日々の生活を送っている中で、時折耳に入って来るのが「法務局」なる言葉です。
マイホームを購入した際などは、物件の引き渡しを受けるに当たって、法務局に登記の申請を行わなければなりませんし、新たに会社を設立したり、役員を変更する時にも、法務局のお世話になるでしょう。
この様に、日常において何かと係りのある法務局や登記という言葉ですが、その業務内容や意味合いについては「あまり詳しく知らない」という方も多いはずです。
そこで本日は「法務局とは?わかりやすく解説致します!」と題して、その概要を解説してみたいと思います。
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法務局の業務
ではまず最初に、「法務局とな何なのか?」という点からお話を始めさせて頂きます。
法務局を一言で説明するならば、「法律に係る様々な業務を行う、法務省の出先機関」という表現がわかりやすいのではないでしょうか。
我が国日本はご存じの通り「法治国家」であり、国内における全ての手続きや出来事について、法の支配を受けることとなります。
よって、犯罪(法律違反)を起こせば法律によって裁かれ、罰を受けることになりますし、個人間の争いが話し合いで決着が付かない時には、民事訴訟という裁判で決着を付けることになるのです。
また、国民に課せられる納税の義務も法律がその根拠になっていますし、子供が生まれても、人が亡くなっても法律の定めによる手続きを行わねばなりません。
この様に私たちの生活全てに係って来る法律ですが、「法務上の問題に関して相談がしたい!」「一定の事項に関して国の証明書が欲しい」なんて事態が発生した際に、相談窓口が身近にないと困ってしまいますよね。
こうした必要性から設置されることになったのが法務局であり、各都道府県の県庁所在地(地方法務局)や、その他の主だった都市に出張所が設けられているのです。
そして具体的な法務局の仕事としては、不動産や商業登記の管理や受付け、国籍や戸籍に関する業務、供託や公証関係に関するものから、人権擁護についてなど様々な業務を行っています。
なお、こうしたお話をすると「国籍や戸籍は行政(市区町村)の管轄なのでは?」と思われるかもしれませんが、これは法務局が行政に業務の委託を行っているだけで、本来の管轄者は法務局となっているのです。
また供託とは「公共の金銭や物品の預り制度」を指す言葉で、選挙に出馬する折りに保証金を預けたり(没収供託)、大家にアパートからの立ち退きを求められ、家賃を受け取ってもらえない賃借人がこれを預入れたり(弁済供託)といった目的で利用されるものとなりますが、
その窓口も法務局が担うこととなっています。(供託に関する詳細は別記事「供託とは?わかりやすく解説致します!」をご参照下さい)
因みに法務局の仕事の中で最もボリュームを占めるのは登記に関する業務となりますが、こちらは少々ご説明が長くなりますので、次項にて詳細をお話させて頂くつもりです。
登記とは?
