クーリングオフとは

 

日々の生活を送る中で、時折耳にするのが「クーリングオフ」というワードです。

お買い物をした際や、保険に加入した時などには、かなりの確率でこの言葉を聞く(目にする)はずですし、テレビの情報番組などでも「こんな場合はクーリングオフの制度を利用しましょう」なんてアナウンスが流されています。

もちろん、大半の方々は「クリーングオフとは何かを買った際に、一定期間解約できる制度である」という知識を既にお持ちのことと思いますが、『どんな種類の取引に適応され、如何なる手続きを踏めば良いのか?』という点に関しては、今一つ理解していないというのが実情なのではないでしょうか。

そこで本日は「クーリングオフとは?消費者を守る法制度を解説!」と題して、この消費者を保護する法制度について詳しく解説を加えて行きたいと思います。

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クーリングオフって何?

ではまず最初に、「そもそもクーリングオフって何だろう」という点から解説を始めさせて頂きたいと思います。

歴史上、人類が最も繁栄を謳歌している現代社会は、商取引においても絶頂期を迎えていると言えるでしょう。

ATMに行けば、何時でも現金を手にすることが出来ますし、30分の簡単な審査でお金を借りることも出来ます。

また、クレジットカードに電子マネー、仮想通貨なんても代物まで登場していますから、何時でも手軽に買い物が出来る「買い物天国」とも言える状況となっているのです。

しかしながら、あまりに買い物のハードルが下がると、本来は不要な品を買ってしまうケースも増えて来ますし、後から返品や返金を巡ってトラブルに発展する事例が増えて来るのも必定でしょう。

そこで導入されたのが「クーリングオフ」という制度であり、読んで字と通り、「頭を冷やして、もう一度自分のお買い物を考え直す機会を与えるシステム」となっているのです。

そしてこの制度を利用すれば、買いもの(契約)の後、8日間以内であれば、買い手は一方的な意思表示によって、契約を白紙に戻すことが可能となります。

因みにこのクーリングオフという制度を定めているのは、特定商取引法という法律となりますが、法文自体には「クーリングオフ」というワードは一切登場しませんので、その点にはご注意下さい。

 

クーリングオフの概要

では以下にて、更に詳しくクーリングオフ制度の概要をまとめてみましょう。

 

クーリングオフ制度が利用が可能な者

制度利用が可能となるのは、事業者と売買契約を締結した買い手側(サービスを受ける側)に立つ個人となります。

よって、個人間売買などではクーリングオフは原則利用出来ませんし、会社などの法人で買い物をした場合も適応対象外となるでしょう。

 

クーリングオフが行える期間

クーリングオフが行えるのは、商品が届いた日若しくは、契約書(法定書面)が届いた日から、8日間以内となります。

なお、「商品が届いた日」と「契約書が届いた日」については、より遅い日の方からカウントダウンが始まるルールです。

因みに、売り手の企業が「クーリングオフが可能である」旨を買い手に伝えていない場合には、例え商品が届いてもカウントダウンは開始されず、「クーリングオフが行えることを告げる通知」が届いてからカウントがスタートします。

※「クーリングオフが出来ない」と嘘を付かれた場合や、「クーリングオフだと、コノヤロー」なんて脅されたケースも、同様の扱いとなります。

 

クーリングオフが行える取引

クーリングオフが利用可能な取引は特定商取引法に定められた

  • 訪問販売
  • 電話勧誘
  • 連鎖販売
  • 特定継続的役務提供
  • 業務提供誘引販売取引

などとなります。

少々難しい用語が並んでしまいましたので、次項にてその詳細をご説明致しますが、原則「自分から店舗などに赴いて行った売買は対象外」と考えて下さい。

なお、特定商取引法以外でも各業界法などでクーリングオフに似た制度を定めているケースもありますので、こちらも次項「クーリングオフが可能な取引について」でご説明致します。

 

クーリングオフの効力

そしてクーリングオフが実行された場合には、締結された契約自体が無効と判断されます。

よって、消耗品や金融商品でない限りは、買い手が返品を返品し、支払ったお金が返って来るのです。

因みにリフォーム会社の営業マンが自宅に来て、工事の契約が完了し、施行が始まってからクーリングオフが実行された場合には、施工会社は工事費用の返金と共に、建物の原状回復も行わなければならないルールとなっています。

 

クーリングオフ禁止の特約は?

悪徳業者の中には、クーリングオフの対象取引であるにも係らず、契約書に「クーリングオフ禁止」という特約を加えて来るケースが多いようです。

もちろん、こうした特約は無効となる上、「実はクーリングオフが可能です」という書面を提示するまでは、8日間のカウントダウンも始まりませんから、むしろ売り手の業者側に不利な特約となるでしょう。

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クーリングオフが可能な取引について

では、実際にどんな契約や取引にてクーリングオフが可能であるかを詳しくみて参りましょう。

 

特定商取引法上のクーリングオフ対象取引

特定商取引法では、以下の取引についてクーリングオフが可能であると規定しています。

 

訪問販売

自宅にセールスマンが訪ねて来て、商品を買わされた場合や、屋根のリフォームなどを勧められたケースがこれに当たります。

但し、価格が3,000円未満の商品や、消耗品(化粧品など)である上、契約書にクーリングオフが出来ない旨の特約がある商品については、クーリングオフが不能となりますので注意が必要です。

また最近流行っている「押し買い(自宅を訪ねて宝石の買取等を行う商売)」についても、クーリングオフの対象となります。

なお、押し買いについても対象外の品が設定されており、本やマンガ、家具や自動車等については、クーリングオフを行使しての取戻しは出来ません。

 

