生きとし生けるものは、何時か必ずこの世に別れを告げなければならないものです。
冒頭からこんなお話をすると、何だか悲しい気持ちになってしまいそうですが、もしも亡くなられた方が「多く財産」を持っていた場合などには、悲しむ間もなく相続問題などが頭をもたげてくることもあるでしょう。
本ブログではこれまで、相続をテーマに「相続の順位や割合について解説!」・「遺言書の種類と作成方法などを解説致します!」等の記事をお届けしてまいりましたが、その中で「遺留分」なるものの解説を簡単に行っておりました。
しかしながらこの遺留分、掘り下げてみると大変に奥が深い分野となりますし、相続に関しては非常に重要な上、誤解の多いテーマであることでも知られています。
そこで本日は「遺留分とは?わかりやすく解説致します!」と題して、何かとトラブルの多い遺留分についてご説明をいたしましょう。
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遺留分って何だろう?
ではまず最初に、「そもそも遺留分とは何なのか?」という点からお話を初めてまいりましょう。
皆様もご存知の通り、我が国の民法では人が亡くなると、その方の資産は相続財産として相続人へと受け継がれます。
また法律は「法定相続分」を定めており、『残された配偶者の取り分が1/2、子供が二人いれば1/4ずつ』といった分割のルールも明確にしています。
但し、亡くなった方(被相続人)が事前に遺言を残しており、先の例で言うところの「配偶者には一円も財産を渡さない」なんて内容が記されている場合だってあり得ますよね。
確かに財産の持ち主は亡くなった方である訳ですから、その方の意思で「誰に財産を渡し、誰に渡さないか」を決めるのは自由であるように思えますが、民法ではこうしたケースでも一定の地位の者には「遺留分」として財産が受け取れるルール(但し、法定相続分よりは低い割合となる)を定めているのです。
なお、先に述べた遺言による場合以外にも、被相続人が生前に贈与を行ったため、相続財産の取り分が少なくなってしまったケース(遺留分が侵害されたケース)でも請求を行うことが可能となります。
遺留分が請求出来るのは誰?
では具体的に、どんな立場の者が遺留分を受け取ることができるのでしょうか。
まず当てはまるのが、亡くなった方の配偶者(夫・妻)、そして子供となります。
また、配偶者も子供居ないという場合には、亡くなった方の両親(父・母)に遺留分を受け取る権利が発生するのです。
なお、遺留分を請求する権利を「遺留分滅殺請求権」と呼び、遺言などにより本来は自分が受け取れるはずだった遺留分を他の者(他の家族や愛人等)に侵害された場合に、この権利を行使することができます。
では、先程ご紹介した配偶者や子供、両親にはどれだけの遺留分が確保されているのでしょうか。
遺留分の計算方法
民法が規定する遺留分は先程ご紹介した法定相続分に対して、配偶者と子供が1/2、両親が1/3となっています。
例えば1000万円の財産を、法定相続分にて配偶者と子供二人が分けるとなれば、配偶者が1/2の500万円、子供二人は1/4の250万円ずつを相続することができますが、配偶者と子供たちの遺留分はこの法定相続分の1/2というのがルールです。
よって今回の例で言えば、配偶者の遺留分が250万円(法定相続分500万円の1/2)、子供たちの遺留分が一人当たり125万円(子供一人の法定相続分250万円の1/2)ということになります。
つまり、故人の遺言や生前贈与により「相続財産がこの遺留分を下回る場合」には、請求を起こすことで救済を受ける(多くもらった者から遺留分の範囲内で財産を取り返す)ことが可能になるのです。
因みに亡くなった方に配偶者も子供もおらず、両親だけが居た場合には、両親にも遺留分が発生することとなります。
仮に財産が1000万円だった場合、他に相続人がいなければ、両親の法定相続分は1000万円となりますが、遺言などで第三者が受取人に指定されていた場合には、法定相続分の1/3(1000万円の内、333万円)を遺留分として請求することが可能となるのです。
遺留分の請求方法
これまでの解説により、「遺留分がどの様なものであるか」についてはおおよそご理解いただけたことと思いますが、実際に遺留分を請求する場合には何をすれば良いのでしょう。
法律上、遺留分を請求することができる権利のことを「遺留分滅殺請求権」と呼ぶことは既にお話しいたしましたが、この権利を行使するには「意思表示を行えばよい」というのが、民法上の考え方となります。
つまり、自分の遺留分を侵害している相手に対して「私の遺留分を返しなさい」と通知すれば済むことになりますが、実際にはそう簡単には行かないものです。
よって、まずは話し合いをして、相手がこれに応じてくれないのであれば、内容証明などを送り付けて履行を促すことになるでしょう。
但し、それでも相手が請求に応じてくれない場合には、法的な手段に打って出るしかありません。
なお、法的な手段というと「訴訟」というイメージが浮かぶかもしれませんが、遺留分の滅殺請求は家事事件となりますから、まずは家庭裁判所の調停からスタートすることになります。
また、調停で決着が付かない場合には、いよいよ訴訟となりますが、離婚事件などとは異なり第一審は地方裁判所で行われることになるでしょう。(離婚裁判の第一審は家庭裁判所となる)
こうして裁判の結果、遺留分の滅殺請求が認められれば、あなたは晴れて救済を受けることができるのです。
因みに遺留分は、本来相続できるはずの財産がもらえなかった方のための救済制度となりますから、「遺留分が発生する地位にあり」「実際に遺留分を侵害されている」という事実があれば、相手方がどんなに抵抗しても請求が認められるのが基本となります。
ただ、相続財産が不動産だったりした場合には、その評価額を巡って熾烈な法廷闘争が繰り広げられる場合もあるでしょう。
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どんな財産が請求の対象となる?
