施工不良

 

「衣食住」という言葉がある通り、衣服や食事、住居は、私たちが日々の生活を送る上で、欠かすことの出来ないライフツールと言えますよ。

そして特に住居は、仕事や学校などに行っている以外のプライベートな時間の殆どを過ごす場となりますから、非常に強いこだわりをお持ちの方も多いことと思います。

また賃貸にしろ売買にしろ、物件探しに多くの時間を費やす方は多くいらっしゃいますし、建物が老朽化してくれば「あそこをリフォームしたい!」「もっと快適な間取りに作り替えたい」なんて希望も膨らんで来るはずです。

しかしながら、自宅の購入やリフォームには非常に大きな資金が必要な作業となる上、後々「失敗した!」なんてことになるケースも少なくありませんから、その決断を行うにはかなりの勇気が必要となることでしょう。

そこで本日は「施工不良に関する法律知識をお届けします!」と題して、リフォーム後の出来映えが芳しくない場合や、欠陥住宅を購入してしまったケースの法律的な対処法を解説してみたいと思います。

スポンサーリンク

 

施工不良ではどんな責任が問えるのか?

ではまず最初に、冒頭でお話しした工事の欠陥などに対して、私たちは相手方にどの様な責任を問うことが出来るのかについて解説して参りましょう。

「自宅の改築を依頼したのに雨漏りが発生した」「新築なのに傾いている」などの事態が明らかになった場合には、「慰謝料を請求したい!」なんてお気持ちになられることと思いますが、実はこうした状況で慰謝料が請求できるのは非常にレアなケースとなります。

こんなお話をすると、「そんな馬鹿な!」と思われるでしょうが、これは「相手方に責任がない」と言っている訳ではありません。

そもそも慰謝料とは、相手方が何らかの不法行為(法律違反)を犯した場合に請求できる費用となりますから、単に工事の手順に間違いがあった場合や、ミスを犯しただけでは請求することが出来ないのです。

ただ、「ミス」や「手違い」が原因であった場合でも、「損害賠償」や「契約解除」などは相手方に求めることは可能ですから、実際には慰謝料よりもこれらを求める訴訟の方が大半を占めることとなっています。

なお、闇雲に損害賠償や解除と言っても、相手方が素直に受け入れる訳はありませんし、裁判をするにしても賠償等を求める法律的な根拠が必要となりますよね。

そこで登場して来るのが「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」という考え方(法的根拠)です。

『瑕疵』とは隠れたキズを意味する言葉で、工事や引き渡した建物にこうした欠陥がある場合には、その責任を施工業者や住宅販売者が負わねばならないというルールが民法に定められています。(民法566、570、634~640条)

但し、この瑕疵担保責任は対象がリフォームであるか新築住宅であるか、中古住宅であるか等の条件によって、「責任を負う期間」や「契約解除の可否」等が変わって来ますので、次項ではケースごとに分けた解説を行っていくことに致しましょう。

※もちろん状況によっては瑕疵担保ではなく、不法行為責任などが争点になるケースもありますので、以下の項ではこちらも併せて解説して参ります。

小規模リフォームについて

ではまず、小規模なリフォームにて紛争が発生したケースからお話しして参りましょう。

大規模な改築工事等となれば話は別ですが、通常、壁紙の交換や洗面化粧台の入れ替えなど小規模なリフォームにおいては、業者が見積もりを提出し、口頭で工事依頼が行われることも少なくありません。

しかしながら、こうした口頭のやり取りでも、法律上は「施主と建築業者の間には請負契約(工事の契約)が成立した」と解釈されます。

そしてこの請負契約の結果として完了した工事について不具合があった場合には、施主は瑕疵担保責任による「契約解除」や「瑕疵修補」、「損害賠償」などを建築業者に請求することが可能です。

なお、小規模リフォームについて瑕疵担保責任を追及できる期間は、工事完了後1年以内となります。

但し、施主が自由に「契約解除」「瑕疵修補」「損害賠償」の三種を選択出来る訳ではなく、まずは工事業者との話し合いになるでしょうから、多くのケースでは瑕疵補修にて決着となるでしょう。

更には、施主の注文により発生した瑕疵(扉の開く方向を施主が指示したが、出来上がってみたら使い辛かった等)では、瑕疵担保責任自体が認められませんし、施主がキズの存在を知っていた場合も同様の扱いとなります。

大規模リフォームについて

さて前項とは異なり、建物の増築や改築など大規模な工事となれば、法律上の扱いも大きく変わって来ます。

まず瑕疵担保による請負契約の解除については、工事範囲が建物本体に及ぶ場合(内装ではない場合)には原則不可となります。

一方、瑕疵担保責任を工事業者が負う期間については、木造で5年、鉄筋コンクリートなどの場合で10年と、大幅に長くなるのがルールです。

但し、この規模の工事となれば通常は請負契約書を取り交わすこととなり、法律は契約上の特約で瑕疵担保責任を負う期間を自由に設定することを認めていますから、一般的な契約書では2年程度の期間が定められていることが多いでしょう。