電話等での勧誘

こちらもお馴染みのパターンとなりますが、電話やメールにて商品の購入を勧めて来る取引は、クリーングオフの対象です。

なお、訪問販売のケースと同様、3,000円未満の商品や、消耗品(クーリングオフ禁止の表示があるもの)については適応対象外となります。

 

連鎖販売

いわゆる「ネズミ講」のことを指します。

「商品を買い取り、転売すればキックバックが貰える」といった商法は、クーリングオフの対象となるのです。

 

特定継続的役務提供

非常に難解な用語ですが、要は通信教育など一定の期間を区切ってサービスを提供する商法を指す言葉となります。

なお通信教育以外にも、通学タイプの英会話教室、予備校、家庭教師、結婚相談サービスなどもこれに含まれることとなりますが、原則契約期間が2か月超のサービスが対象となります。(エステのみは1ヶ月超で対象)

 

業務提供誘引販売取引

こちらも難解な名称となりますが、簡単に言えば「高収入のバイトがあるけど、仕事に就くためには有料ソフトの購入が必要だよ」なんてパターンの副業商法のことを指します。

こうした商法には詐欺まがいのものが少なくありませんが、消費者はクーリングオフによる保護を受けることが可能です。

 

特定商取引法以外の類似制度

では続きまして、特定商取引法にこそ規定が無いものの、各業界の法令にて独自にクーリングオフ制度を設けている取引について解説して行きましょう。

 

不動産売買

『宅地建物取引業法37条の2』では、不動産の売買についてクーリングオフの制度を定めています。

但し、どんな取引でも対象となる訳ではなく、不動産業者が売主である物件を一般のユーザーが購入し、その契約が不動産業者の事務所以外の場所で行われたケースに限られます。

よって賃貸借契約や、不動産屋さんの事務所で行われた契約は対象外となるのです。(クーリングオフが可能なのは、契約後8日間)

 

クレジットカードを使用した買い物

こちらは『割賦販売法35条の3の10、35条の3の11』に定められたルールとなりますが、カードを使用して、分割払いの契約を結んだ取引はクーリングオフの対象です。(割賦販売法に関する詳細は過去記事「クレジットカードの法律知識をお届け!」をご参照下さい)

また、全ての買い物がクーリングオフの対象という訳ではなく、訪問販売や電話勧誘販売など、特定商取引法にて定められた取引のみの扱いとなります。(クーリングオフが可能期間は8日間)

 

保険商品

生命保険や損害保険の内で、契約期間が1年以上の契約についてはクーリングオフが可能となります。(『保険業法309条』による)

但し、保険会社の店舗で行われたものや、ネット上で契約したものは対象外となりますから、保険の外交員と自宅や喫茶店で行った契約が対象です。(クーリングオフが可能期間は、契約後8日間)

 

投資関連の取引

一言で投資と言っても様々な種類がありますが、クーリングオフの対象となるのは「預託等取引契約」と「投資顧問契約」の二種となります。

預託等取引契約は「オーナー商法」などが代表例であり、相手の企業を通して金などを購入し、相場の上昇に際して配当を受け取れるといった商品がこれに当たるでしょう。(クーリングオフ可能期間は14日間・『金融商品取引法37条の6』)

これに対して「投資顧問契約」は、報酬の対価として株取引などに関するアドバイスを提供したり、資金を預かってのファンド運営など主な事例となります。(クーリングオフが可能な期間は10日間・特定商品預託法8条)

 

プロバイダー契約

電話などで頻りに勧誘が行われているプロバイダー契約についても、『電気通信事業法26条の3』によるクーリングオフが可能です。

こちらは平成28年からクーリングオフ制度が開始されたばかりであり、ご存じない方も多いかもしれませんが、是非覚えておいて下さい。(クーリングオフ可能期間は契約書到着より8日間)

 

ゴルフ会員権に関する契約

こちらも時折、電話などでの勧誘があるかと思いますが、契約書が届いてから8日間はクーリングオフが可能です。(『ゴルフ場等に係る会員契約の適正化に関する法律12条』による)

 

実際のクーリングオフ手続き

では実際に、話を進めてしまった契約に対して、クーリングオフを行いたい場合は、どんな手続きを執れば良いのでしょうか。

実はクーリングオフの手続きは非常簡単であり、内容証明郵便などで契約の相手方に「契約を解除したい」と申し出るのみです。

なお、書面には

  • 商品名・数量
  • 契約日時と契約金額
  • 契約の相手の名称(販売会社)
  • 法的根拠(「特定商取引法による解除」など、該当法令名を記載する)
  • 自分の住所・氏名と捺印

以上の内容を記載すれば充分でしょう。

因みにクレジット分割払いの契約を解除する場合には、カード会社と販売会社の両方に書面を送るのが親切ですが、最悪はカード会社のみへの通知でも問題はありません。

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クーリングオフまとめ

さてここまで、クーリングオフ制度について解説を行って参りました。

買い物をした後に、「失敗した・・・」なんて後悔をすることも多いでしょうから、こうした場合には積極的にクーリングオフ制度を利用して行きたいところです。

因みに通信販売については、今現在クーリングオフを定めた法令は存在していませんので、注意が必要でしょう。

但し、販売会社が独自で返品期間を定めているケースも少なくありませんから、購入時にはこうした購入条件をじっくり把握してから、ボタンをクリックするように心掛けたいところです。

ではこれにて、「クーリングオフとは?消費者を守る法制度を解説!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

藤田裕監修(2010)『図解とQ&Aでスッキリ!クレジット・サラ金の法律と実践的解決法』三修社 238pp ISBN978-4-384-04360-0

出典 wikipedia 国民生活センターHP

 

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