当ブログは「皆様の日々の生活に役立つ法律知識をお届けしたい」というコンセプトの下に、記事を書かせて頂いておりますが、法律の話題となるとまず「六法全書」を頭に思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
また通常、六法と言えば「憲法」「民法」「商法」「刑法」「刑事訴訟法」「民事訴訟法」を指すことになりますが、この6つの法律の中で最も「遠い存在」と感じる方が多いのが、商法であると言われています。
しかしながら実はこの商法、状況次第では私たちの生活に大きな影響を及ぼす可能性もありますから、決して軽んじて良いものではありません。
そこで本日は、「民法と商法の違いや関係について解説致します!」と題して、私たちに最も身近な民法と商法の関係性や、内容の相違点などについて解説を行ってみたいと思います。
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民法と商法の関係
冒頭の説明をお読みになり、「民法と商法の比較なんて可能なの?」という疑問をお持ちになられた方もおられるでしょうが、実は民法と商法の間には切っても切れない関係性が存在しています。
皆様もご存知の通り、民法は「国民生活の基本となるルールを定めた法律」であり、お金の貸し借りや、契約ごと、結婚や相続など、その定めはあらゆるジャンルに及ぶものとなっていますが、
時代の移り変わりと共に社会はどんどん複雑になって行きますから、民法だけで全ての問題を解決するのは不可能な状況となっているのが現実です。
そこで先人たちは、こうした対応しきれない問題に対処するべく、特別法なる法律を定めることにしました。
例えば動物虐待の問題に対しては「動物愛護法」を、ゴミ捨ての問題に対しては「廃棄物処理法」をといった具合に特別法を作り、基本となる民法よりも優先される法律として位置づけているのです。
よって、民法と特別法の間に矛盾がある場合には、原則「特別法のルールが適応される」こととなりますから、特別法が如何に重要な意味を持っているのかを改めて説明する必要はないでしょう。
そして数ある特別法の中でも、特に重要なものと位置付けられているのが商法であり、商人同士の取引においては「民法ではなく、商法こそがルール」となって来ますから、商売を始めるのであれば、商法と民法の違いをしっかりと把握しておく必要が出て来る訳です。
そこで次項では、具体的に民法と商法の相違点を解説して行きたいと思います。
ここが違うよ!民法・商法
では早速、民法と商法の違いを見て行きたいと思いますが、あくまで商法は商人同士のビジネスシーンにおける特別法となりますから、「一般人同士の取引」や「商人と一般人の取引」は対象外となりますので、この点だけはご注意を頂いた上で、お話を進めさせて下さい。
保証人の扱い
お金やお部屋を借りる際に、擁立しなければならないのが保証人となりますが、民法と商法ではその扱いが大きく異なります。
民法においては、単なる「保証人」と「連帯保証人」という区別があり、保証人の方ならば、例え債権者から返済の請求を受けても「先に借りた人間(主たる債務者)に請求してから、自分(保証人)に請求しろ!」という対応が可能です。(これを催告の抗弁権といいます)
また、債権者が強制執行などを行おうとする際にも、「まずは借りた人間に強制執行を行い、その後で自分に強制執行を行うのが筋だろう!」なんてことが言えるルールになっています。(これを検索の抗弁権といいます)
※但し、保証人ではなく、連帯保証人となっていた場合には、こうしたメリットを受けることが出来ず、主たる債務者と同様の義務を負うことになる。
しかしながら、商人同士の取引で適用される商法においては、こうした「民法で定められた保証人の権限は無いもの」とみなされ、強制的に連帯保証人と解釈させれてしまうことになるのです。
よって、「民法でいう保証人なら、そんなに責任は重くないはず・・・」などと考え、軽々しく保証人を引き受けると、後で酷い目に遭わされることにもなりかねません。
債務の取り扱い
ビジネスをしていると、仕事仲間と共同で材料を仕入れたり、機材を購入するなんてシーンもあるでしょうが、こうした状況で「支払いの義務を分担する」なんて場合には少々注意が必要となります。
民法であれば、こうした支払い義務の分割(保証債務)は、各々が負った債務に対してのみ責任を負うのがルールです。(600万円の支払い義務を3人で割った場合なら、1人が200万円の債務を負い、例え仲間の支払いが滞っても、自分の分の200万円さえ返せばOKというルール)
