裁判員制度とは?わかりやすく

 

報道番組などを見ていて、時折耳にするのが「裁判員制度」という用語です。

一時期は社会的に大きく注目を集めていましたから、「裁判所に行って、裁判に参加する制度」というくらいのことは多くの方がご存知でしょうが、その詳細については判らないことだらけなのではないでしょうか。

そこで本日は「裁判員制度とは?わかりやすく解説致します!」と題して、この裁判員制度の概要や実際に裁判員となってしまった場合のスケジュールなどについてお話ししてみたいと思います。

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裁判員制度って何だろう?

ではまず最初に、「裁判員制度がどの様なものであるか?」という点からお話しを始めましょう。

裁判員制度は平成21年から、我が国の司法制度の改善を目指して導入されることとなった制度であり、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(略称・裁判員法)」という法律がその根拠となっています。

簡単にその概要を説明するならば、一定のエリアごとに毎年「裁判員」となる人物を無作為に選び(クジで選び)、裁判員裁判の対象となる刑事事件の裁判に参加してもらうというものです。

なお、「裁判に参加する」なんて聞くと、『一体何をするのだろう?』と気になるところですが、裁判員となった場合は担当する裁判の審理に連日出席し、証拠調べから証人等への質問、有罪無罪の決定から、量刑に至るまで判断を下すこととなります。

また、裁判員に選ばれた以上、正当な理由なしに辞退することは許されない上、勝手に裁判を欠席した場合などには、ペナルティーまで科せられることになるのです。

さて、こんなお話を聞いてしまうと、非常にブルーな気持ちになってしまいそうですが、より詳細に制度の概要を知れば、恐れることはないものであることがご理解頂けることと思いますので、次項ではより詳細に制度の概要をご説明して参りましょう。

裁判員制度の概要

では早速、裁判員制度の詳細を見て行くことに致しましょう。

裁判員に選ばれるまで

まずは、裁判員の選定という部分からお話しして行きたいと思いますが、前項でお話した通りその選定(名簿記載)はクジにて行われます。(但し、衆議院議員の選挙権を有する者のみが対象)

また、裁判員が担当する事件は地方裁判所での裁判のみとなりますから、お住まいの地域を担当する地方裁判所ごとに、そして対象となる事件ごとに、裁判員候補者(名簿記載者)が選ばれることになるのです。(裁判員となって担当する裁判は一つのみであり、複数の事件で裁判に参加させられることはありません)

なお、ここで指名を受けたからといって即座に裁判員となる訳ではなく、まずは郵送で送られてくる調査票という書式に必要事項を書き込み、裁判員となる資格があるかの判定がなされます。

裁判員法では、一定の職業に就いている人(自衛官や税理士、法曹関係者など)に「裁判員となる資格なし」としていますし、70歳以上の方や重い病気を罹っている人も辞退が可能です。

更には、仕事でどうしても裁判員となれない者や、家族に介護が必要な者などについても辞退を認めていますが、これらの理由での辞退を認めてもらうためには、事情を裁判所に伝えた上で判断を仰ぐことになりますから、「どう考えても無理!」という余程差し迫った状況でない限りは辞退は難しいでしょう。

こうして最初の選考を通過した者は、再びクジによる選抜を受け、一つの事件について数十人(30~70人程度)のグループに割り振られることとなり、裁判所に出頭して、自分が担当する事件についての説明を受けることになります。

ただ、ここでも更なる選考と、くじ引きが行われるルールですから、最終的に裁判員となるのは数十人の内の僅か6人(被告人が罪を認めている場合は4人)です。

※但し、補欠的な意味合いの補充裁判員も選ばれることになりますから、実際には6人以上となることが殆どでしょう。

そして、こうした選考過程から考えれば、私たちが裁判員や補充裁判員に選ばれる確率は0.01%、10000人に1人にも満たない計算となります。

裁判員となった後

さて、幸運(?)にも裁判員となった者には、その後裁判のスケジュールが通知されることになりますが、審議は集中して行われるため5日~10日程度、連日で裁判所に通うことになるでしょう。

そして6人の裁判員に対して、3人の裁判官が付く形(裁判員と裁判官の合議制)にて、検察や弁護士から提出された証拠調べを行ったり、実際に法廷で証言を聞くなどして、審議を進めて行きます。

なお、最終的には裁判員と裁判官が話し合いの場を持ち、被告を「有罪とするか、無罪とするか」、そして「どれくらいの罰を与えるか(量刑)」を決めて行くことになりますが、法律的な専門知識が必要な点については、裁判官から詳細な説明を受けることが出来るでしょう。

