養子縁組と特別養子縁組

 

「人生で手に入れられる最大の宝物は子供である」なんて言葉を耳に致します。

確かに自分の分身であり、乳飲み子の頃から苦労して育て上げた子供は、何物にも代えがたい存在であることは言うまでもありません。

しかしながら、「この世に誕生したカップルや夫婦全てに子供が授かるか?」と言えば、その答えは『NO』であることも間違いないことです。

近年では不妊治療の技術も進歩しており、治療の結果子宝に恵まれる夫婦も増えて来てはいますが、どんなに頑張っても子供に恵まれないカップルも少なくありませんから、最終的に養子を取ることを決断することもあるでしょう。

また例え子供に恵まれたとしても、女の子ばかりの場合には、家を継ぐことが叶わないため、その旦那さんを養子として迎え入れるというケースも多いはずです。

そこで本日は「養子縁組と特別養子縁組の違いや制度の詳細について解説!」と題して、この養子縁組制度の詳細をご説明して行きたいと思います。

スポンサーリンク

 

養子縁組とは?

「養子を迎える」というお話自体は耳にすることがあるかとは思いますが、その制度がどのようなものであるかの詳細についてご存じの方は少ないのではないでしょうか。

そこでまずは、この養子縁組という制度の概要からご説明して行きたいと思います。

法律上の養子縁組制度とは、血縁的に無関係な第三者を自分の家族とする法律行為です。

現在の様に厳格な制度こそ存在しなかったものの、養子のニーズは古来より高いものでしたし、世界各国でもそれぞれのルールで養子制度が存在しています。

なお、法学的な見地に立った場合、この養子制度は「契約型」と「決定型」という2タイプに分類することが可能で、簡単にご説明すれば、前者は養子と貰う側と養子となる側の契約により成立するもので、後者は裁判所等の公的機関が親子関係の成立を宣言することで成立するものとなっているのです。

我が国では、法治国家となって永らく「契約型(養子縁組制度)」のみが認められて来ましたが、昭和62年、新たに「決定型(特別養子縁組制度)」が誕生し、現在もこの2タイプが運用されています。

よって日本の養子制度を語るには、まずこの2つの特徴や違いを理解するのが近道となるでしょう。

 

養子縁組制度

古くから運用されて来た通常の養子縁組制度は、家庭裁判所の許可さえあれば原則誰でも親子の縁を結ぶことが可能です。

また、直系卑属と呼ばれる自身の孫や、夫・妻の連れ子といった関係の者には裁判所の許可も不要とされています。

なお『養子を迎える側』の制約については、養親(ようしん)が夫婦である場合には双方の承諾が必要(未婚者でも養子の迎え入れは可能)となる上、受け入れる側の年齢よりも年上の者を養子とすることは出来ないルールです。

これと反対に『養子となる側』については、15歳以上にあれば本人の意思で、14歳以下の場合には、その親が法定代理人として手続きを行うことで養子となることが可能となります。(代諾縁組)

但し14歳以下の子供で、親が離婚などの理由によって、親権者(子供の財産処分や法律行為を行う者)と監護者(子供の面倒を見ている者)が別々の時は、監護者の承諾も必要。

更には、養子となるものが既に結婚している場合には、その妻や夫の承諾も必要となって来ます。

そして養子縁組が成立すれば、養親との法律上の血縁関係が発生することとなり、苗字は養親のものとなる上、扶養義務や相続権なども発生することとなるのです。

しかしながら、いくら養子になったとは云え、実の親との親族関係が断たれることはなく、生みの親への扶養義務や相続権は引き続き存続することになります。

因みに一度成立した養子縁組を破棄するためには、無効・取り消し・離縁という3つの方法が存在。

無効はそもそも養子縁組の成立に重大な問題があった場合に可能となり(届出がされていない、当事者に縁組の意思がない)、取り消しは届出に不備があった場合などに認められることになります。

なお離縁は、当事者同士の合意さえあれば何時でも行うことが可能ですし、一方が合意しない場合には裁判所にて調停・審判という手続きを経ることになるでしょう。

 

