交通事故の損害賠償

 

誰も望んでいないのに、突然降りかかって来る災厄と言えば交通事故ですよね。

もちろん、普段から事故に巻き込まれないように注意することが何よりも大切ですが、信号を無視して突然飛び出して来る自動車などを避けられるはずもありません。

そして被害者という立場で、事故の当事者となってしまった際に気になるのが、「一体どれだけの賠償金を加害者から取ることが出来るのだろう?」という点かと思います。

そこで本日は、「交通事故の損害賠償について解説致します!」と題して、交通事故と損害賠償の関係や、どんな費用が賠償金として認めらるのかといった疑問にお答えして行くことにしましょう。

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事故の損害賠償には3つの分類がある

交通事故の被害者となった際に相手方に払ってもらえる賠償金と言えば、「慰謝料」という言葉が真っ先に頭に浮かぶことと思います。

そして実際に事故に遭われた方からお話を聞いても、「慰謝料として●●万円もらった」なんてお話を耳にすると思いますが、実は相手方から受け取る賠償金には大きく分けて3つの分類があります。

まずはその3種類について解説して行きましょう。

 

積極損害

損害なのに「積極」というのは妙な気もしますが、こちらは事故に際して実際に被害者が出費した費用を指す言葉となります。

具体的な例を挙げるとすれば、治療費や入院費などがこれにあたりますし、被害者が死亡した場合には葬儀代などもここに含まれることになるのです。

では積極損害に分類される費用の一覧を挙げてみましょう。

  • 治療費・入院費
  • 入院中の付添費(1日当たり6000円~7000円)
  • 交通費(通院などに要した運賃)
  • 葬儀代
  • 弁護士費用

以上が主だった積極損害に関する事項となります。

 

消極損害

これまた奇妙な用語となりますが、こちらは事故により二次的に生じた損害を指します。

怪我をして仕事を休まなければならないなら「休業損害」となりますし、万一障害が残ったり、死亡した場合には「逸失利益」として、『もし怪我をしなければ、もし死亡しなければこれだけの収入を得られた』というお金に対する損害を指す言葉となります。

 

慰謝料

そして最後がお馴染みの慰謝料ということになります。

こちらは事故により受けた肉体的・精神的なダメージをお金に換算したものとなりますから、その算出は非常に難しいのですが、事故の程度などによりおよその相場が存在。

次の項では事故の種類や程度により、どんな費用が請求出来て、どれくらいの賠償が受けられるのかについてお話します。

 

事故内容ごとの損害賠償

一言で事故といっても、その内容は様々なものがあります。

軽い鞭打ち程度で済むこともあれば、長年後遺症に苦しむ場合もありますし、最悪亡くなることだって考えられますよね。

もちろん、事故の内容次第で受け取れる賠償金は変わって来ますが、基本的には先程お話した積極損害・消極損害・慰謝料の三本立てとなることは変わりません。

では、その3種類の中で具体的にどんな費用をどれだけ請求できるのかを見て参りましょう。

 

傷害事故の場合

どんな事故でも怪我はするでしょうが、法律上の分類では死亡していない、且つ後遺症が残らない事故をまとめて傷害事故と呼んでいます。

傷害事故で受け取れる損害賠償は下記も内容が主なものとなります。

 

傷害事故の積極損害

治療費・入院費・交通費などがメインとなり、積極傷害に分類される中では葬儀代以外の全てが該当する可能性があります。

治療費・入院費などについては、実際に病院から請求された金額となりますから相場は特にありません。

交通費も実際に掛かった金額となりますが、必要が無いのにタクシーに乗ったなどの費用は認められないこともあります。

また、冒頭でも申し上げましたが入院に付き添いなどが必要だった場合には1日当たり6000円~7000円の請求が可能ですし、入院雑費として1日当たり1000円~2000円の請求が認められることもあるでしょう。

 

傷害事故の消極損害

死亡事故ではありませんので、休業損害が対象となります。

休業損害の算出は実際に得ていた収入を基準に、何日仕事を休んだかによって計算されることになるでしょう。

なお、被害者が無職や学生である場合には休業補償を請求することは出来ませんが、専業主婦などのケースに関しては賃金センサスと呼ばれる年齢性別による賃料基準(賃金構造基本統計調査の結果をまとめたもの)に照らし合わせての請求が認められています。

 

傷害事故の慰謝料

冒頭でも申し上げた通り、慰謝料の算定は被害者の感情とも絡みあって来ますので、実に困難なものがあります。

ただ、弁護士会などではこれまでに支払われた慰謝料の実績などから一定の基準を設けており、これによれば入院1ヶ月、通院1ヶ月それぞれのケースで

  • 1ヶ月の通院で約18万円~約27万円
  • 1ヶ月の入院で約35万円~約55万円

という相場になっています。

なお、1ヶ月の入院後に1ヶ月の通院(計2ヶ月の入・通院)となれば約50万円~約80万円程度との基準が示されています。

この様に、何か月入院し、何か月通院したなどの状況により、細かな算出基準がありますので、実際に被害に遭われた場合には是非参考にして頂ければ幸いです。

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後遺障害事故の場合

続いてご紹介するのが、事故により体に障害が残ってしまった際の賠償についてです。

 

