浮気と慰謝料

 

男女が互いを信頼し合い、手を取り合って生きて行く姿は大変に美しいものです。

街中などでご高齢のご夫婦が手を握りながら歩いている姿などを見掛けると、「実に羨ましい・・・」と感じられる方も少なくないはず。

そして、「何時かは自分も、あんな風に歳を重ねられたら」なんて思うものですが、我が国の離婚率は年々上昇しつつあり、男女が互いに努力し合わない限り、先に述べた様な「理想的な夫婦」となるのは非常に困難であると言わざるを得ません。

なお、カップルが破局を迎えたり、夫婦が離婚という道を選ぶにあっては、性格の不一致や価値観の違いなど、様々な原因が考えられますが、 破局原因の不同のトップと言えば、やはり『浮気』に他ならないでしょう。

また相手の浮気に対して、された側は「慰謝料を請求できる」とされていますが、一体どんな場合にこれが可能となり、どれくらいの金額を請求できるのか?など、判らないことが多いですよね。

そこで本日は「浮気と慰謝料について解説致します!」と題して、不貞に関するあれこれを解説して行きたいと思います。

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どんな場合に慰謝料を請求出来るか?

「浮気に対して慰謝料が請求出来る」というのは広く知られたお話ですが、『一体何を根拠に慰謝料支払い義務が生じるのか』については、ご存じない方も多いはず。

例えば夫婦の場合ですと、民法上「夫婦は互いの貞操を守る義務を負う」という規定がありますから、この義務に違反することは「不法行為」と判断され、そのに『損害賠償義務』が生じることとなる訳です。

そして、ここでいう損害賠償こそが「浮気に対する慰謝料」ということになります。

では、「結婚していないカップルの間では、浮気に対する慰謝料は一切認められないのか?」という疑問が生じて来ますが、その答えは「生じることもある」というのが正解でしょう。

「そんなことあるの?」と驚かれた方も多いでしょうが、例えば籍は居れていないものの夫婦同然に生活しているカップルは「内縁関係」と法的にみなされることがあり、内縁関係である場合には損害賠償請求が可能となります。

但し内縁関係とみなされるには、「夫婦同然の生活を送っていること」、「その状態が第三者からも認知されていること」が要件となりますから、単に同棲している場合や、付き合っているだけというケースでは、認められることはないでしょう。

では、「付き合っているだけでは、全く慰謝料を取ることが出来ないのか?」ということになりますが、そうとばかりも言えません。

例えば、交際相手と結婚の約束をしていたのであれば、婚約破棄を理由に損害賠償の請求が可能となります。(詳細は別記事「婚約破棄・成立に関する法律知識」をご参照下さい)

また婚約が成立していない場合でも、「結婚をほのめかされて交際に至った場合」や「相手が既婚者であることを知らずに、妊娠してしまった場合」などには、『貞操侵害』という理由で慰謝料が取れる場合もあるのです。

なお、夫婦や内縁関係でありながら浮気をされた場合には、自分の配偶者の他に、その浮気相手にも損害賠償を請求することが可能となります。(浮気をした配偶者と浮気相手は共同不法行為を働いたことになる)

但し、これは浮気相手が既婚者であることや、内縁関係の相手が居ることを知っていた場合(故意)、又はその気になれば既婚者であることに気付けたであろう場合(過失)に限られますから、注意が必要です。

因みに浮気に関する裁判で、既婚者同士が不倫関係となった場合には、「当事者男性の妻が、自分の夫と浮気相手の女性に損害賠償を請求」、「当事者女性の旦那が、自分の妻と浮気相手の男性に慰謝料の支払いを求める」というダブル訴訟となることも少なくありません。

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慰謝料の請求が認められないケース

では反対に、「こうしたケースでは慰謝料の請求は出来ない」という例を見て行きましょう。

但し本項では、結婚又は内縁関係とみなされる場合を前提にご説明致します。

 

既に関係が破綻している場合

浮気をしたにも係らず、損害賠償の請求が行えないケースとしてまず挙げられるのが、結婚中であれ内縁関係であれ、二人の関係が既に破綻して場合となります。

不貞に関する慰謝料とは、そもそも相手が被った精神的なダメージをお金に換算したものとなりますから、既に別居していて離婚秒読みなんて状態にならば、「精神的なダメージは無し」と判断されることになる訳です。

よってこうしたケースでは、相手方の損害賠償の請求が棄却されることも少なくありません。

 

既に許している場合

そして、損害賠償が請求出来ないもう一つのパターンとなるのが、浮気がバレて揉めた後、既に二人が仲直りしているというケースとなります。

もちろんこうした場合には、自分の配偶者等に対してではなく、浮気の相手方に報復として慰謝料を求めるのが一般的ですが、先程の「既に関係が破綻している場合」と同じく、『既に仲直りしているなら、精神的なダメージは無し』と判断されることとなるでしょう。

浮気の慰謝料は、あくまでも癒えない心の傷をケアするための費用となりますから、「傷付いていない人間に対しては、支払う必要がない」というのが裁判所の方針です。

 

慰謝料の相場

さてここで、最も気になる浮気に関する慰謝料の相場についてお話させて頂きたいと思います。

書籍やネットなどを見ると、平均200万円程度といった記述や、100万円~300万円といった幅のある相場が記されていることも多いと思いますが、実際に判例を見ていくと、50万円という低額な事例から、400万円、500万円なんて高額な賠償額事例が存在してるのが現実です。

もちろん個々のケースにより状況は異なるでしょう、そもそも原告(浮気をされた側)の請求額も異なるため、一概に相場を示せないという事情はあるのですが、総合的に事件の内容と判決を見比べていくと、浮気の期間や子供の有無、浮気がバレた際の対応などにより大きな金額の差が出ている模様。

例えば、短期間の浮気であり、自主的に関係を清算したが後に配偶者知られ、本人も深く反省している様な場合には50万円など低い額の判決が多い様です。

これに対して長期間関係を続けた上、子供を置き去りにして浮気相手と同棲を始めたケースなどでは、300万、400万円という高額な支払命令が下っています。

よって程度が軽く、本人も反省している場合には50万円~100万円程度、長期間関係を続けていたり、家庭を顧みない態度が見られる時には200万円以上の高額な慰謝料の支払を求められるということのなるでしょう。

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浮気と慰謝料まとめ

さてここまで、浮気とそれに関する慰謝料について、解説を行って参りました。

現代では、不倫などといった話題は世間に山程転がっているものですが、折角縁あって夫婦となったパートナーを裏切る行為は、出来る限り控えるべきです。

また、自分が被害者となってしまった場合には、「報復してやりたい」と思うのが当然ですが、決して個人的な報復は行わず、法律の定める手続きを淡々と進めるのが正解でしょう。

なお判例を見ていくと、「酒に酔っての一度だけの過ち」というケースでは慰謝料が非常に低額になったり、請求自体が認められなかった場合もありますし、肉体関係を伴わない「プラトニックな関係」では慰謝料の請求自体が困難であると考えられますから、この点には注意が必要です。

慰謝料の請求ともなれば、夫婦の関係に大きな影を落とすことは間違いありませんので、くれぐれも慎重にじっくりと考えた上での判断をお願いしたいものです。

ではこれにて、「浮気と慰謝料について解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

自由国民社編(2015)『夫婦親子男女の法律知識』自由国民社 472pp ISBN978-4-426-12069-6

 

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