社会生活を営んでいる方の多くが抱えているのが、自身の家族に関する問題なのではないでしょうか。
「旦那さんが家庭に無関心」、「奥様の浪費が激しい」、「子供が非行に走った」などの悩みは、世間に驚く程に転がっているものです。
しかしながらこうしたお悩み、少々のものであれば「誰もが通る道」と笑って許せるものの、度が過ぎれば家庭崩壊にも繋がり兼ねない危険な代物であるのは皆様のご存じの通りかと思います。
そこで本日は、「家庭裁判所とは?という疑問に答えます!」と題して、こうした家族の問題を専門に扱う家庭裁判所の制度や手続きの内容について解説してみましょう。
スポンサーリンク
家庭裁判所とは
裁判などで争われる事件には、刑事事件・民事事件といった種別が存在しています。
そしてこうした事件の種別の中でも、非常に特殊な性質を持っているのが「家事事件」と呼ばれる、家庭や家族に関するものです。
「家族の問題なんて、皆で話し合って解決すればいいのでは?」と思う方もおられるかもしれませんが、お互いに顔も見たくないという程に悪化した夫婦に話し合えといっても無理があるでしょうし、嫁姑の問題なども簡単に解決出来るはずがありません。
こうしたニーズから誕生したのが、家事事件を専門に扱う家庭裁判所という機関であり、自力では解決不能な難解な事件の解決に日々尽力しているのです。
ただ裁判所とはいっても、扱う問題が家族のこととなると、他の民事訴訟などと全く同等の処理を行うのは厳しいものがあります。
離婚裁判を他人に傍聴されるなんてことは、誰で避けたいところですし、「離婚するか、しないか」などの問題を裁判官が弁護士の口頭弁論だけで判断するのは気分的にも納得の行かないものがあるはずです。
そんな事情から、家庭裁判所は他の裁判所には無い様々な「特性」を持つこととなり、我が国の司法機関の中でも非常に特殊な存在とされています。
次の項では、この家庭裁判所の特色をご理解頂くために、具体的にどんな事件を扱っているかについてお話して参りましょう。
家庭裁判所で扱う事件
家庭裁判所で扱う事件と言うと、「離婚や未成年犯罪でしょう」と思われるかもしれませんが、実はまだまだ多くの種類の事件を担当しています。
家庭裁判所の扱う事件には大きく置けて、別表第1事件と別表第2事件、人事訴訟事件という三種類が存在します。
別表第1事件
別表第1事件は、基本的に当事者同士の争いが生じない事件がカテゴライズされています。
例えば成年後見人制度における後見人や保佐人の審査や、戸籍に関する問題、失踪の宣言など、申し立てがあった事案を裁判所が「認めるか、認めないかの判断をするだけ」という内容のものが殆どとなるのです。
その他の例を挙げれば、遺言の認定、性同一性障害の性別変更、扶養義務の設定など、その種類は膨大な数に上ります。
別表第2事件
これに対して別表第2事件は、親権者の変更や遺産分割など、当事者同士の間で意見が分かれる事件が分類されています。
この手の事件に対しては、家庭裁判所は調停を行い、それでも決着が付かない場合には、裁判所が「審判」という判断を下すことになるのです。
通常の民事訴訟ですと調停を行わず裁判を行うことが可能であり、その結果直接「判決」が出されることになりますが、家庭裁判所ではまず調停を行い、これが不調となった場合や、出された審判に意義がある際に「裁判」という手順を踏むことになります。
人事訴訟事件
そして最後のカテゴリーとなるのが、婚姻の取り消しや離婚など、人間の身分に係る事件となる人事訴訟事件となります。
この種類の事件は、人事訴訟法という独自に法令により定義される事件であり、婚姻関係の他に養子縁組の無効や取り消し、親子関係に認知などもここに含まれることになるのです。
基本的には別表第2事件と同様、調停や審判を経ても解決出来ない事件のみが、訴訟に発展することになります。
スポンサーリンク
家庭裁判所の特徴
ここまでのご説明で、家庭裁判所が扱う事件にどんなものがあるかについて、ご理解頂けたことと思います。
そこでこちらの項では、こうした特殊な事件が多い故に生まれた、家庭裁判所ならでは特色についてお話して行くことにしましょう。
手続きが簡単
通常の民事訴訟などでは、訴状を書く(訴訟の申立を行う手続き)にいても、その内容が法的にしっかりと構成されていないと受け付けてくれないなど、その手続きに専門知識が必要となります。
しかし家庭裁判所でこれを行うと、誰でも気軽に家庭裁判所を利用出来なくなってしまうという点から、その手続きが非常に簡略化されているのが特徴です。
裁判所によっては、手続きの相談専用部署を置いている所もあり、最も市民の目線に近い裁判所と言えるでしょう。
いきなり訴訟は出来ない
既に「家庭裁判所が扱う事件」の中でご説明致しましたが、家族の問題を扱うこの裁判所では、いきなりの訴訟は出来ないルールとなっています。
まずは裁判官が立ち会う調停を開き(調停前置主義)、話し合いを尽くした上、必要であれば裁判官が審判と呼ばれる一定の解決策を提示。
これに納得出来ない者たちだけが、訴訟のステージへと上がって行くのです。
なお別表第2事件については、調停からでも審判(裁判ではない)からでも申し立てが可能ですが、裁判官は状況により、審判から調停に切り替えることの出来る権限を持っています。
家族の事件ならではの配慮
この様に特殊な家族の問題を扱うのですから、裁判所も当事者たちに対して「それなりの配慮」を行っています。
離婚裁判などに傍聴人がいれば、心の内を思う様に語れないだろうという配慮から、家庭裁判所で行う審理は原則非公開です。
また離婚調停などでは、相手の居る場では意見が言い辛いだろうということで、当事者が別室で意見を述べるなどの制度が採られています。
スポンサーリンク
家庭裁判所まとめ
さてここまで、家庭裁判所の仕組みや特徴について解説して参りました。
この裁判所が、他の簡易裁判所や地方裁判所とは明らかに異なる、特異な存在であることをご理解頂けたのではないでしょうか。
本来であれば、家族同士の話し合いで解決するべき事件を扱うとあって、裁判所側も非常に気を使っているのが判りますよね。
もちろん家族の争いは無いに越したことはありませんが、家庭裁判所のような人々に寄り添った裁判所があることをもっと多くの方に知って頂ければ、ニュースなどで報じられる陰惨な事件の発生も防げるのかもしれません。
ではこれにて、「家庭裁判所とは?という疑問に答えます!」の記事を締め括らせて頂ければと思います。
参考文献
藤田裕監修(2015)『図解で早わかり 最新版 訴訟のしくみ』三修社 256pp ISBN978-4-384-04643-4
自由国民社編(2015)『相手を訴える法律知識』自由国民社 448pp ISBN978-4-426-11951-5
自由国民社編(2015)『夫婦親子男女の法律知識』自由国民社 472pp ISBN978-4-426-12069-6
スポンサーリンク