯金可能額は、正式には「可処分所得」と呼びます)

 

この様に個人再生には人によって二つの選択肢がありますが、サラリーマンの方の場合には小規模個人再生と給与所得者再生のどちらを申し立てるかの選択が可能となります。

また、解説の中で挙げた例の場合ですと、小規模個人再生なら圧縮額50万円、給与所得者再生なら圧縮額60万円と、圧縮額に差が生じる結果となりますから、「自分がどちらの選択をした方が得なのか?」を充分に検討した上で、申し立てを行う必要があるでしょう。

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個人再生の必要書類

ではここで、個人再生の申立てに必要な書類の一覧を挙げてみましょう。

  • 個人再生申立書
  • 陳述書
  • 財産目録
  • 債権者一覧
  • 添付書類

 

個人再生申立書

申立書の雛形は弁護士会のホームページなどからも手軽にダウンロードが出来ますが、個人再生の場合、基本的に弁護士に依頼を掛けているはずですから、自分で雛形を用意する必要はないでしょう。

なお申立書には、前項でお話した小規模個人再生と給与所得者再生のどちらを選択するかも記載する必要があります。

 

陳述書

個人再生を裁判所に認めてもらうため、申立てに至るまでの経緯等を書く書式となります。

裁判所にとっては重要な判断材料となる書類ですから、出来る限り詳細に、そして判りやすく記入する必要があるでしょう。

但し、こちらについても弁護士が文言を用意してくれますから、ご心配は無用です。

 

財産目録

陳述書の中に組み込まれている雛形も多いですが、申立人の収入や財産の状態などを申告する書類となります。

財産隠しなどを行うと、後々面倒なことになりますから、正直に洗いざらい記入しましょう。

 

債権者一覧

現在、自分がお金を借りている債権者、そして借りている金額、借りた理由などを報告する書式になります。

この書式に記入漏れがあると減額を受けることが出来ない場合もありますから、しっかりと確認の上で書類作成に臨みましょう。

 

添付書類

最後にご紹介するのが添付書類となります。

  • 住民票
  • 給与明細・確定申告の控え

 

個人再生の流れ

では申立ての準備が整ったところで、実際の手続きの流れをみて行きましょう。

個人再生の申立てを受けた裁判所は、まず本人に事情聴取を行う「審尋」を行うか、「個人再生委員」と呼ばれる監督人の指名を行います。

個人再生委員は裁判所が指定する弁護士がこの役を務め、申立人の財産や借金の内容について調査するのが役目です。

そして裁判所が手続きの開始を決定すると、「再生計画案」という返済プランが作成されることになります。

なお開始決定がなされると、債権者の取り立てや返済が停止となりますが、申立人が財産を処分する行為も禁止となるのです。

さて、こうして再生計画案が完成したら、続いては債権者たちに対してこのプランを提示するという作業が行われます。

小規模個人再生の場合には、債権者の半数が反対ですと手続きが不能となりますから、この段階で議決が取られますが、給与所得者再生では債権者の意見を聞くのみです。

その後、いよいよ裁判所が個人再生を「行うか、否か」の判断を下すこととなります。(これを再生計画の認可・不認可と呼びます)

こうして認可が下りれば、約一月程で借入の減額が実現することになるのです。

因みに不認可となった場合は、自己破産などの手続きに進むことになるでしょう。

 

個人再生のメリット・デメリット

では最後に、個人再生のメリット・デメリットの比較を行ってみましょう。

 

個人再生のメリット

個人再生のメリットは、何と言っても借金の額を大幅に圧縮出来ることとなるでしょう。

また、自己破産ではマイホーム等の財産も全て売り払わなければならなくなりますが、住宅資金特別条項を付ければ、自宅をそのままに借金の圧縮が可能となります。

なお、破産の場合は借金を作った理由が浪費やギャンブルの時には免責が認められませんが、個人再生ではこうした制約がありません。

 

個人再生のデメリット

では続いて個人再生のデメリットをご紹介させて頂きましょう。

まず個人再生はあくまでも借金の減額であり、破産の様に借り入れが消えてなくなることはありません。

また、減額された借金の返済が滞れば、減額処置も無かったことになってしまいますから、再生後は身を引き締めて生活を送る必要があります。

なお住宅ローンを手続きから除外して、自宅を残す方法をご紹介しましたが、住宅ローンの支払は通常の返済額で継続しなければならないため、むしろ生活が苦しくなる可能性もあるのです。

更には、借金に連帯保証人が付いている場合には、減額された分の取り立てが保証人に回る可能性が大きいですから、こうしたケースでは人に迷惑を掛けることを覚悟で手続きに踏み切ることが必要でしょう。

因みに個人再生が許可されると、官報とよばれる政府発行の冊子に名前が出る上、金融機関が共有する個人信用照会でもブラックリストの扱いとなります。

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個人再生の手続きまとめ

さてここまで、個人再生の手続きについて解説して参りました。

借金が大幅に減額されると聞くと、まるで夢のようなお話に聞こえますが、やはり申立人もそれなりの犠牲は払う必要があるようです。

なお、個人再生が許可されない場合でも、自己破産任意整理特定調停などの手段は残されていますから、依頼する弁護士とご相談の上でベストと思われる手段で借金の整理をおこなって頂ければと思います。

ではこれにて「個人再生の手続き、流れについて解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたと思います。

 

 

参考文献

弁護士法人ベリーベスト法律事務所著(2016)『自己破産と借金整理を考えたら読む本』日本実業出版社 181pp ISBN978-4-534-05424-1

藤田裕監修(2010)『図解とQ&Aでスッキリ!クレジット・サラ金の法律と実践的解決法』三修社 238pp ISBN978-4-384-04360-0

 

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