前項でもお話した通り、遺留分の滅殺請求については現金や株、不動産等あらゆる財産が請求の対象となってきます。
そして、ここで気になるのが「様々な種類の財産がある場合」に、請求する側・請求される側は「自由に対象とする財産を選べるのか?」という点です。
もちろん、当事者同士が話し合って納得したのであれば、現金であろうと土地であろうと、好きな財産で精算を行えば済むことですが、訴訟等になれば少々勝手も変わってくるでしょう。
まず請求の対象となる財産ですが、こちらには時間的な順序が設けられています。
仮に遺留分の侵害が第三者への生前贈与の段階から始まり、その後、被相続人が亡くなり、遺言でも遺留分が侵害された場合には、先に行われた生前贈与の財産から順番に滅殺請求が認められることになるのです。
なお、同じタイミングで現金・株・不動産などの財産を相続し、これに対して遺留分滅殺請求を起こされると少々厄介なことになるでしょう。
現金などは分ければ済むことですが、不動産については持ち分の一部を渡さなければならず、その後も「相手方と付き合っていく必要」が出てきてしまうのです。
そこで、こうした不都合を避けるために「請求をされる側は不動産の持ち分などの代わりに、これを現金で精算する権利」が認められており、これを価額弁償と呼んでいます。
つまり、この権利を行使することで請求される側は「不動産を渡すか、現金での精算を行うかの選択肢」を与えらえることになります。
但し、その選択が可能なのは「請求される側のみ」となり、滅殺請求をする側が「現金で欲しい」「不動産で欲しい」との希望を出すことはできません。
遺留分を渡さないためには!
これまでの解説にて、遺留分の存在が相続に様々な影響を及ぼしてくることをご理解いただけたことと思いますが、読者の方の中には「どうにか遺留分を発生させない方法はないのか?」なんてことを考えておられる方もいらっしゃるでしょう。
まず結論から申し上げれば、遺留分は非常に強い権利となりますから、「請求権の発生を防止する手段はない」というのが原則です。
仮に遺言書に「妻には財産はあげない」と書いても、遺留分の請求権は発生してしまいます。
但し、自分に対して暴言を吐いたり、暴力を振るう親族などが相手の場合には、家庭裁判所に申立てを行うことで「相続人からの排除(遺留分からも除外)」することも可能ですし、殺人事件などを起こした親族についは「相続欠格」となり、遺留分も含めて相続が不能となるのです。
また、「遺言では遺留分の請求は阻止できない」と書きましたが、前項で触れた滅殺請求の時間的なルール(先に贈与された財産から順番に請求対象となる)を変更したり、複数の財産(現金・不動産等)の中から「どの財産を請求対象にせよ」といった指定を行うことは可能ですから、相続人同士のトラブルが想定される場合には、遺言書を作成する際に一言文言を加えておくべきでしょう。
なお相続人の合意があれば、被相続人の死亡前に「遺留分請求を辞退(放棄)」させることも可能です。
相続放棄は被相続人が亡くなった後にしかできませんが、遺留分放棄は生前でも可能ですから、生きている内に説得を試みのも一つの手段でしょう。
因みに、遺留分の時効は「遺留分が侵害されているのを知ってから1年(または相続開始後10年)」となりますから、滅殺請求が行われずに1年(または10年)が経過すれば、辞退したのと同様の状況となります。
一方、生前贈与については、相続開始前の1年以内に行われたもののみが遺留分滅殺請求の対象とされていますが、「生前贈与により遺留分が侵害されることを当事者同士(贈与をする側と受ける側)が知っていた場合」や「マイホーム購入資金の援助等、相続に不公平さをもたらす贈与(特別受益)の場合」には、1年以上前でも請求の対象となるルールとなっているため、殆どすべててのケースで請求を逃れることはできないでしょう。
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遺留分とは?まとめ
さてここまで、相続と遺留分というテーマでお話をしてまいりました。
遺留分の説明を行っているサイトは少なくありませんが、「難しくて解り辛い」とのご意見も多いようでしたので、できる限り「解りやすく」まとめてみましたが、如何だったでしょうか。
自分が築いた財産であるのに、「受け継ぐ人間も自由に決められない」というのは非常に理不尽なことであるように感じますが、我が国の法律では避けられないのが現実ですから、充分な知識を身に付けて、制度を上手にご利用いただければ幸いです。
ではこれにて、「遺留分とは?わかりやすく解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
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