夫婦の責任

 

以前に書いた「結婚の法律問題を解説致します!」という記事の中で、結婚した夫婦は法律上「全人格的結合」とも言える状態とみなされるとのご説明を致しました。

愛し合った者同士が結婚して、家族となった訳ですから、法的にも一心同体とみなされるのは「何だか嬉しい気持ち」もして来ますが、実際にトラブルが発生した場合には少々厄介な問題も出て来る様です。

そこで本日は、「夫婦の責任について解説致します!」と題して、結婚したカップルに降り懸かる『責任』というテーマでお話をさせて頂きたいと思います。

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配偶者や家族に対する責任

一言で「夫婦の責任」といっても、その責任の種類は様々なものが存在しています。

そこでまずは、夫婦の当事者同士である夫と妻、そしてその家族に対する責任から解説していくことに致しましょう。

 

配偶者に対する責任

結婚したカップルには、その相手方(配偶者)に対して同居・協力の義務、そして貞操の義務が課せられることとなります。

つまり夫婦は、協力し合い、共に暮らしを営んでいく責任を課せられているということになります。

また夫婦が仲睦まじく暮らす上で、浮気なども論外ですから、各々の貞操についても責任を負うことになるのです。

もちろん、家庭を顧みない夫や異性と遊び回る妻が責任を放棄しているからといって、強制的に行動を制限することは出来ませんが、義務違反を理由に離婚を求めたり、損害賠償を請求することは可能となります。

なお、夫婦の協力義務の中には、生活費の分担も含まれることとなります。

よって夫婦は各々の収入に合わせて、生活費を家庭に入れなければならないのですが、例えば夫と妻が別居した場合などはどうなるのでしょう。

当然、単身赴任など合意の上での別居ならば、夫は妻のいる家庭に生活費を入れなければならないのですが、妻が勝手に出て行った場合には少々微妙です。

勝手に別居した妻に生活費を送るのは非常に納得いかないものがありますが、判例を見ると「生活費を送るべし」なんて判断も時折下されていますから、こうしたケースでは五分五分の割合で生活費の支払いを余儀なくされる可能性があるでしょう。(別居に至る状況にもよりますが)

 

家族に対する責任

結婚は当事者同士の問題であると同時に、その両親や兄弟たちとも家族になってしまう制度です。

よって、配偶者が年老いた父や母の面倒を見ており、何らかの事情でその世話が行えない場合には、義理の両親に対しても扶養義務が発生する可能性があります。

例えば、旦那さんが年老いた母親の面倒を見ていたが、事故で急死したとしましょう。

そして他に母親の面倒をみる旦那の兄妹もおらず、妻が旦那の籍に入っていたままの状態ですと、母親が家庭裁判所に「妻に自分を扶養して欲しい」との訴えを起こすことが出来る訳です。(亡くなった配偶者の兄弟・姉妹についても同様)

但し、例え裁判所が「扶養義務あり」との判断をした場合でも、妻が亡くなった旦那との「婚姻関係の終了」を宣言することで、扶養義務を逃れることが可能となります。

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第三者に対する責任

前項では、夫婦同士やその家族に関する責任についてご説明して参りましたが、本項では夫婦が第三者に負う責任について解説して行きます。

「夫婦が第三者に負う責任て何だろう?」と思われる方もおられるかもしれませんが、例えば「妻が起こした交通事故の責任を夫が負うのか?」、「夫がした借金に妻も返済義務があるのか?」といった問題です。

実は民法には、760条に「婚姻から生ずる費用を分担する」、761条「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う」という規定が存在します。

つまり夫婦は、『結婚していることが原因で生じる費用を分担して支払う義務があり、日常生活で他人と行った契約などに対しては連帯責任を負う』ということになるのです。

こうした条文を読むと、先に例として示した交通事故の損害賠償や、借金の返済も、「夫婦の連帯責任なのでは?」という風に感じますよね。

まず結論から申し上げますと、この夫婦の連帯責任は「個々の案件の事情による」というのが答えです。

判例などを見ていくと、連帯責任となるケースは「夫婦が生活のために行った契約であるか、否か」が争点となっている様です。(日常家事債務)

要するに、夫婦の一方が行った法律行為(契約等)が、生活のためであったものであれば「連帯責任」、そうでない場合は配偶者に「責任なし」となります。

まず借金のケースを例に挙げれば、夫が生活費を調達するために行った借金は、妻にも返済義務が生じることになります。

また、夫を契約者としてアパートを借りた場合で、夫が家賃を払わない場合は、妻も連帯して責任を負うことになるのです。

ただ、この借金がギャンブルのためであったり、生活レベルに合わない高級外車を買うためのものであった場合には、妻は借金から逃れることが出来るでしょう。

因みに判例を見て行くと、交通事故の損害賠償や、配偶者の名義の不動産を勝手に売買してしまったケースでは、「連帯責任を認めない」という判決が示されています。

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夫婦の責任まとめ

さてここまで婚姻関係を結んだ夫婦について、当事者間の責任、家族への責任、第三者への責任について、それぞれご説明して参りました。

記事をお読み頂くと、夫婦が共同で責任を負う場合も多いものの、中には明確に責任追及を除外されるケースが存在することがご理解頂けるはずです。

なお、ここで一点気になるのが「夫婦となってから取得した財産は一体どちの所有物として扱われるのか?」という点かと思います。

離婚する際などには、財産分与として資産を1/2ずつ分け合うのが原則ですから、例え夫・妻どちらかの名義で購入した物品や不動産も所有権は1/2ずつな気もして来ますが、実はこの解釈は誤りです。

判例によれば、例え夫婦であってもその一方の購入した資産は「購入した者に所有権がある」と判断しています。

但し、「夫婦としての関係が終了し、離婚に伴う財産分与をしようとする際には原則1/2に分けるべし」と考えているようですから、結婚中と離婚後では財産の扱いが異なる点にご注意下さい。

ではこれにて、「夫婦の責任について解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

自由国民社編(2015)『夫婦親子男女の法律知識』自由国民社 472pp ISBN978-4-426-12069-6

 

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