しかしながら、これが商人同士の取引となると、例え保証債務である旨の約束があったとしても、連帯債務と解釈されることになります。
よって、先程の例で言えば、自分が200万円をしっかりと返済しても、他の2人の支払いが滞れば、残りの400万円の支払い義務も降り懸かって来ることとなるのです。
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代理取引について
日常生活においても、「自分の代わりに、これをやっておいて!」なんてお願いをすることは少なくありませんが、商人の間でこうしお願いをする場合には少々注意が必要です。
民法においては、他人から代理を任された者が契約を行うには、相手方に対して、自分が誰から依頼を受けて契約に臨んでいるかを明らかにしなければならない(これを「顕名(けんめい)」と言います)というルールであり、これを行わない場合には『代理人自身が契約者』としてみなされることになります。
しかしながら商法においては、例え顕名(代理の依頼主を明らかにする行為)をしなかったとしても、契約の効果は「代理の依頼主」ばかりか「代理人」にも及ぶことになりますから、相手方はどちらでも好きな方に契約の履行を求めることが出来るのです。
商品の発注などを受けた際の処理
ビジネスシーンでは、業者にメールや郵便で商品の発注を行うことも多いと思いますが、ここでも民法と異なるルールが存在します。
民法においては、「申込みを受けるか、断るかを、何時までに返事しろ!」という条件が付いていない申込みに対して、受注者が返事をしない場合には、「一定期間経過後であれば、発注者は申し込みをキャンセル出来る」というルールですが、
商法においては「申し込みは無効になる(発注者と受注者が素早く連絡出来ない時は、一定期間経過後に無効)」と定められているのです。(商法507、508条)
更に商法では、普段から日常的に取引を行っている業者同士の発注については「遅滞なく、申し込みを受けるか否かの返事をしなさい」と定めた上で、「返事がない場合は、申し込みを引き受けたものとみなす」としています。
商品の保管義務
前項では申し込みを受けた際の処理について解説致しましたが、状況によっては申し込みを断るつもりだったのに、先に商品が到着してしまう場合だってあります。
こうしたケースにおいて、民法では「品物を受け取った側には、その保管義務はない」と定めていますが、商法では「送って来た相手に費用を請求出来るが、保管義務はある」と定めているのです。
お金の貸し借りについてのルール
そして最後に解説させて頂くのが、お金の貸し借りに関する民法と商法のルールの違いとなります。
民法においてはお金の貸し借りをして、利息の取り決めをしない場合には、原則「無利息」と解釈されますが、商法では例え金利を決めていなくとも、年6%の法定金利を受け取ることが出来るのです。
※民法において金利を定めない場合でも、返済期限を超過した場合には年5%の法定金利を受け取ることが可能。
また債権の時効についても、民法が10年なの対して、商法では5年と定められています。
なお、お金の貸し借りに当たり、担保として物品を差し入れるケース(100万円借りる代わりに、車を預ける等)もありますが、民法では支払い期限に返済がないからと言って、物品の所有権が相手に移動する契約(流質契約)を原則禁止としています。
しかし商法では、こうした流質契約を禁じていませんので、商人同士なら問題なくこうした契約をすることが出来るのです。
※質屋ではこうした流質契約(質屋・一般人間にて)が普通に行われていますが、これは質屋営業法等の特別法の効果により合法とみなされます。
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民法と商法の違いや関係まとめ
さてここまで、民法と商法の関係性や違いについてまとめて参りました。
民法に関する知識は、自然と身に付いている方も多いかと思いますが、こうした法律知識がビジネスの場では通用しないケースもあり得ることをご理解頂けたことと思います。
また、これから商売を始めようとする際に、こうした商法の知識がないと、思わぬ損害を招く可能性もありますから、充分にご注意なさって下さい。
ではこれにて、「民法と商法の違いや関係について解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
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