内縁関係とは

 

社会生活を営んでいると、時折「内縁関係」なる言葉を耳にすることがあります。

またサスペンスもののドラマや映画、ニュース番組の事件報道などでは、かなりの頻度でこの用語が使われている模様。

もちろん誰でも、「内縁の妻」や「内縁の夫」と聞けば『籍を入れていない男女の関係』ということくらいは想像が付くことと思いますが、実は法律上では「夫婦関係に準ずる非常に強い結びつきの関係」と扱われているのです。

そこで本日は「内縁関係とは?という疑問にお答えします!」と題して、この内縁という関係性について解説をして行きたいと思います。

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内縁関係とは?

内縁関係と聞くと、「単に同棲しているだけのカップル」というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、法律上での「内縁関係」は単なる同棲とは『かなり趣を異にしたもの』となります。

冒頭でも申し上げた通り、法律上の内縁関係は「夫婦に準ずるもの」と定義されますので、『現実に本物の夫婦の様に日々の生活を送っていること』、『第三者からも夫婦同然に認知されていること』が要件となっているのです。

そしてこうした要件を備えることにより、「関係の解消に慰謝料が発生する」、「浮気を禁ずる」、「財産の分与権を認める」など、様々な権利と義務を生じさせることとなります。

内縁関係の義務や権利については、次の項から詳細に解説して参りますが、この項ではどんなカップルが内縁関係と認めらるかについて掘り下げてみましょう。

既に申し上げた通り、「実質も外見上も、そして他人からも夫婦同然」であることを要件とする内縁関係ですから、単に同棲している恋人同士などが「内縁」と認めらることはまずありません。

ただここで問題となるのが、カップルのどちらか一方に妻や夫という配偶者が存在する、重婚的な内縁関係についてです。

日本の法律では当然重婚は禁止されていますし、既に結婚している人間と「夫婦同然」というのも有り得ない様に思えますが、裁判所は限定的にこの重婚的内縁関係を認めています。

認められる要件となるのは、「既婚者の夫婦関係が破綻状態(長期間の別居等)になってから、関係をスタートさえている」、「相手が既婚者であることを知らなかった、若しくは離婚するものと信じていた場合」という2点であり、この条件が揃えば内縁関係と認められる可能性があるでしょう。

なお、結婚したくても結婚出来ない事情の中には、近親婚の制限に関するものも多いと言われています。

我が国の法律では、直系血族(父・母等)・親等内の傍系血族(兄・姉・弟・妹)に加え、一度でも結婚した相手の親兄弟や、養子縁組をした者との結婚を禁止しているため、「こうした関係の者と夫婦同然に暮らしているカップルは内縁関係と呼べるのか?」という疑問が生じて来ますよね。(近親婚の制限については別記事「結婚の法律問題を解説致します!」をご参照下さい)

流石に自分の親や兄弟というケースはレアでしょうが、元の妻や夫の兄弟・姉妹と恋に落ちるというパターンは有りそうな気もしますが、裁判所はこうした関係の者達を「内縁とは認めない」との判断を下しているのです。

 

内縁関係と子供

さてここまで、「どの様な場合に法律上内縁関係とみなされるか」についてお話して参りましたが、例え法的に内縁関係とみなされても、結婚していなければ認められない権利もいくつか存在しています。

例えば内縁関係では、相手の姓(苗字)を名乗ることは許されませんし、相続についても原則認められないルールとなっているのです。

では、もし内縁関係の者同士の間に子供が出来たら、一体どんな扱いを受けるのでしょうか。

結論からも申し上げれば、法律はこうした子供について「母親方の戸籍に入るもの」と定めています。(名乗れる苗字も母方のみ)

但し、内縁関係が開始されて200日以内、若しくは内縁関係を解消して300日以内に生まれた子供は、内縁関係の男性の子供と推定されますから、認知を求められた場合にはまず確実にこれが認められることとなるでしょう。(内縁相手の男性の子供でない証拠があれば別ですが)

そして認知がなされれば、家庭裁判所の許可を得た上で男性の戸籍に入ることも可能となり、男性の名字も名乗れれば、男性への相続権も発生することとなります。(あくまで非嫡出子となりますが、相続分は嫡出子と変わりません)