では、法務局の仕事の中でも大きなウェイトを占める「登記」について解説して参りましょう。
そもそも登記とは、我が国の様な法治国家において行われている「国による権利や義務の保証制度」を指す言葉となります。
『国の保証って何?』って感じかもしれませんが、実はこの制度は非常に重要なものとなります。
例えば貴方が、ある人からマイホームを購入したとしましょう。
しかしながらこの際、「相手が本当にその物件の所有者なのか?」「お金を支払ったからと言って、本当に物件が自分の所有物になれたのだろうか・・・」という疑問が生じて来ますよね。
また、こうした疑問を人々が互いに抱き合っていたのでは、国の経済も上手く回りませんし、詐欺などに引っ掛かる者も増加するばかりでしょう。
そこで導入されたのが登記制度であり、土地や建物の所有者の名前や権利関係に係る事項から、設立された会社の名称や役員の持ち株数、果ては個人の資格に関する情報等々を、国家が「登記された内容」として保証することにしたのです。
そして、私たちが登記制度を利用するための窓口として法務局が設けられた訳ですが、登記には様々な種類がありますので、以下で各登記制度の概要をまとめておきましょう。
不動産登記
不動産に関する権利や義務に関する登記を不動産登記と呼びます。
マイホームを購入すれば、前所有者から新たな所有者へ名義を変更する所有権移転登記を行い、この際に住宅ローンを利用するのであれば抵当権なども登記されることになります。
なお、不動産登記は表題部、甲区、乙区の三部構成となっており、表題部には土地であれば地目や面積、建物であれば建物の種類(居宅・店舗等)や床面積、構造(木造・鉄筋コンクリート造等)が記載されるでしょう。
これに対して甲区には、所有権に関する登記事項が記載されますので、所有権移転登記の変遷に加え、差押えなどの登記もここに表示されます。
そして乙区には所有権に係る以外の登記が表示されるルールですから、抵当権や地上権、地役権などがその代表例となるはずです。
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法人登記
不動産登記と双璧をなすのが法人登記となります。
会社法においては、「会社としての外観を備えている組織は登記を行うべし」との規定があり、これに違反した場合には最大で100万円にも及ぶ科料を支払うことになりますから、会社である以上は法人登記をするのが通常でしょう。
また、有限会社はもちろん、合同会社や社団法人なども登記を行うことが出来ます。
そして登記が行われれば、商号や代表取締役、その他の役員の名前に、会社の目的や資本金などの情報が登録され、費用さえ支払えば誰でもその情報を閲覧することが出来るようになります。
「どうして、そんな登記が義務付けられているの?」という疑問をお持ちの方もおられるでしょうが、『これから取引する会社がどんな会社で、設立からどれくらいの年月を経て、どんな人間が役員をしているのか』なんて情報は、安全な取引を行う上で最低限必要なはずです。
また、銀行が融資をするにも、実態の定まらない組織にお金が貸せる訳がありませんから、登記を行うことで「法人格」という法律上の人格を与え、融資をすべき相手であるか否かを判断してもらうことになるでしょう。
この様に法人登記は、会社を運営していく上で無くてはならない制度となりますから、法務局が担う重要な業務とされているのです。
その他の登記
ここまで不動産登記と法人登記について解説を行って参りましたが、登記の種類はまだまだあります。
例えば認知症などを患った方がいた場合、法的には「意思能力が欠如している」という判断がなされ、不動産の売買などを行っても、その取引は無効となるのがルールです。
しかしながら、実は認知症であるのに、見た目には判断が出来ず、様々なトラブルを引き起こしてしまうケースがありますよね。
こうしたトラブルを避けるために存在するのが、被成年後見人等の登記となります。
この登記がなされていれば、認知症であることを国が保証している訳ですから、行った取引は問答無用で「無効!」と判断出来る訳です。
また、それ以外にも企業が有する動産(工作機械や船、鉄やアルミなどの原料等)や、他の会社や個人に対する債権なども登記出来る対象となっています。
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法務局と登記まとめ
さてここまで、法務局の存在意義や、その代表的な業務とも言える登記について解説を行って参りました。
マイホームなどを購入する際には、不動産屋さんや司法書士に言われるままに、委任状に署名・捺印を行い、所有権移転登記などをしておられたと思いますが、登記にはこの様に重要な意味合いが存在している訳です。
なお、法務局と係りの深い国家資格者として、司法書士や土地家屋調査士という職業がありますが、司法書士は不動産の表示以外の登記を、権利者に変わって代行出来る資格となっています。(司法書士については別記事「司法書士とは?わかりやすく解説致します!」をご参照下さい)
また土地家屋調査士は、不動産の表示登記を当事者に代わって行える資格となりますから、法務局の周辺に多くの司法書士や土地家屋調査士の事務所が所在しているのは、こうした事情によるものです。
因みに、税理士や不動産会社の中には、サービスとして登記の代行を行っている者たちがおりますが、これは明らかに法令違反となる行為ですから、トラブルを避けるためにも、キッパリと断る勇気が必要でしょう。
ではこれにて、「法務局とは?わかりやすく解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
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