出来ることなら生涯遭遇したくないのが、交通事故というトラブルですよね。
しかしながら、「どんなに気を付けていても遭ってしまう事故」は確実に存在しますし、これがご自身のお子さんの身に降り懸かるとなれば、親として冷静ではいられないことでしょう。
また、ある程度の年齢になれば、子供の自転車やバイク、自動車にも乗るようになりますから、自分の子供が加害者の立場になる可能性も充分にある訳です。
そこで本日は、「子供が交通事故を起こした!巻き込まれた!時の法律知識」と題して、それぞれのケースでどの様な問題が起こり、どんな責任を負わされるかなどについて解説してみたいと思います。
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交通事故を起こした際の法律知識
幼く可愛かった子供が逞しく成長して行く姿は、親にとって無上の喜びを感じるものですよね。
しかしながら、あまりに元気に育ち過ぎてしまえば、自転車をブンブン乗り回すこと様にもなるでしょうし、更にヤンチャに育てば学生の身でありながらバイクや自動車を乗り回すこともあるでしょう。
そんな状態ともなれば、心配になって来るのが「万が一事故を起こしたら・・・」という問題です。
若さ故に無謀な運転をする子も多いのはご存じの通りですが、もし自分の子供が交通事故の加害者となってしまった場合には、一体誰が責任を負うことになるのでしょうか。
裁判所の判例を見てみれば、未成年が交通事故を起こした場合の責任の所在は、年齢により大きく変わって来るものと判断されています。
未成年と聞くと、成人するまでは親に責任があるように感じてしまいますが、実際の裁判所の判断は「責任能力がある年齢に達しているか、否か」が重要な分かれ目となっている模様。
そして「責任能力が備わるのは何歳からか?」という点が非常に気になるところですが、これまでの例を見ると12歳から13歳以上が「責任能力あり」と認められている年齢となります。
つまり、12歳以上の未成年が交通事故の加害者となった場合は、子供本人が自己の責任を負うという結論です。
では、「それ以下の年齢の時はどうなるの?」ということになりますが、責任能力がない未成年の事故に対しては、その親が監督責任を負うことになります。
但し、何度も小さな事故を起こしているのを知っていながら、これを放置した場合などには、子供の責任能力を認めながらも、親の監督責任を認めたケースもありますから、油断は禁物です。
なお、子供に責任能力があり、親の監督責任が問われない場合には、加害者である子供が単独で事故の責任を負うことになりますが、こうした親御さんの多くは子供に代わり、事故の賠償を行うケースが多いとのこと。
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交通事故に遭った際の法律知識
では反対に、自分の子供が交通事故の被害者となったケースを考えてみましょう。
加害者のケースとは異なり、被害者の立場ですから、当然賠償を受けるのは子供本人となります。
ただ、子供が示談の交渉に当たるのは困難でしょうから、実際は未成年者の法定代理人となる親が、代わりに話し合いを行うことになるでしょう。
そして、ここで問題となるのが被害者となった子供の「過失責任」に関することです。
ご存じの通り交通事故の場合、歩道に車が突っ込んで来た等の場合を除き、歩行者側にも一定に過失責任を認めるケースがあります。
横断歩道がない車道を横断したり、信号が黄色になっているにも係らず、道路に飛び出した者には、それなりの責任を負わせるのは当然のことで、過失割合として加害者8・被害者2などの按分がなされるのはご存じの通りです。
しかしながら、事故に遭った被害者が未成年であった場合、この過失割合はどの様に按分されるべきなのでしょう。
あまりに幼い子供の場合、過失責任を問うのは可愛そうな気もして来ますが、加害者となった場合でご説明した12~13歳という「責任能力が生じる年齢」では大人過ぎるようにも思えます。
そこで裁判所は、未成年の過失責任発生の定義を「危険を察知することが出来る能力」、弁識能力(事理弁識能力)が生じる年齢から認める判断を行っています。
では、具体的に何歳から弁識能力が備わっていると考えられるかというと、何と3歳未満の幼児にまで、過失責任を認める判決を行っているのです。
もちろん、年齢の幼さによって「責任の重み」には強弱を付ける判決を行っていますが、被害者寄りの判決が圧倒的だった日本の裁判所がこうした傾向の判断を行い始めたのは非常に画期的なことと言えるでしょう。
ちなみに、弁識能力さえ備わっていない乳幼児が被害者になった場合には、当然本人に過失責任を課することはありませんが、その代わりに親の監督責任を指摘する判決が下されています。
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子供の事故まとめ
さてここまで、子供が事故の被害者となってしまった場合、事故の加害者になってしまった場合の法律知識をお届けして参りました。
「自分の子供が事故に巻き込まれた」と聞くと、親としては当然冷静ではいられませんが、裁判所の判断は極めて冷静なものとなっていると言えるでしょう。
被害者側の立場に立った親御さんからは、「不当な判決だ!」という異議が申立てられることも多い様ですが、そんな際には是非「もし自分の子供が加害者だったら、自分がどの様に感じるか」を胸に手を当ててお考え頂きたいものです。
子供の事故に対する裁判所の判断を見て行くと、「弱者を保護しながらも、不当な判決は行わない」という司法を司る者たちの「気概」を感じずにはおれません。
ではこれにて、「子供が交通事故を起こした!巻き込まれた!時の法律知識」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
参考文献
(有)生活と法律研究所編(2015)『交通事故の法律知識』自由国民社 368pp ISBN978-4-426-11950-8
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