民法改正と瑕疵担保責任

 

社会生活を送る上で基盤となるのが、自分の家ですよね。

仕事や学校で辛い思いをしていても、笑顔に満ちた温かい我が家があれば、頑張る元気も涌いて来るというものでしょう。

しかしながら住宅は年月の経過と共に劣化して行くものですから、建て替えやリフォーム、場合によっては売却などをしなければならいケースもあるはずです。

また、こうした住宅絡みのイベントに際しては、工事の施工不良や、取引上のトラブルも付いて回るものですから、法律的な知識をしっかりと身に付けた上で事に臨むべきでしょう。

本ブログでも、こうした際にお役立て頂くべく、過去に「施工不良に関する法律知識をお届けします!」などの記事を公開させて頂きましたが、実は間近に迫った民法の大改正ではリフォームや不動産売買に絡む関係法令が大幅に変更されることになっているのです。

そこで本日は「民法改正と瑕疵担保責任について解説致します!」と題して、これまでの瑕疵担保責任に代わる契約不適合責任の概要をお説明してみたいと思います。

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契約不適合責任の新設

冒頭でも少々お話し致しましたが、現行の民法では「リフォームでの施工不良」や「新築住宅の欠陥」などについて、工事業者等の責任を追及する際には「瑕疵担保責任」がその法的根拠となっています。

初っ端なら難しい用語が飛び出して参りましたが、「瑕疵」とは建物などの隠れたキズを意味する言葉であり、簡単に言ってしまえば『工事に際して発生する隠れたキズ(施工不良)を工事業者が保証(担保)する責任』ということになるでしょう。

つまり、欠陥住宅や欠陥リフォームでトラブルが生じた場合には、工事のやり直しをさせたり、賠償金を請求するなどの対応が執られますが、その根拠となっているのが瑕疵担保責任という考え方であるということになります。

なお、瑕疵担保責任については現行民法の566条、570条、634~640条にその規定されいるのですが、2020年4月には約130年ぶりとなる民法の大改正が予定されており、この瑕疵担保に関する条項が大幅に変更されることとなるのです。

ただ、こんなお話をしても「大改正とは言いながら、そんなに大きくは変わらないのでは?」なんて思われる方も多いことと思いますが、実は「瑕疵担保責任」という考え方自体が廃止されることとなり、改正後は新たに定義される「契約不適合責任」なるものが、これに取って代わることになります。

因みにこの契約不適合責任、瑕疵担保責任とは基本的な考え方が大きく異なるものとなりますし、初めて導入されるものである故に、今後裁判などでどの様な解釈がされていくかも、今一つ定かになっていないのです。

これではこれから自宅を建て替えをしようとお考えの方や、大規模なリフォームを計画中の方は非常に不安を感じてしまいますよね。

そこで次項では、この契約不適合責任の内容を、現行の瑕疵担保責任と比較しながら、ご説明して行きたいと思います。

また、瑕疵担保責任は建築工事のみならず、不動産の売買でも大きな問題となる事項である上、建築の場合とは扱いが異なる点も多いので、それぞれのケースごとに解説を行っていくつもりです。

建築・リフォームでの契約不適合責任

まず瑕疵担保責任と契約不適合責任の最も大きな違いと言えるのが、その「責任の質」に関わる問題となります。

前項でもお話しした通り、瑕疵担保は工事の隠れた欠陥に対する責任でしたが、契約不適合責任では「契約によって期待される効果が得られなかった際に生じる責任」となって来ます。

クロスの張替えなど、規模の小さな工事では見積書などを確認した後、口頭で発注を行ってしまう方が多いと思われますが、例え口約束であっても施主と工事業者の間には「請負契約」が成立していると考えられますから、この請負契約の成果について契約不適合責任が問題となって来るのです。

よって、瑕疵担保では欠陥のみであった責任の範囲が、請負契約の裏にある「施主の期待」にまで、その範囲が拡大されることとなります。

また、瑕疵担保責任では欠陥について「工事業者に落ち度があったか否かに関わらず、業者が責任を負う」という無過失責任だったのですが、改正民法では『工事業者に過失があった際にのみ責任が降り懸かるルール』に変更されるのです。

