ご商売をされている方や、多くの資産をお持ちの方にとって、非常に恐ろしいのが「税務調査」なるものです。
ある日突然、税務署が訪ねて来て「帳簿を見せてくれ!」なんて言われたら、別に悪いことをしていなくとも、思わず身がすくんでしまいますよね。
また、自分ではしっかりやっているつもりでも、調査官から申告漏れなどを指摘されれば、改めて税金を納めることになりますから、これはこれで由々しき事態となる訳です。
そして、こんなお話を聞くと「どうにか税務調査を逃れる方法はないの?」「調査を拒否したらどうなる?」なんて疑問が湧いて来ますよね。
そこで本日は「税務調査の法律問答をお届け!」と題して、税務調査に関する疑問について法律的なアプローチで解説を加えて行きたいと思います。
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税務調査とは?
ではまず最初に、「税務調査とは一体どんなものであるか?」という点からお話を始めましょう。
こんなお話をすると「税務署が来て調べて行くだけでしょう?」とのツッコミを受けてしまいそうですが、事はそんなに単純ではありません。
実は税務調査には大きく分けて「強制調査」と「任意調査」の二つのパターンが存在しており、受ける調査がどちらであるかによって、問題の大きさがかなり変わって来るのです。
強制調査
まず最初にご紹介するのが、強制捜査のパターンとなります。
名前からして「ヤバそうな臭い」がプンプンして来ますが、お察しの通り、こちらが最悪のパターンです。
強制捜査とは、国税局査察部(通称・マルサ)が行う調査を指す言葉となりますが、こちらは調査員がやって来た段階で、裁判所より捜査令状が発行されている状態となります。
つまり、事前に脱税容疑での内偵が完了しており、裁判所が「疑うに充分」というお墨付きを与えている案件ということになる訳です。
そして調査員には、証拠品を差押えたり、関係者を拘束する権限が与えられていますから、自宅で取り調べを受けながらパソコンやスマホを押収されることもあるでしょうし、場合によって国税庁に連行されるケースさえあります。
また証拠の隠滅を図られないように、法人であれば会社と社長の自宅、経理担当者の自宅などに一斉に調査が入りますし、金庫が壁の中に隠されている場合などには、建物を破壊して中身を検めるといった調査が行われるでしょう。
よって、強制調査については抗う術はまずありませんから、顧問弁護士や税理士に連絡して、支持を仰ぐしかありません。
なお、強制調査が行われる件数は年に200件程度、脱税額についても1億円以上という大型の案件のみとなりますから、「全く身に覚えがないのに、突然強制調査を受けた」なんてことは殆どないはずです。
任意調査
これに対して世間一般でしばしば行われているが任意調査と呼ばれる代物です。
「任意」という名称から、『嫌なら断れるのでは?』と誤解されている方も多い様ですが、調査を拒否するには「正当な理由が必要」とされいますから、実際には半強制的な調査と言えるでしょう。
因みに正当な理由もなく任意調査を拒めば、国税犯則法19条2項の規定により、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金というペナルティーを課せられることになります。
なお任意調査には、突然調査員がやって来て調査を行う「抜き打ち型」と、事前に税務署が連絡が入れて来る「事前通告型」の2パターンがありますが、現金を多く取り扱うような商売をしていない限りは、事前通告型が殆どとなります。(任意調査全体の90%)
そして調査日を迎えれば、朝から夕方(早くても15時くらいまで)まで調査員が帳簿などを確認しながら、事情を聴き出すという作業が最短で一日、長ければ数日間行われることになるでしょう。
また、調査の中で行われる質疑応答に関しても、調査を受ける側はその質問に真摯に答えることが求められており、嘘の証言などを行った場合には、調査を拒んだ時と同様の罰を受ける可能性があります。
反面調査
こちらも任意調査の一種に分類されるものとなりますが、通常の調査と大きく異なる点は「調査のターゲットが自分では無く、他の会社や他人である点」となります。
例えばある会社に税務調査が入ってものの、明らかに不審な会計処理をしている形跡があった場合や、全く経理関係の書類を保存していなかったとしましょう。