中古住宅について

続いてご紹介するのが、リフォーム済みの中古住宅を購入したケースでの扱いとなります。

ここでまずご理解頂きたいのが、不動産の売買が絡んだ場合には、建築業者のみならず不動産の売主にも瑕疵担保責任が伸し掛かって来るということです。

そしてリフォーム済みの物件を購入したケースでは、建築業者が売主に対して瑕疵担保責任を負い、売主が買主に対して瑕疵担保責任を負う形態になります。

つまり、工事に不具合があっても買主は建築業者に対して瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求等を行うことは出来ず、それが行えるのは売主に対してのみとなるのです。(買主と建築業者間に請負契約が存在しないから)

なお、請求が可能な期間は瑕疵を発見した時から1年(引き渡しから5年後に発見しても、そこから1年)というのが原則ですが、

前項と同じく特約で期間を自由に取り決めることが出来るので、瑕疵担保免責(責任を負わない)とする契約も少なくありませんし、長くとも数か月という内容のものが大半でしょう。

但し、売主が不動産業者である場合には、宅地建物取引業法の規定により、引き渡しから2年以上は瑕疵担保責任を負うルールになっていますから、この点に不安を感じるという方は不動産業者から物件を購入することをお勧めします。

※不動産業者が2年未満の契約を結んだ場合には、その特約は無効となり、原則である発見から1年の契約と解釈されます。

因みに売主が個人のリフォーム済み物件を購入し、建物に欠陥があったにも係わらず、瑕疵担保免責の特約があった場合には、もはや打つ手はないのでしょうか。

実はこうしたケースでも、建築業者に損害賠償等を請求出来る場合があります。

先程も申し上げた通り、瑕疵担保責任で建築会社に賠償を求めることは出来ませんが、欠陥があまりに酷く、買主の健康や財産に被害が及ぶレベルの手抜き工事である場合には、建築業者に対して不法行為責任を追及出来る可能性があります。

不法行為責任においては、当事者間の請負契約の有無は関係ありませんし、工事完了から20年間責任を問うことが出来ますから、これは買主にとって非常に有利な条件となるはずです。

ただ判例を見ても、建築業者の不法行為責任を認めたケースは極僅かですから、そう簡単に賠償金を取ることは出来ないでしょう。

新築住宅について

そして最後に解説させて頂くのが、新築住宅で瑕疵が明らかになった場合です。

新築住宅の場合では、不動産業者から建売を購入するか、建築業者に新築の依頼を行う以外のパターンはないはずですから、問題がそれ程複雑化するケースは稀でしょう。

なお、建築業者等が瑕疵担保責任を負う期間については、これまで解説してきた民法上の期間(特約があればそれに従う)となりますが、

平成12年に施行された「住宅の品質確保の促進等に関する法律(略称・品確法)」により、建物の基礎や躯体、雨漏りに関わる重要な部位については10年間に渡り、その責任を負うルールとなっています。

また、例え10年間瑕疵担保責任を建築業者が負うことになっても、その業者が倒産してしまっては意味がありません。

そこで国は平成19年に「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(略称・住宅瑕疵担保履行法)」を施行し、新築を行う建築業者や不動産業者に対して瑕疵保険の加入を義務付けたのです。

この瑕疵保険では、例え業者が倒産した場合でも、住宅ユーザーに保険金が支払われる仕組みなっていますから、「新築住宅は非常に手厚い法的な保護を受けている状態」とも言うことが出来るでしょう。

スポンサーリンク

 

施工不良の法律知識まとめ

さてここまで、リフォームや新築工事にて施工不良が発生した際の法律問答をお届けして参りました。

もちろん多くの建築業者さんは真面目にお仕事をされておりますから、本日ご紹介した様な知識が必要となるケースは非常に稀であるとは思いますが、中には悪質な業者も存在していますから、万が一への備えとしてこれらの知識を抑えておいて頂ければと思います。

なお、ご存知の方もおられるかと思いますが、2020年の春には民法の大改正が控えており、実はこの改正により瑕疵担保責任に関する扱いは大きく変更される予定になっているのです。

改正後の法解釈につきましては、また後日記事を書かせて頂くつもりでおりますので、ご興味のある方は是非そちらも併せてご覧頂ければと思います。

ではこれにて「施工不良に関する法律知識をお届けします!」の記事を締め括らせて頂きます。

 

スポンサーリンク