特別養子縁組制度

ここまで通常の養子縁組についてお話して来ましたが、以下で解説する特別養子縁組とは様々な相違点が存在しています。

まず特別養子縁組は、決定型の縁組制度となりますから、裁判所の許可ではなく「審判」を受けることにより成立する制度です。

また養子を受け入れる養親についても厳しい制限があり、結婚している夫婦(当然夫婦間の同意も必要)でなければならない上、年齢も25歳以上と定められています。(夫婦の一方が25歳以上なら、もう一方は20歳以上でOK)

なお、こうした条件をクリアーしていても、審判に際しては夫婦の年収や職業、生活環境なども総合的に判断されますし、実際に養子に迎える子供を6ヶ月以上育て、その実績も判断材料とされることになるのです。

一方、養子となる側にもこの制度は様々な制約を課しています。

年齢については5歳以下であることが原則とされていますし(既に育て始めている場合は7歳以下)、実の両親の同意も必須となるでしょう。

但し、特別養子縁組を利用する子供の中には、実の親から虐待を受けている子供の多いはずですから、こうしたケースでは親の合意は不要となれています。

そして特別養子縁組を認める審判が下った際には、子供と実の親の法律的な親子関係は完全に終了することになりますから、相続権や扶養義務も完全に消滅することとなるのです。

他方、養親は自身の戸籍に養子を迎え入れることとなりますが、一般の養子縁組とは異なり、戸籍を一見しただけでは養子であることが判らない配慮が行われていることとなります。

因みに、一般的な縁組では離縁が可能となっていますが、特別養子縁組では基本的に不可とされているものの、養親からの虐待などがあった場合には、認められることになるでしょう。

スポンサーリンク

 

 

養子縁組と特別養子縁組の相違点

ここまでの解説にて、養子縁組と特別養子縁組それぞれの制度をご説明して参りましたが、今一つ頭の整理が付かないという方もおられるでしょう。

そこで本項では、改めてこの2つの制度の違いを整理してみましょう。

 

年齢制限

通常の養子縁組では年齢による制限はありませんが、養親より年上の者を養子に迎えることは出来ません。

特別養子縁組の場合は、養親が25歳以上(一方がこの年齢に達していれば、もう一方は20歳以上)であることが必要であり、養子は5歳以下(既に監護中の場合は7歳以下)となります。

 

縁組の成立要件

養子縁組では当事者同士の合意と裁判所の許可で成立。(再婚した相手の子供などには許可不要)

但し、養親・養子が結婚している場合には、それぞれの配偶者の承諾が必須となります。

特別養子縁組では家庭裁判所の審判が必要となり、縁組成立には養親の経済状況や、対象の子供に対する監護の実績(6ヶ月間以上)が問われます。

 

権利や義務

養子縁組では、法律上養親と親子関係が成立しますが、生みの親との関係も継続され、扶養義務や相続権は残されたまま。

特別養子縁組では生みの親との関係は完全に断たれ、扶養義務や相続権も消滅。

 

離縁

養子縁組においては、当事者同士の合意があれば何時でも離縁することが可能。

なお、婿養子などに関しては、離婚することにより離縁も成立します。

特別養子縁組については、虐待など特別な事情が無い限り、離縁は出来ないルールになっています。

スポンサーリンク

 

養子縁組まとめ

さてここまで、養子縁組と特別養子縁組についてお話して参りました。

似たような名称の両制度ですが、その内容に大きな違いがあることをご理解頂けたのではないでしょうか。

またここで気になるのが、近年話題に上ることの多い代理母の問題です。

代理母とは、子供の出来ない夫婦が受精卵を海外の女性に移植し、出産を代行してもらうという方法となりますが、法律上こうしたケースで卵子を提供した母親を実の母とは認めていません。(母親はあくまで生んだ女性という判断)

但し裁判所は子供の保護の観点から、代理母を利用して生まれた子供を、依頼者の夫婦の特別養子縁組とするとの判断を下していますから、代理母の利用を考えておられる方は是非覚えておいて下さい。

養子縁組は子供の出来ない夫婦の光明となり得る制度ですから、正しい知識を身に付け、上手に活用して行きたいところですよね。

ではこれにて、「養子縁組と特別養子縁組の違いや制度の詳細について解説!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

スポンサーリンク