運転免許を持ち、一度でも交通事故を経験されている方であれば、「過失割合」という言葉をご存じのことと思います。
相手方の保険会社との交渉や、自分が加入する保険会社と打ち合わせなどをする際に、「この事故は10・0ですね」とか、「こちらにも落ち度がありますから、4・6ですね」なんて使い方をされる、事故の責任に関する割合のことです。
しかしながらこの過失割合、「一体誰が、そしてどんな基準で決められているのか?」なんて疑問については、『よく判らない』という方も多いはず。
そこで本日は、「交通事故の過失割合の決め方について解説!」と題して、この過失割合について解説してみたいと思います。
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過失割合とは?
では早速、過失割合の決め方などにお話してみたいところですが、まずは「そもそも過失割合って何だろう」というところから、解説をスタートさせましょう。
現在、裁判で交通事故に関する訴訟を行う場合、無くてはならい判断要素となっているのが、過失相殺という考え方となります。
誰かが事故に遭い、怪我をさせられたとなれば、加害者が被害者に対して賠償金を払うのは当然なことの様に思えますが、高速道路に突然人が飛び出して来た場合であれば、これを全面的に車を運転していた加害者の責任と断じるのはあまりに不公平ですよね。
実は交通事故の事例を見ていくと、例え「歩行者」対「自動車」の事故であっても、『歩行者に全く落ち度が無い』というケースは意外に少なく、全体の80%近くは歩行者の行動にも問題があったりするものです。
そこで裁判所は、この「被害者側の過失も判決の内容に組み込むべき」という考えの下、『過失相殺』という概念を取り入れることにしています。
例えば、加害者が支払う賠償金が1000万円であった場合でも、被害者に20%の過失を認めれば、賠償額は20%ダウンの800万円とするのが、実際の過失相殺の考え方です。
そしてこの加害者と被害者の過失の割合を示す数値を「過失割合」と称しています。
過失割合の決め方
そこで気になって来るのが、「過失割合は誰が決めているのか?」という疑問なのではないでしょうか。
ここで意外に多い誤解が「決めているのは警察!」という説となります。
確かに追突事故の際などついては、警察官が「10・0だね」なんて発言をすることもある様ですが、事故の際して警察が作成する「実況検分調書」の中身をじっくり読んでみても、過失割合は書かれていません。
実はこの過失割合、決めるのはあくまでも事故の当事者同士ということになります。
この様にお話すると、「自分は事故に遭ったけど、そんな割合を決めた覚えはない!」と思われるかもしれませんが、実は多くの場合、当事者の代理人となっている保険会社同士などが話し合いで決めているケースが殆どなのです。
そして、どうしても話し合いで決着が付かないということになれば、訴訟を起こして、裁判所にその判断を委ねることとなります。
よって、裁判に持ち込まれる前の段階ならば、過失割合には「交渉の余地が残されている」という結論になるのです。
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自分でも過失割合は判断出来る!
では実際、保険会社などは何を基準に過失割合を決めているのでしょう。
実はこの世の中には、事故のパターンによって規範とも言うべき、過失割合の計算事例が存在しています。
この計算事例は、これまでの判例などを元に交通安全協会といった公的な機関が作成しているものや、各保険会社が独自に作成しているものもありますが、どれを見比べてもそれ程違いのあるものではありません。
また、保険会社のホームページなどでは、一般の方に向けて普通に公開されておりますので、ご興味があるという方は是非ご一読頂ければと思います。
但し、事故のパターンは千差万別で、必ずしも用意されている事例通りという訳にも行きませんから、自分が遭遇した事故の過失割合に納得が行かない場合には、異議を申し立てても何ら問題はないのです。
ただ、極端に相手方と意見が対立する場合には、訴訟に発展する場合も往々にしてありますから、その点だけはご注意下さい。
ではここで、いくつか事故のパターンを挙げて、具体的な過失割合の事例を見て行きましょう。
横断歩道を横断中の歩行者を自動車がはねてしまった場合(自動車は直進)ですと、歩行者側の信号が青の時で自動車10・歩行者0、黄色の時で自動車8・歩行者2、そして赤の時なら自動車3・歩行者7といった具合になります。
車同士の事故、互いに信号がある交差点の事故ならば、青信号車0・赤信号車10、黄色信号車2・赤信号車8、双方共に赤信号なら5・5という判断になるのです。
また、こうした過失割合の事例には「修正要素」なる微調整が加えられることもあります。
例えば事例に示された通りのパターンでも、それが夜間であったり、自動車が交通ルールを破っていた場合に、そのままの判定を行うのは不公平になってしまうからです。
そこで主な修正要素の例を挙げてみましょう。
自動車と歩行者の事故の場合で、歩行者の責任に加算される要素は、
- 夜間の場合(夜は歩行者もより注意が必要だから)
- 自動車通過に時の直前・直後道路横断(道交法違反)
- 幹線道路の横断(幹線道路横断が危険なのは当然だから)
などとなり、こうした事実がある場合は一要素について「0.5~1」の過失割合が歩行者に追加されます。
これとは逆に、歩行者の責任が軽くなる要素としては、
- 自動車の交通法規違反(スピードの出し過ぎ等)
- 歩行者が老人や子供の場合
- 他にも歩行者が居た場合(集団横断)
といった具合で、こちらも一要素について「0.5~1」の過失割合が歩行者から軽減されることになるでしょう。
そして、こうした微妙な調整を経て過失割合は増減して行くものですから、自分が事故に遭遇した場合には、保険会社の見解を鵜呑みにせず、今回ご紹介した基準などを参考に、自らの主張を展開して行くべきなのです。
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過失割合まとめ
さてここまで、交通事故の過失割合についての知識を解説して参りました。
もちろん自分が加害者の立場になってしまった場合には、被害者に対する「申し訳ない」という気持ちを抱くのは当然ですが、保険金のみで賠償額をカバー出来ない際には、異議を申し立てる勇気も必要でしょう。
また、一部の保険会社の担当者の中には、相手先の保険会社と「なあなあ」の関係になっている者もいるでしょうから、提示される過失割合を鵜呑みにせず、積極的に意見を述べて行きたいところです。
ではこれにて、「交通事故の過失割合の決め方について解説!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
参考文献
(有)生活と法律研究所編(2015)『交通事故の法律知識』自由国民社 368pp ISBN978-4-426-11950-8
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