なお、子供の親権はあくまでも母親が持つこととなりますが、認知が行われた後ならば母親と協議の上、男性が親権を取得することも不可能ではありません。

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内縁関係と浮気

通常、婚姻関係にある男女には、同居・協力の義務、そして貞操の義務が課せられることになりますが、結婚に準ずる関係とされる内縁でもこれは変わりありません。

よって、理由もなく長期間別居することは許されませんし、生活費(婚姻費用)を分担する義務も生じてきます。

ならば「貞操に関する義務は?」というお話になって来るかと思いますが、家庭裁判所は内縁関係にある男女の不貞(浮気)についても、夫婦同様の不法行為責任を認めており、浮気をした者やその相手へ慰謝料の請求を行うことが可能です。

但し判例を見ていくと、通常の夫婦に比べて慰謝料の額は少な目(半分くらいが多い)となっているのも特色でしょう。

 

内縁関係の解消

ここまでのご説明をお読み頂ければ、内縁関係が如何に夫婦に近いものであるかはご理解頂けたことと思いますが、夫婦の離婚にあたる「内縁関係の解消」についても、法律は夫婦同様の権利を認めています。

よって「他に好きな人が出来た」、「相手が嫌になった」など理由で内縁関係を解消した場合ならば、解消された側は損害賠償としての慰謝料の請求が可能です。

また通常の離婚の様に、二人が協力して得た資産がある場合には、財産分与も認めていますから、結婚してないからといって別れる際に何も貰えないということはありません。

但し、結婚しているカップルがそうである様に、相手が暴力を振う、浮気をした、生活費を入れないなど、関係を解消しても無理のない理由(正当事由)がある際には、慰謝料等の請求は認められないでしょう。

なお、婚姻関係にあれば「離婚できるか?」という争点で裁判となることはありますが、内縁関係では「内縁を解消できるか?」という争いは不可能となりますから、慰謝料や財産分与といった事後処理的な内容のみを裁判所に判断してもらうこととなります。

 

内縁関係と相続

そして最後にご説明するのが、内縁相手が死亡した際の相続のお話となります。

ここまでの解説をお読みになれば、「当然相続も可能」と思われるかもしれませんが、相続についてだけは夫婦同然とは行かないのです。

原則、内縁関係にある相手が死亡した場合でも、その内縁の妻や夫には相続権は与えられません。

前項では関係解消の際には財産分与が可能とお話しましたが、解消と相続では扱いが異なりますので注意が必要です。

但し、亡くなった相手名義で借りている賃貸の部屋に関しては、内縁相手に引き継がれることとなりますし、住まいが借地権である際には、建物こそ親族などの相続人の手に渡りますが、残された居住者を無理やり追い出すことは出来ませんから、相続人との間で改めて建物の賃貸借契約を締結したり、建物を買い取らせてもらうなどの方法で処理することになるでしょう。

なお、死亡した相手に全く相続人が居ない場合については、内縁相手が家庭裁判所に申し出て、特別縁故者と認められることで財産分与を受けることが可能です。

しかしこの制度を利用した場合には、裁判所が分与を受ける財産を決定しますから、全ての財産が手に入る訳ではありません。

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内縁関係まとめ

さてここまで、法律上の内縁関係について解説して参りました。

内縁関係は、一部の権利を除いて殆ど夫婦と変わりない扱いを受けることが出来ることをご理解頂けたことと思います。

なお夫婦が可能で、内縁関係にあるものが出来ない行為をまとめてみますと、

  • 相手の姓を名乗ることが出来ない
  • 子供はあくまでも非嫡出子
  • 原則相続人にはなれない
  • 未成年の場合、婚姻による法律上成人扱いを受けられない

という4点になるかと思います。

この様に多くの権利が認められる内縁関係ではありますが、相続人となれない点はかなり「厳しい」と言わざるを得ませんから、可能であれば籍を入れられる様に努力しておきたいところです。

ではこれにて、「内縁関係とは?という疑問にお答えします!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

自由国民社編(2015)『夫婦親子男女の法律知識』自由国民社 472pp ISBN978-4-426-12069-6

 

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