民事訴訟の流れ

 

誰もが避けて通りたいのが、裁判などの法的なトラブルですよね。

しかしながら、自分が大きな不利益を受けてしまえば、相手を訴えざる得なくなるでしょうし、自分は悪いことをした意識がなくもと、ある日突然に訴状が届けられる可能性は充分にあります。

もちろん、専門家である弁護士などに相談して対応していくのが一番の方策ですが、「弁護士任せで何をしているのかサッパリ判らない」というのも不安なものです。

そこで本日は、「民事訴訟の流れを解り易く解説致します!」と題して、訴える側、訴えられる側がどのように裁判日程をこなして行くかについて、解説してみたいと思います。

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訴える側の流れ

ではまず、裁判を起こす側の流れから解説して行きましょう。

裁判を起こすとなると、まずは裁判所に訴え出ることが必要となります。

民事訴訟の場合、起こす裁判で争われる金額が140万円以下であれば「簡易裁判所」、140万円を超える内容であれば「地方裁判所」が管轄することとなります。(詳細は過去記事「裁判所の種類と特徴について」を参照のこと)

なお、簡易裁判所にしろ、地方裁判所にしろ、各地に存在していますが、被告(訴えられる相手)が住んでいる地域の裁判所を利用するのが原則です。(対象物が不動産の場合などは、物件所在地となるケースもある)

さて実際に裁判所に出向いたとして、次に行う作業は「訴状の提出」となります。

訴状の書き方はかなり難解なものとなりますが、簡単にご説明すれば「誰に何を請求するのか(請求の主旨)、その原因(請求の原因)」を書くことになり、この際、裁判で証拠として提出する書類があればこれも一緒に提出します。

但し、訴状に書く内容は「法的にしっかりと構成された文言」としなければならないため、専門家のアドバイスを受けるのが得策でしょう。

内容次第では受理してもらえないこともありますし、受理しても裁判を起こす前に却下されてしまうことも多いですから、ここは充分に注意を払いたいところです。(詳細は「訴訟が却下されるのはどんな場合?」の記事をご参照下さい)

そしてここで訴状が受理されれば、所定の手数料を支払って手続きは終了し、裁判所が訴状を審議した上、相手方に裁判の通知を行います。

因みに裁判を起こす際の手数料は100万円の訴訟で1万円、1000万円で5万円と、請求する金額などにより変動します。

訴状受理後、裁判所の審査が下りれば、数日から10日くらいで第一回口頭弁論(裁判における最初のイベント)の日程を決める連絡が入り、1ヶ月後くらいに裁判が行われることになるのです。(裁判一週間くらい前に、被告が提出した答弁書が裁判所経由で届けられる)

 

訴えられる側の流れ

訴えられる側に関しては、ある日突然、特別送達という郵便にて、裁判所から書類が届くところから「裁判が手続き」が始まることになります。

届く書類は、呼出状、訴状(訴える側が裁判所に提出したもの)、答弁書催告状、原告から提出された証拠等で、この書類が被告の元に到着して初めて「訴訟が成立した」ことになるのです。

通常は、ここで慌てて弁護士などに相談するところですが、今回は自分で手続きを行うのを前提にご説明してみましょう。

郵送にて届けられた書類には提出期限が設けられています。

そして書類の中でも特に重要なのが答弁書催告状等(答弁書)であり、これを提出せずに裁判当時(第一回口頭弁論)を迎えると、相手の訴えをそのまま受け入れた(敗訴)ことにされてしまうのです。

答弁書の提出期限は裁判の一週間前と書かれていますが、実は当日に持参するのでも問題はありません。(早いに越したことはなりませんが)

なお、最も重要なのはこの答弁書に書く内容であり、「原告の請求を認めるのか、認めないのか」、「自分は何を主張したいのか」などを理論立てて記載する必要があります。

但し、弁護士などを立てた場合には、答弁書には「請求を棄却する」旨だけを書き、2回目以降の裁判で反論していく方法もよく採られる様です。

因みに、第一回口頭弁論は日程が原告の都合により決まることが多いので、当日出廷出来ないという方も少なくありません。

もちろん、事情を話せば裁判所の判断で「被告側からの日程変更」も可能なのですが、第一回口頭弁論ではあまり内容の濃い審議が行われないため、答弁書のみを送っておいて「欠席する」のも一つの方法なのです。

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裁判開始

さてここからは、被告・原告共に裁判に臨みますので、流れを一本化してお話を進めさせて頂きます。

最初の裁判は「第一回口頭弁論」と言われ、原告・被告ともに証拠を提出し合い、お互いの主張をぶつけ合うことになるでしょう。

但し、証拠が出そろっていなかったり、議論が尽くされていない場合には、日程を改めて第二回、第三回と口頭弁論が続くことになります。

前項でも説明致しましたが、第一回口頭弁論では被告が欠席したり、「請求を棄却する」という意思表示だけで終了することも多いので、時には僅か数分で裁判が終わることもあるのです。

そして、裁判官が判決を下せる状態となるまで口頭弁論は続き、最終的に「弁論の終結」が宣言されることで、裁判が終結します。

但し、その場で判決が言い渡されることはなく、判決言渡期日が伝えられことになります。

判決言渡期日には法廷で判決が言い渡されますが、読み上げられるのは主文のみとなり、細かな説明はありませんので、欠席する当事者も少なくありません。

例え欠席しても、郵送にて判決が届けられますので、特段問題はないのです。

 

裁判後

判決が言い渡されたなら、そこで裁判は終了となりますが、その内容に納得が行かない場合には、原告・被告共に上級の裁判所に再審理を求めることが出来ます。

(上訴)

例え判決が下されても、判決の確定までは2週間の猶予が設けられていますので、その間に上訴の手続きが完了すれば、次の法廷にて改めて裁判を受けることになるのです。

なお、2週間の期日は「判決正本を受け取った日」がカウントダウンのスタートとなりますから、郵送で届いたなら「到着日」、裁判所に正本を取りに行ったなら「受取日」から2週間ということになります。

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民事訴訟の流れまとめ

さてここまで、民事訴訟の流れについてお話して参りました。

訴訟を起こす側は事前に様々な準備が行えますが、被告にとっては正に「晴天の霹靂」で訴状が届く訳ですから、訴訟の流れを知っておけば「いざという時」にも慌てずに行動が取れますよね。

なお世間では「まず調停を行い、決着が付かない場合に民事訴訟に発展する」という話を耳にすることがありますが、これは家庭裁判所の離婚裁判などのケースであり、民事訴訟には当てはまりません。

但し、繰り返される口頭弁論の中で、裁判官が和解を勧めて来ることもありますから、条件次第ではこれに乗るのも問題解決をスムーズに行うテクニックかと思います。

ではこれにて、「民事訴訟の流れを解り易く解説致します!」の記事を締め括らせて頂くことに致します。

 

 

参考文献

藤田裕監修(2015)『図解で早わかり 最新版 訴訟のしくみ』三修社 256pp ISBN978-4-384-04643-4

 

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