交通事故などに巻き込まれた後、多くの方が通過しなければならないのが「示談」というイベントです。
交通事故の加害者は、免許の減点(行政処分)や業務上過失傷害罪(人身事故となった場合の刑事責任)などを負わされることとなりますが、これに加え被害者に対する賠償(民事上の責任)も降り懸かって来ることになります。
行政処分や刑事責任については、被害者の意思の及ばない所でその追及が行われて行きますが、民事上の責任についてはあくまで当事者同士で結論を出して行くしかありません。
そして出た結論を合意の約束とするのが「示談」であり、過去記事「交通事故と示談の法律知識をご紹介!」では示談を行う際の注意点などを解説致しました。
但し、約束した以上はその内容を何らかの「形」で残しておく必要があり、そこで作成されるのが「示談書」となる訳ですが、その作成には細心の注意が必要であるとされています。
そこで本日は「交通事故の示談書の書き方を解説致します!」と題して、その書き方や記載する内容の注意点などを解説してみましょう。
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示談書作成の注意点
「事故を起こした加害者と示談をする」と聞くと、『非常に怖い』というイメージを持たれる方も多いことと思います。
しかしながら示談は法律上の「和解契約」を意味しますから、示談以外の方法で民事上の責任に決着を付けるには「裁判を起こす」他はなく、例えお互いの保険会社が話し合ったとしても最後には「示談」で話しを付けることになるのです。
また示談が怖いという背景には、「相手の都合の良い内容にされてしまうのでは?」という心配や、「一度示談にしたら、後からどんな障害が出ても責任を追及出来ないのでは?」という心配があるからなのでしょうが、余りに常識外れな示談内容は裁判を起こせば無効と出来る上、例え示談で決着が付いていても、重大な障害が後から出たことが立証出来れば、追加の請求も可能、そして示談締結の期限(損害賠償の時効)は事故発生から3年以内となっていますから、じっくり体調を見て示談に踏み切れば、それ程のリスクは無いはず。
ただ、後々裁判などに巻き込まれるのは面倒ですから、書類だけはしっかりと作っておきたいところですよね。
まず示談書について申し上げたいのは、「法的に示談書の内容はこうするべき」というルールは存在していないという点です。
よって、名刺の裏に手書きしたものでも、場合によっては口約束であっても示談は成立してしまうことになります。
もちろん、一度の支払いで示談金の全てを受け取れるのであれば、どんな形式で示談を成立させても構わないのでしょうが、これが分割払いとなるとお話は別。
支払いの途中で相手に逃げられてしまったりすれば、大きな痛手を被ることになりますから、収入証明などを提出してもらい、相手の資力を確かめた上、示談に対しての保証人を付けるなどの処置が必要になって来ます。
また示談の内容についても、冒頭で申し上げた通り常識を逸した内容は無効となりますので注意が必要です。
例えば「今後、通勤の送り迎えを加害者が行うこと」などと言った内容は望ましくありません。
また示談金として支払われる金額については、治療費や休業損害、慰謝料など様々な費用が合算されるので、これまた上限がある訳ではありませんが、交通事故の損害賠償には算定基準が存在していますので、それらを参考にした上で算出するのが理想的です。
なお、こうした注意点を踏まえた上でも示談書の内容に不安がある場合には、無料の行政などが行う法律相談で弁護士に示談書の内容を確認してもらったり、示談書を公正証書で作成するという方法がおすすめでしょう。
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示談書の書き方
では、ここまでお話した示談の注意点を元に具体的な書き方についてご説明して行きましょう。
冒頭部分
書面のタイトルは「示談書」と記するのが通常で、その下に事故の当事者の名前や住所、事故における立場などを書いて行きましょう。
例えば加害者なら、「甲・氏名 山田山夫 住所●●県●●町●●(加害者)」、被害者なら「乙・氏名 鈴木鈴夫 住所▲▲県▲▲町▲▲(被害者)」といった具合です。
また、示談金が分割払いとなる場合には、ここに連帯保証人の表示も書くのを忘れないようにしましょう。
そしてその後に、「上記加害者・甲と被害者・乙及び連帯保証人・丙との間において、末尾記載の事故について、下記の通り示談を行うものとする」と記して行きます。
示談内容
冒頭部分を書き終えたら、その下に「記」と書き記し、具体的な示談の取り決めごとを書いて行きましょう。
書いておくべき内容は以下が一般的です。
- 甲(加害者)は乙(被害者)に対して、本状末尾記載の事故に対する損害賠償金として金●●万円を支払うものとします。
- 甲は表記の損害賠償金を●●回に分割して毎月支払うものとし、翌月分を当月末日までに乙指定の口座(口座番号・口座名義)に振り込むものとします。
- 甲が一回なりとも支払いを怠った時には、乙は一切の催告・通知を行うことなく、損害賠償金の残額を甲に請求出来るものとします。
- また甲が損害賠償金の支払を遅滞した場合には、乙は年10%の遅滞損害金を請求することが出来るものとします。
- 丙(連帯保証人)は乙が負担すべき一切の債務を、連帯して保証するものとします。
- 表記損害賠償金の支払後は、甲・乙・丙間に末尾記載の交通事故に対して一切の債権・債務が無いことを確認致しました。
個々のケースにより、書き加えるべき事項、抹消すべき事項はあるでしょうが、これらが一般的な内容となるでしょう。
事故内容
示談内容を書き終えたら、末尾部分に事故の概要を記して行きます。
書くべき内容は
- 事故の発生日時
- 事故が起こった場所
- 事故に際して使用していた車両のナンバー
- 事故の具体的な内容
- 事故証明の紹介番号
などとなり、事故の概要が一目で判るようにしておきたいところです。
署名・捺印
そして最後に、「本状における示談成立を証するため、本書を3通作成し、署名捺印の上、各1通を甲・乙・丙が保有するものとします。」と記し、3名で日付・住所・氏名、そして捺印を行います。
なお、捺印に際しては実印を使用し、発行後3ヶ月以内の印鑑証明書を全員分添付するようにしましょう。
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示談書の作り方まとめ
さてここまでが、自力で示談書を作成する際のノウハウとなります。
なお、こちらで解説した内容は必要最低限のものとなりますから、時間的な余裕がある際には、必ず専門家のアドバイスを受けた上で、示談書の取り交わしを行いたいところです。
ただ、こうして示談書の文言を見ていくと、その内容は決して素人では歯が立たない内容でもないこともご理解頂けたはず。
示談自体を恐れるのではなく、「如何に自分が不利にならない示談を取り交わすには、何をすれば良いのか」という点に注意を払えば、無駄に示談を恐れる必要は無いことをご理解頂ければ幸いです。
ではこれにて、「交通事故の示談書の書き方を解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
参考文献
(有)生活と法律研究所編(2015)『交通事故の法律知識』自由国民社 368pp ISBN978-4-426-11950-8
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