金融犯罪

 

私たちの生活の中で、今や欠かせない存在となっているのが銀行です。

毎月の給料の支払いも「振込」で行われるのが当たり前ですし、カードの支払いや公共料金の納付も「口座引き落とし」で行っておられる方が殆どでしょう。

また、現金が必要になればコンビニなどにも「ATM」が設置されていますし、より利便性を追求して「ネットバンキング」を利用されている方も多いはずです。

しかしながら便利な世の中になればなる程に、その隙間を狙った犯罪も増えて行くもので、キャッシュカードをスキミングされて、不正に預金と引き出されたりといった被害も増えている模様。

そこで本日は「金融犯罪に関する法律知識をお届け!」と題して、銀行取引のシステムを悪用して行われる犯罪の詳細や、被害者救済に関する法律等についてお話してみたいと思います。

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キャッシュカードを悪用された場合

一般の方が巻き込まれる可能性が最も高いのが、キャッシュカードに絡む金融犯罪となります。

落し物の財布からカードを拝借し、預金を引き出すという古風な手口に始まり、居酒屋で財布を机の上に置いたまま席を立った隙に、カード情報をスキミングするという方法まで、その犯罪バリエーションは非常に多岐に渡っていますから、今やカードの保管には細心の注意を払う必要があると言えるでしょう。

なお万が一、犯罪被害にあってしまった場合には、「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律(通称・預金者保護法)」という非常に長い名称の法律が被害者の保護を行ってくれます。

実はこの預金者保護法が施行されたのは平成18年のことであり、それまで金融犯罪の被害者保護は民法によって行われるのみとなっていました。

しかし民法による救済を受けるためには、「被害にあった人間が、銀行の手続きに不備があり、犯人への支払が無効であることを証明する必要」があり、事実上は立証が不可能という『意味をなさない制度』だったのです。

そこで新たに誕生したのが預金者保護法であり、この法律では民法とは反対に「銀行が被害者に落ち度(過失)があったことを立証しない限り、損害を補償しなければならない」としました。

また、被害者の「過失の有無」「過失の度合い」によって銀行の補償額が変わって来る仕組みとなっており、

  • 過失なし・・・被害額の全額
  • 過失  ・・・被害額の3/4を補償
  • 重過失 ・・・補償なし

というルールになっています。

因みに「過失」とされるのは、誕生日などの判りやすい暗証番号を設定していたり、カードの側に暗証番号を書いたメモを置いておいた場合などがこれに当たり、「重過失」とされるのは他人へカードを貸し出した場合や、相手に暗証番号を伝えていたケースとなるでしょう。

よって現在では、被害者に余程の落ち度が無い限りは、銀行が損害額を補償してくれることになっているのです。

※但し、保護の対象は個人のみであり、法人の場合には預金者保護法の適応はありません。

 

通帳と印鑑を悪用された場合

前項の解説にて、キャッシュカードを悪用された場合については、預金者保護法によって被害者が守られることはご理解頂けたことと思いますが、これが通帳や印鑑を利用して窓口から引き出されたものであった場合はどうなるのでしょう。

普通に考えれば、通帳の場合もカードと同様の扱いとなるように思えますが、実は通帳の場合には預金者保護法の適応範囲外となってしまうのです。

よって、通帳を悪用された金融犯罪では民法上の規定により、被害者が銀行の落ち度を証明しなければならず、実質は補償が受けられないということになります。

なお金融機関としても、通帳に印影を記載しない通帳の仕様に切り替えたり、届け出印と通帳を同じ場所に保管しないように呼びかけたりといった努力は行っているようですが、通帳と印鑑の保管には細心の注意を払う必要があるでしょう。

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ネットバンキングで不正な操作をされた場合

続いてネットバンキングの場合となりますが、結論から申し上げれば、こちらも預金者保護法の適応を受けることは出来ません。

しかしながら、近年ではフィッシングサイトやコンピューターウィルスなど、新たな脅威が次々と登場していますから、金融機関も「補償はしない!」とユーザーを切り捨てる訳にはいかず、各銀行が独自に被害の補償に当たっています。

但し原則、法律で補償が義務付けられている訳ではありませんので、補償内容については銀行ごとにバラ付があるのですが、基本的には預金者保護法の規定を準用して、「過失」については被害額の3/4」、「重過失には補償なし」というシステムを採用している金融機関が多い様です。

 

振込先を間違え、返金してもらえない

また、銀行振り込みを頻繁に行っている方が「やってしまいがち」なのが、『振込先を間違えてしまうというミス』です。

もちろん対応が早ければ、誤った口座に入金される前に取消しが行えることもありますが、相手の口座に着金してしまうと少々厄介な事態となるでしょう。

通常であれば、振込人が手続きを行った銀行を介して、相手の口座が存在する銀行に連絡が行き、口座の名義人に返金の依頼を行うことになりますが、ここで名義人が返金に応じてくれないケースもあるのです。

こうした場合、銀行はそれ以上の督促手続きをしてくれることはありませんから、「振込人が誤って入金をした口座名義人に直接請求を行う」ことになりますが、それでも返してくれない場合は民事訴訟を起こす他はありません。

但し、振込人の再三の請求にも係らず返金を行わない場合には、詐欺罪などの刑事責任を問われる可能性もありますから、受け取った側にも真摯な対応が要求されるでしょう。

 

振り込め詐欺について

近年、社会問題となりつつあるのが、振り込め詐欺と呼ばれるタイプの金融犯罪です。

その手口については、報道番組などで既に数多く取り上げられていますし、被害に遭わないまでも、実際に怪しげな電話が掛かって来たという方も多いでしょうから、ここでは割愛させて頂きますが、その騙しのテクニックは時を追うごとに巧妙化している模様。

そしてここで気になるのが、「振り込め詐欺の被害者に対しては、一体どのような保護がなされているのか?」という点でしょう。

実は増え続ける振り込め詐欺の被害者を救済するべく、政府は「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(通称・振り込め詐欺被害者救済法 )」という法律を施行させています。

こちらの法律では、振り込め詐欺の振込先として利用されている口座を凍結し、口座の中に残された残金を被害者に分配する旨を規定しているのです。

因みに、実際に被害に遭った場合には、まず預金保険機構のホームページで自分が振り込んだ口座が凍結対象となっていないかの確認を行い、該当する口座があった場合には被害の申告を行って、返金を待つ仕組みとなっています。

但し、一つの凍結口座に対して複数の被害者が存在し、残高が充分に残されていない場合には、人数割りで残金を分配することとなりますから、必ずしも被害額の全額を取り戻せる制度ではありません。

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金融犯罪まとめ

さてここまで、様々な金融犯罪のパターンや、その対処法などについて解説を行って参りました。

カードにネットバンキングと、金融機関が新たなサービスを始めると、必ずと言って良い程に「新手の金融犯罪」が登場して来ますから、これは実に困った事態です。

国としても、こうした犯罪の被害者を救済するべく様々な法改正を行ってはいるのですが、その全てに保護を行き届かせることは不可能ですから、私たちユーザーも騙されることのないよう常に注意を払い続ける必要があるでしょう。

「便利なサービスが開始されれば、必ずこれを利用する犯罪者が現れる」ことを意識しながら、日々の生活を送っていくことが被害に遭わないコツなのかもしれません。

ではこれにて、「金融犯罪に関する法律知識をお届け!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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