相続の順位や割合

 

家族に関する法律を語る上で、避けて通れないテーマが「相続」のお話です。

「親がコツコツと貯めて来た預金を」、「先祖代々受け継いで来た不動産を」と、その形態は様々でしょうが、家族が亡くなり、その資産を子孫たちが受け継いでいく『相続』というイベントは、非常に重要なものであることは間違いありません。

そして人間は必ずやこの世を去る宿命を持っていますから、いざと言う時に慌てない様に、正しい知識を見付けておくべきでしょう。

そこで本日は「相続の順位や割合について解説!」と題して、知っておくべき相続の基礎知識についてお話させて頂きます。

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法定相続とは?

現在の日本の法律では、家族の誰かが亡くなった際の資産の按分は、原則「法定相続」という形式で分配が行われています。

第二次世界大戦以前の我が国では、家長制という制度が採られており、家長(基本的には長男)が親の殆どの財産を相続し、「家(家名)」を守っていくのがルールでした。

しかし敗戦国として終戦を迎えた際には、日本の社会制度の抜本的な改革が計られることとなり、この家長制も廃止されることとなったのです。

そして新たに施行された法律においては、相続に関する基本的なルールが定められ、これを法定相続を呼んでいます。(法定相続による順位や割合の解説は次項にて行います)

なお、テレビのサスペンスドラマなどを見ていると、遺言書などによって一人の相続人が莫大な遺産を相続するシーンなどを見掛けますが、現在の法律では例え遺言書があっても、一人の人間が全て財産を相続するのは困難です。

確かに遺言書を作成しておけば、ある程度法定相続のルールから離れた財産の按分が可能ですが、法律は「例え一円も財産をやらない」と遺言された者のにも一定の取り分を保証しており、これを「遺留分」と呼んでいます。

もちろん、相続人全てに遺留分が保証されている訳ではありませんが、亡くなった方の妻や子供には必ず、状況次第では両親にも遺留分が生じるのです。

但し法律は、遺言を残して亡くなった方の意思も尊重するスタイルを採っていますから、遺留分は最大でも全財産の50%となっており、残りの50%は自由に相続させることが出来ます。

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法定相続の順位と割合

さて、我が国の相続についての基礎知識を身に付けて頂いたところで、法定相続分について詳しく解説して参りましょう。

 

配偶者と子供の相続

日本の相続に関する法律では、他の家族に比べて徹底的に配偶者と子供に対して有利な相続が行える制度となっているのが特徴です。

まず配偶者については、どんな家族構成であっても最低1/2(50%)の財産を相続する権利があります。

そして子供にも、最低1/2(50%)の相続権が与えられますが、子供が2人の場合には50%を分けることになりますから、1/4(25%)ずつを2人で相続することになります。(5人兄弟なら1/5【10%】ずつ)

よって、配偶者と子供がいる状態で相続が発生すると、亡くなった方の他の親族(両親や兄弟姉妹)は相続権が発生しないことになるのです。(仮に配偶者がいなくても、子供がいれば、他の親族は相続権が発生しません)

なお配偶者に関しては、相続が発生する前に離婚していれば相続権は消滅しますが、二人の間に生まれた子供については、離婚後も相続権を持ち続けます。

また、その子供が結婚して、亡くなった人から見れば孫が誕生している場合には、その後に子供が亡くなったとしても、孫が相続権を引き継ぐことが可能。(代襲相続)

因みに子供の相続に関しては、妻との間に出来た子ではない子供(愛人との子供・非嫡子)であっても、認知がなされていれば実の子供と変わらない相続権が与えられますし、養子や婿養子として家族に加わった者については、特別な手続きなしに実の子供と同様の相続権を持つことになるのです。

但し、結婚相手に連れ子が居た場合については、例え籍を入れていても、改めてその連れ子と養子縁組をしない限りは、連れ子に相続権が発生することはありません。

配偶者と子供の遺留分

配偶者と子供には遺留分が与えらえており、その取り分は本来の相続分の1/2(50%)となりますから、相続財産全体からみれば配偶者1/4(25%)、子供1/4(25% 但し人数割り)ということになります。

 

親・兄弟姉妹の相続

続いては、亡くなった方の親や兄弟姉妹についての相続分を解説致します。

前項でも申し上げた通り、亡くなった方に配偶者と子供がいた場合には、親や兄弟の相続権は発生しません。

また、配偶者が死亡していても、子供がいる場合には、その他の親族に相続権は及ばないルールとなっています。

つまり、親・兄弟姉妹が相続権を得ることが出来るのは、「子供がおらず、配偶者のみが残された場合」のみです。

なお親と兄弟姉妹との間にも、相続人としての序列があり、兄弟姉妹に相続権が発生するのは親が亡くなっている場合のみに限られます。(親が亡くなっていても、祖父母がいる時はこちらを優先)

さて、この場合の相続分についてですが、配偶者が2/3(約66.6%)を相続し、親は1/3(約33.3%)を取得することになるのです。

因みにこの相続割合は、親が死亡しており、兄弟姉妹に相続権が発生した際にも同様です。

親・兄弟姉妹の遺留分

但し、遺留分については親は請求が可能ですが、兄弟姉妹には遺留分を請求する権利が与えられていません。

そして遺留分の配分は配偶者2/6、親1/6となりますから、本来の相続分に換算すると配偶者が1/6、親が1/12という結果になります。

なお、配偶者も子供も居ない場合の親の遺留分は1/3となります。

 

甥・姪の相続

ここまで様々な相続のパターンを見て来ましたが、時には本人から見て甥や姪に相続権が発生することもあります。

例えば子供がいない夫婦の一人が死亡し、子供がおらず、亡くなった方の両親や兄弟姉妹も他界していて、その兄弟姉妹の子供が残されているといったパターンです。

このケースですと、本来兄弟姉妹が相続するべき取り分が甥や姪に引き継がれることとなります。

甥・姪というと、相続には無縁の様に感じますが、レアなケースながら相続人となる場合があるのです。

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相続の順位や割合まとめ

さてここまで、相続に関する順位や割合を解説して参りました。

漠然と「相続の仕組み」を理解しているつもりでも、改めて知識を整理してみると、案外見落としていた点も多かったのではないでしょうか。

相続というと「家族同士が揉めるイベント」というイメージがありますが、本来の意味は故人が残してくれた資産を、その一族が大切に受け継いでいくこととなりますから、亡くなった方のためにも正しい知識を身に付け、皆が笑顔でいられるような配分を目指したいですよね。

ではこれにて「相続の順位や割合について解説!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

自由国民社編(2015)『夫婦親子男女の法律知識』自由国民社 472pp ISBN978-4-426-12069-6

 

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