なお、業者が責任を負う期間に関しては、瑕疵担保責任では

  • 通常の工事(内装等)・・・完了から1年
  • 木造の増築等    ・・・完了から5年
  • 鉄骨造等の増築等  ・・・完了から10年

というルールでしたが、契約不適合責任では工事の種類に係わらず、発見から1年という期間に改められました。

※但し、工事業者に悪意があったり、重大な過失がある場合には1年を経過しても責任が発生します。

※新築工事の場合で建物の躯体や雨漏りに関する欠陥は、民法とは異なる品確法により、10年間責任を負うルールであり、こちらは変更がありません。

 

更には欠陥が発見された際に工事業者に求めることが出来る対応も、旧民法では

  • 契約解除(但し内装工事又は契約の意味が無い程の欠陥がある場合)
  • 損害賠償
  • 補修の請求

であったのに対して、新民法では

  • 契約解除(小さな欠陥は不可)
  • 損害賠償
  • 補修の請求(不可能な補修は除外)
  • 追完請求(別の工事で相殺等)
  • 代金滅殺請求(工事費の減額)

と様々な責任の取り方が認められる様になったのです。

因みに、ここまでお読み頂くと建築業者に不利な改正点が多い気が致しますが、「工事の途中で施主からキャンセルされた場合に、そこまでの工事費用が請求出来る」旨が明文化されるなど、建築業者に有利な改正点も含まれています。

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不動産売買での契約不適合責任

では建築工事に続いて、不動産売買に関する瑕疵担保責任の扱いがどの様に変わるかについて、お話しして参りましょう。

中古の物件などを購入した場合、引き渡しを受けた後に雨漏りが発覚したり、地盤沈下を発見したなんてお話は時折耳に致しますよね。

そして、こうしたトラブルに際して、物件の売主と買主間で争われることになるのが、瑕疵担保責任の問題となります。

当然ながら2020年以降は、こうした紛争に際して契約不適合責任が適応されることになりますが、何がどの様に変わるのでしょう。

まず責任追及が可能な期間についてですが、不動産の場合は改正前から「知ってから1年」のルールですから、期間自体の変更はありません。

但し、旧民法では損害賠償請求等の具体的なアクションが必要でしたが、今後は相手方に通知を行うだけで良くなります。

また、相手に求めることが出来るアクションについても改正前は

  • 契約解除(契約の目的が達成出来ない場合)
  • 損害賠償

の2種類しかありませんでしたが、改正後は

  • 契約解除(但し、催告が必要)
  • 損害賠償
  • 追完請求(別の物件と交換等)
  • 代金滅殺請求(売買代金減額)

建築の場合と同様に、大幅に求めることが出来る内容が追加されました。

但し、損害賠償は「売主に責任がある場合」にしか請求出来ませんし、追完請求や代金滅殺請求についても買主に過失がある場合は原則認められないルールとなります。

また、瑕疵担保責任の場合には、担保される損害の範囲が売買対象物件その物の価値に限られていましたが、契約不適合責任では「欠陥の無い物件を購入していたら、転売して利益が得られたはず」なんていう履行利益にまで及ぶことになりますから、売主の責任はより重いものになったと言えそうです。

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民法改正と瑕疵担保責任まとめ

さてここまで、民法の改正に伴う瑕疵担保責任と契約不適合責任について解説を行って参りました。

記事をお読み頂ければお判り頂けると思いますが、約130年ぶりの改正だけにその変更点は多岐に渡りますし、考え方もガラリと変わっていますから、契約に臨む際などは充分にご注意頂ければと思います。

また、もう一つ気を付けなければならないのが、民法は基本的に特約が優先するという点でしょう。

例えば改正民法では、工事の欠陥などについて「気付いてから1年」としていますが、契約者間で「欠陥は免責」なんて特約が結ばれると、こちらが優先となってしまうのです。

更には保証の内容についても、施主が工事代金の減額を求めても、契約書にて『補修の請求は出来ない』と書かれていれば、それに従く他はありません。

よって、法令の改正内容をしっかりと理解すると同時に、「原則である民法の規定が、特約によってどんなアレンジをされているか』という点に気を配ることも、非常に重要なチェックポイントとなって来るのです。

ではこれにて、「民法改正と瑕疵担保責任について解説致します!」の解説を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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