後遺障害事故の積極損害

積極傷害については、基本的に傷害事故の場合と同様で、実際に要した治療費や病院に通う交通費などが認められます。

また、脚が不自由になってしまった場合などは、自宅をバリアフリーに改造するための費用や、車椅子代なども積極傷害に含まれることになるでしょう。

 

後遺障害事故の消極損害

消極損害については、やはり事故前に得ていた収入が算定の基準となりますが、傷害事故と大きく異なる点は、後遺症が残ったことにより、「働けなくはないものの収入が減少する可能性がある」という部分です。

どの程度の障害でどれだけ収入が減少するかについては、非常に計算が難しいところですが、このケースについても一定の基準が設けられています。

後遺障害が発生した場合、その障害のレベルを14の等級で判定することとなっており、1級~3級は「仕事に関する能力の減少(喪失率)」を100%と定めており、4級で92%、5級で79%といった具合に、級が下がると共に喪失率も低下して行く仕組みです。

よって、月給30万円の者が1級・喪失率100%なら1ヶ月あたりの消極損害は30万円、5級・喪失率79%なら23.7万円という計算になります。

なお働ける年齢については原則上限を67歳と定めていますから、30歳に後遺傷害事故に遭えば、残り37年間分の給与に喪失率を加味したものが賠償金の算定額となるのです。

但し、本来であれば長年に渡り給付されるべき給料を一度にもらう訳ですから、そこには「一定の利息が発生する」と考えるのが裁判所の判断であり、正確にはこの利息を控除するための計算式に当てはめたものが、実際の賠償額となります。(ライプニッツ方式年間5%が主流)

因みに傷害事故の場合では、無職や学生への休業損害は認められませんでしたが、後遺障害事故の際には、将来就職出来た可能性も加味され、賃金センサスを元にした消極損害への賠償を受けることが出来るのです。

 

後遺障害事故の慰謝料

後遺障害事故の慰謝料については、消極損害と同様に障害の大きさを表す等級(全14等級)に合わせた基準が示されています。

その基準例を挙げてみれば1級で3000万円、7級で1000万円、14級で120万円程度といった具合です。

 

死亡事故の場合

そして最後に解説するのが死亡事故による損害賠償についてとなります。

 

死亡事故の積極損害

被害者が亡くなるまでに要した治療費、入院費はもちろん、亡くなった後の葬儀費用なども積極傷害に含まれることになります。

 

死亡事故の消極損害

被害者の方が亡くなった以上、当然その後の収入を見込むことは出来ませんので、もし生きていたなら得らえたはずの収入が賠償金額となります。

但し、もし本人が生きていればそれなりの生活費(食費・服代・家賃・趣味などに掛かる費用等)が掛かるはずですから、得られたはずの収入から30%~40%の生活費を差し引くのが通常です。

よって月収30万円の方が亡くなり、生活費を30%と見るなら、賠償額は1ヶ月当たり21万円と計算し、労働可能年数は67歳までとすることになります。(死亡事故の場合も利息の控除が行われます)

なお後遺障害事故の場合と同様、死亡事故に際しても、幼児や無職の被害者の逸失利益の請求は認められています。

 

死亡事故の慰謝料

死亡事故の場合にも、慰謝料に一定の基準が設けられています。

家計を支える一家の大黒柱が亡くなれば約3000万円、共働きの奥さんなどの場合で約2500万円、それ以外で約2200万円程度というのがその基準です。

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事故の損害賠償まとめ

さてここまで、交通事故で請求することの出来る賠償金の種類と、事故の種類による賠償金の計算方法を解説して参りました。

基本的に全ての事故において、「積極損害+消極損害+慰謝料=全賠償金額」という式で賠償額を計算することが出来ますが、忘れてはならないのが「過失相殺」というものです。

事故などを起こした際、「10:0」、「6:4」などの過失の割合が示されますが、この割合に応じて賠償金額が減免されるルールとなっています。

つまり「積極損害+消極損害+慰謝料=全賠償金額」の式で1億円という賠償金額が弾き出されても、過失の割合が「加害者6:被害者4」であれば、1億×40%=6000万円という計算になり、被害者が請求出来るのは6000万円が上限となってしまう点にもご注意頂ければと思います。(詳細は「交通事故の過失割合の決め方について解説!」の記事をご参照ください)

ではこれにて、「交通事故の損害賠償について解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

(有)生活と法律研究所編(2015)『交通事故の法律知識』自由国民社 368pp ISBN978-4-426-11950-8

 

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