結婚の法律

 

出会った男女が愛し合い、結婚というゴールを迎えるのは、大変におめでたいことです。

また近年では「婚活」という言葉も流行していますから、男女を問わず結婚というイベントには高い関心が寄せられている模様。

但し、既婚の先輩方に言わせれば「結婚はゴールではなく、あくまでもスタート」という意見も良く耳に致しますから、幸せだと浮かれてばかりもいられないことでしょう。

そして結婚というイベントを法律的な面から見て行くと、そこには独身時代とは比べ物にならない「変化」が待ち構えているのを皆さんはご存じでしょうか。

そこで本日は「結婚の法律問題を解説致します!」と題して、法律という側面から見た『結婚』について考えてみたいと思います。

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そもそも結婚とは

ではまず最初に、日本の結婚制度自体について考えてみましょう。

実は世界を見渡すと、法律的な手続き無しでも結婚できてしまう国も存在します。

また、結婚式(宗教的な儀式)さえ挙げれば、夫婦としてみなされる国もありますから、映画などでデートの帰りにそのまま教会で式を挙げるなんていうシーンを見掛けるのも、こうした制度によるものなのです。

しかしながら日本は、法律上の手続きなしには夫婦と成れない制度(法律婚主義)を採用していますから、婚姻届を提出して受理されなければ夫婦とはなれないルールとなっています。

なお日本で夫婦となった場合、法律的には「全人格的結合」とも言える状態となりますから、そのには多くの義務や責任が付き纏うことになるのです。

 

こんな場合は結婚不可!

日本における結婚という制度の概要についてご理解頂けたところで、法的に結婚が認められないケースについて見て行きましょう。

 

婚姻年齢の制限

まず第一に結婚できないケースとして挙げられるのが、法律の定める婚姻年齢に達していない場合です。

ご存じの通り、男性は満18歳、女性は満16歳になるまで結婚できないのが日本のルールとなっており、この点については例外は認められません。

なお、この婚姻年齢に達すれば、誰でも自由に結婚できるかと言えば、必ずしもそうとは限りません。

実は我が国では、成人に達するまでの結婚には原則両親の承諾が必要(婚姻届に同意欄が存在)となり、この承諾が得られない未成年者は婚姻届を受理してもらえません。

ちなみに原則は「両親の承諾」となっていますが、どうしても承諾が得られない場合には父・母どちらか一方の承諾でも認められるという特例がありますが、両親ともに反対の場合には成人するまで結婚を延ばすしか方法はないでしょう。

 

重婚の禁止

これも有名なお話ですが、我が国では重婚(一人の人間が複数の人間と結婚する行為)は認めらていません。

他に結婚相手がいる者が、他の人間と重ねて婚姻届を提出すると、これは受理されないルールになっています。

こんなお話しをすると国際結婚などの場合は、「本国に妻や夫が居てもチェック出来ないのでは・・・」という気もして来ますが、こうしたケースでは婚姻届に本国の大使館発行の独身証明書などを添付する決まりとなっているです。

なお基本国際結婚は、それぞれの国の結婚に関する法律が適応される決まりとなっていますから、日本で婚姻年齢に達している外国人でも、本国の規定により日本で結婚できないというケースも存在。

因みに「本国の法律が適応」なんてお話をすると、『一夫多妻制の国の人と結婚するとどうなるの?』という疑問が浮かびますが、これは例え他国の法律とは言え、日本の公序良俗に反するという理由で却下されます。

 

再婚制限

こちらは初婚の方には無関係なお話となりますが、女性が再婚する場合、前の婚姻が終了してから100日間は結婚が認められないというルールがあります。

これは女性が妊娠していた場合、お腹の子供が前の夫の子供か、これから結婚する夫の子供かの区別が付かなくなるという理由による規制です。

実はつい最近まで300日間は再婚不可というルールだったのですが、最高裁の憲法違反という判決を受け、100日間に短縮されました。

但し、この100日の間に出産を終えた場合や、妊娠していないことを証明する医師の診断書があれば、婚姻届は受理され100日以内でも再婚が許されます。

 

近親婚制限

そして最後に挙げるのが、近親婚という行為に関する規制となります。

ご存じの通り、自分の兄弟や父母、孫などとの結婚は許されていません。

「そんな当たり前だ!」というお声も聞えて来そうですが、近親婚の規制はこうしたダイレクトなケースだけに限りません。

例えば、自分の結婚相手の父や母などとは、血の繋がりが無いにも係らず許されていないのです。

もちろん我が国では重婚は禁止ですから、結婚相手と別れた後というのが前提になりますが、一度でも結婚した相手の親や祖父母等との結婚は許されません。

また、養子をもらう際にも近親婚の制限を課せられることがあります。

例えば、養子をもらった(養親)は、養子の夫や妻はもちろん、養子の子供や孫とも、例え養子を解消した後でも結婚は不可となるのです。

この規定は養親のみならず、養親の父母(直系尊属)にも適用されますが、養親の兄弟(姉妹)や養親の子供(養子から見ると兄弟)が、養子と結婚することは何ら問題がありません。