また、話し合いで意見がまとまらない時には、多数決によって量刑等が決まるルールですが、「裁判官が全員有罪なのに、裁判員は全員無罪」なんてケースでは、話し合いをやり直すことになります。(裁判官・裁判員双方の賛成者がいない結論は採用されない)

こうして合議がまとまれば、判決文が作成され裁判員の仕事は終了となります。

因みに被告側が判決に納得せず、控訴を行った場合でも、次の舞台は高等裁判所となりますから、裁判員が以降の裁判に関わることはありません。

裁判が終われば、裁判員たちは普段の生活に戻っていくことになりますが、裁判上で知り得た情報を外部に漏らすことは固く禁じられている上、ルールを破った場合には重いペナルティーも用意されていますから、この点には注意が必要です。

※但し、裁判員をしていたことや、裁判を傍聴していれば知ることが出来る情報は漏らしても差し支えありません。

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陪審員と裁判員の違い

ここまでのお話しで、裁判員制度の概要はおおよそご理解頂けたことと思いますが、海外ドラマや洋画で「陪審員」という言葉を耳にしたことのある方も多いはずです。

そしてパッと見は、この二つの制度が同じものの様に感じられるかもしれませんが、実は大きな違いがあります。

陪審員制度はアメリカやイギリスなどで採用されている方式となりますが、裁判員制との最大の違いは「陪審員が決めるのは有罪であるか、無罪であるかの判断のみ」という点です。

裁判員制では有罪無罪の判定のみならず、その量刑についてまで判断を下すことがなりますが、陪審員は犯罪の認定のみを行い、量刑は裁判官等の専門家に任せることとなる上、裁判官とは合議を行わず、独立して機能しているという点でも違いが見られます。

なお裁判員制はフランスやイタリアなどで採用されている制度となりますから、日本のオリジナルという訳ではありません。

実際に裁判員に選ばれたら

ではここで、貴方が実際に裁判員に選ばれた場合、どんなスケジュールで職務をこなすことになるのかを、具体的にお話しして参りましょう。

貴方は自分で商店を営む自営業者ですが、ある日、裁判所から封筒が送らせて来ます。

「一体何だろう?」と慌てて封を開けてみると、そこには裁判員候補者名簿に登録されたとの通知と、調査票、返信用封筒やパンフレットが同封されていました。

とりあえずは記載のあったコールセンターに電話をし、詳細を尋ねてみますが、単に仕事が忙しいなどの理由で断ることは出来ないようです。

そこで調査票の質問(70歳以上ですか?等)に回答し、返信用封筒にて送り返してみました。

その後、しばらくして、今度は「選任手続期日のお知らせ」と「質問票」なる書類が届けられます。

質問票には「辞退を希望するか?」というお尋ねもありましたが、コールセンターに連絡した際に、単に忙しいだけでは辞退理由にならないという話を聞いていましたし、妻も留守中の仕事の手伝いをしてくれるとのことでしたから、選任手続期日に裁判所に行ってみることにしました。

裁判所に付き、案内に従い会場に入ると、そこには60人近い方々が集結していました。

その後、裁判官や弁護士から事件の概要を知らされ、辞退するか否かの意思確認を迫られます。

事件はかなり陰惨な殺人事件であるとのことで、若い女性などの中には辞退を申し出た方もおられた様ですが、私は既にかなりやる気になっていました。

そして残った者の中で更にクジが行われ、私は見事に裁判員になることに成功します。

以降は裁判の日程、日当が支払われる旨などが説明され、この日は解散。

やがて裁判の期日を迎え、いよいよ裁判員としての初仕事を迎えます。

まずは法廷に陣取り、裁判の流れを見ることとなりますが、5日目以降は裁判官と判決文の作成を巡り、様々な意見交換をしていきます。

こうした話し合いを通して、判決の内容が固まれば、裁判員としてのお仕事は終了です。

最初は厄介な役割が回って来たと嘆いていましたが、裁判が進むに従い、「被害者の気持ちに報いてやらねばならない」との思いが強まり、最終日にはこれまで味わったことのない達成感を抱いている自分に気付くのでした。

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裁判員制度とは?まとめ

さてここまで、裁判員制度をテーマにお話をして参りました。

簡単には辞退できないと聞くと、非常に煩わしい気持ちになるものですが、報道番組などを見ていると「判決に納得出来ない!」と思うことも少なくないでしょうから、選ばれた際には社会のため、日本のために頑張って来て頂きたいと思います。

裁判官の人事権は最高裁判所がキャスティングボードを握っていると言われていますから、最高裁の意に反する様な判決を出す裁判官は非常に少ないと言われています。

こうした司法の矛盾を解消するべく、裁判員制度が設立された訳ですから、このチャンスを逃すことなく、職務を全うして頂きたいものです。

ではこれにて、「裁判員制度とは?わかりやすく解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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