こうなると調査員も、何を根拠に課税して良いものやらという事態になってしまいます。
そこでターゲットの会社の取引先などに反面調査を行い、「どんな取引が行われていたのか?」「取引価格の誤魔化しなどがないのか?」という点を確認する訳です。
また通常の任意調査同様、事前に告知してから反面調査に向かう場合もありますが、悪質な証拠隠しがあるような場合には、抜き打ちの反面調査も行われます。
ただ、ここで困ってしまうのが、「大切な商売相手の情報を税務署に公開してしまって良いのか?」という問題です。
冒頭でも申し上げた通り、この反面調査も任意調査の一種とされていますから、拒否した場合には国税犯則法19条2項の規定により、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられてしまいます。
但し、あくまでも「調査先の業務が優先」というルールがありますから、突然反面調査が入った際には、期日の延期を申し出て、対象の取引先に「情報を公開する旨」を告知しておくのがベストでしょう。
こうすれば、取引先との無用な軋轢が生じることを防ぐことが出来るはずです。
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調査の後はこうなる!
ここまで、税務がどの様なものであるかについて解説して参りましたが、実際に調査を受けた後はどんな事態が待っているのでしょう。
任意調査の場合
任意調査が行われ、会計上の不正や処理上の問題点がなければ、もちろん何もすることはありません。
しかし、ここで申告漏れなどが発見された場合には、しっかりとした対処をしなければならないでしょう。
通常の申告漏れや、軽微な粉飾などが発覚したケースでは、「修正申告」という手続きを行い、本来支払うべき税金を納めることになります。
但し、大幅な申告漏れや、悪質な誤魔化しがあった場合には、「加算税」というペナルティーを負うこととなり、過小申告加算税、重加算税等、通常の税率以上の納税を求められることになるでしょう。
また修正申告で済む場合でも、手続きを行わず放置していると、同じく加算税の支払を命じられることになります。
なお、調査官の指摘に納得が行かない場合には、再調査の依頼や不服の申し立てが出来る制度になっていますが、相手はプロの税務職員ですから、これを覆すのは容易なことではありません。
強制調査の場合
一方、強制調査の場合では、その後の流れが全く異なるものとなってきます。
もちろん調査で問題点が見付からなければ、何もすることはありませんが、任意調査とは異なり入念が下調べが行われた上での査察ですから、問題点が発覚しないケースは稀です。
そして問題が明らかになれば、次は検察による取り調べを受けることになります。
つまりこれ以降は、脱税などの罪により被疑者として扱われることになり、検察官により起訴されることとなれば、被告人として裁判にかけられることになるのです。
なお、脱税の罪で起訴となった場合の有罪率はほぼ100%とされていますから、「裁判に勝利できるかも」なんて考えは持たない方が良いでしょう。
また受ける刑罰については、10年以下の懲役や罰金ということになりますが、余程悪質な場合や脱税額が法外なケースを除けば、刑務所に入れられることは少ないはずです。
但し、罰金のみで済んだ場合でも、とんでもない金額の加算税が上乗せされることは珍しくありませんから、それなりの覚悟はしておくべきでしょう。
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税務調査まとめ
さてここまで、税務調査に関する法律知識をご紹介して参りました。
こうした調査の話を聞くと、何だか暗い気持ちになってしまうかもしれませんが、本来納税は国民の義務なのですから、間違いがあればしっかりと襟を糾していく姿勢が大切なのではないでしょうか。
残念なことに我が国では、「どうやって税金を安くしようか・・・」なんて話題ばかりが取り沙汰されますが、
海外では「自分が納税者であることに誇りを持っている」という方も多数おられるようですから、こうした姿勢は是非見習って行きたいものです。
ではこれにて、「税務調査の法律問答をお届け!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
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