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結婚するとここが変わる

では、こうした結婚を制限するハードルを乗り越え、晴れて夫婦となった二人には一体どの様な法律上の扱いがなされるのでしょう。

 

夫婦同氏

結婚すると「女性は苗字が変わる」のが通常パターンですが、法律上では「夫婦は同じ苗字(氏)を名乗ること」としか決められていません。

よって、夫が結婚前の妻の苗字に変更するのも問題はないのです。

なお、時折耳にする「夫婦別姓」については、現在でも議論が進められていますが、近年の最高裁判決では「夫婦別姓としないことは憲法違反ではない」との判決を下していますから、近い将来この制度が採用されることになるかは「微妙」といった状態でしょう。

 

同居・協力の義務

夫婦となった以上は、お互いに助け合うのはもちろんのこと、同居することも義務とされています。

夫婦の協力については、家事を行ったり、働いて生活費を入れるなどの義務となり、これに違反した場合、裁判ともなれば「立派な離婚の理由」として扱われることになるでしょう。

また同居に関しては、夫婦が互いに話し合い、合意の上で行われた単身赴任や別居などは除外されるものの、愛人宅に入りびたりといった状況は義務違反となります。

仲の良い夫婦からみれば当たり前の義務と感じるかもしれませんが、こうした義務違反を理由に起こされる離婚裁判は決して少なくありません。

 

浮気禁止

こちらも当然のことの様に感じますが、法律上でも取り決めがあることは知らない方も多い様です。

もちろん不倫などは、離婚の正当な理由となりますが、浮気をされた側の配偶者は夫や妻に損害賠償の請求を行うことも出来ます。(詳しくは「浮気と慰謝料について解説致します!」の記事参照)

なお、浮気相手にも損害賠償の請求を行うことが可能ですが、浮気相手が既婚者であることを知らなかった場合には、慰謝料を取ることは困難でしょう。

 

結婚すれば大人

日本の法律では、満20歳をもって成人として扱わるルールとなっていますが、この成人年齢に満たない者でも、結婚することにより法律上は「成人と扱われる」こととなります。(婚姻による成年擬制)

こんなご説明をすると「女性は16歳でも、結婚すればお酒も煙草もOKなの?」というお声が聞こえて来そうですが、この規定は行政上にまでは及びませんので、飲酒・喫煙などは『不可』です。

 

相続権も発生

結婚した夫婦には、一方の配偶者が死亡した場合、残された者に相続人となる権利が与えられます。

また子供が居た場合には、当然その子供も相続人となることになりますから、亡くなった夫や妻の財産は「全て残された配偶者」と「子供」に相続されることになります。(子供が居ない場合は、亡くなった者の両親、両親が既に居ない場合は兄弟が、妻と相続分を分け合う)

こうした法制度から、資産を持つ家の子供の結婚ついて、親から猛反対を受けるケースが多いようです。

結婚に際しては、夫・妻共に資産という「相手の大切なもの」を引き受ける立場となることを、しっかりと自覚するべきでしょう。

 

夫婦間の契約は取り消し放題

これまでのお話の中でも、結婚は「全人格的結合」であるとお話しました。

そして法律は、こうした考えに基づいて「夫婦の間に法律を持ち込むのは不適当」という判断を下しています。

つまり「夫婦間で行った約束事などを破った」としても、それに対して損害賠償などを請求することは出来ないという意味になります。

例えば夫が妻に「100万円やる」と約束し、これを守らなくとも契約違反にはならないのです。

但し、既に夫婦仲が悪化している場合については「5000万やるから離婚してくれ」なんて約束を破ることは許されず、裁判所も「損害賠償義務あり」と判断していますから、ご安心頂ければと思います。

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結婚の法律問答まとめ

さてここまで、結婚というイベントを通過したカップルに課せられる法的な責任や、結婚という制度についての解説を行って参りました。

改めて記事を見直してみると「当たり前と言えば当たり前」な事項も多い様に思えますが、純粋に結婚に夢膨らます若者が知れば、思わず「引いてしまう」ような内容も含まれていますよね。

結婚だけでも「これだけの責任」が二人の上に圧し掛かって来ますし、その後子供が生まれれば「責任は更に重いものへと変化する」のは確実です。

そしてこれらの責任は、単に「結婚したい」という願望のためだけに負うには「あまりに重い」と言わざるを得ませんから、将来のこともしっかりと考えた上で、人生の大切な決断を行ってもらいたいものです。

ではこれにて、「結婚の法律問題を解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

自由国民社編(2015)『夫婦親子男女の法律知識』自由国民社 472pp ISBN978-4-426-12069-6

 

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