毎日何気なく暮らしていると、人は日々の暮らしに幸せを感じ辛くなる生き物です。
しかしながら災害やトラブルに直面すると、「今まで何て恵まれた環境で暮らしていたのだろう・・・」なんてことをしみじみと感じますよね。
そんな日々の生活をぶち壊す事態の一つに、「近隣での大型マンションなどの建設」というトラブルがあります。
これまで日当たりが良く、静かだった街にダンプカーが行きかい、毎日の様に続く騒音、そしてマンションが落とす陰で自宅は真っ暗なんてことになれば、そのストレスは大変なものとなるはずです。
実際、街を歩いていると「マンション建設反対」などのノボリを掲げた家を見掛けますし、ドラマなどでも反対運動に参加する人々を目に致しますよね。
しかし、自分がいざこうした「反対運動に参加する」となると、非常に面倒な気も致しますし、実際に建設差し止めや慰謝料の請求が出来るのかと不安な気持ちにもなりますよね。
そこで本日は、「建設反対に関する法律知識!」と題して、大型マンションの建設に反対する際に、一体どんな法的手段が執れるかについて解説してみたいと思います。
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平和な日常を破壊する建設工事
さて、実際にマンションの建設に対して反対運動を行おうとしても、一体何をするべきか途方に暮れてしまうのが現実かと思います。
ただ鉢巻をして叫んでいるだけでは、工事はドンドン進んで行くだけですし、下手に座り込みなどを行えば、反対に建設会社から訴訟を起こされる可能性だってあるのです。
こうした現実を考えれば、反対する側も正式な手順を踏んで、自分が相手に何を要求するべきなのかを冷静に考えていかねばなりません。
これまでの大型マンションの建設に対する訴訟の事例などを見て行くと、法的に行える請求は建設により受ける損害の賠償や、工事の差し止め、そして計画されている建物の設計変更などが主なものとなるでしょう。
損害賠償については、マンションが建つことにより被る被害をお金に換算して慰謝料として受け取ることになるでしょうし、激しい騒音や振動があるならば、こうした工事に時間制限や工法の変更を求めるのも一つの手段です。
また建物が建つことにより、自宅の日照が壊滅的な被害を受けるならマンションの高さを変えさせたり、一部を削るといった設計変更を求めるのも一つの方法でしょう。
但し、闇雲に裁判を起こしても簡単に勝訴を勝ち取れるはずがありませんから、どんな法律に基づき、どんな請求をしていくかが、こうした局面では最も重要な要素となるのです。
次の項では、過去の事例を基にしてこうした状況でどんな請求が行えるのかを具体的に見て行きましょう。
建設会社等に対して何が出来るのか?
今回の様な高層マンション建設に関して、周辺住民側に争う余地があると思われるのは、工事に伴う騒音や振動に臭気、そして日照や眺望などに関する住環境の問題がメインとなるでしょう。
そこで本項では、これらの問題に対して個々に解説を加えて行きたいと思います。
騒音・振動に関する問題
工事が始まれば地盤改良のための杭打ち等、大きな音の出る作業が繰り返されることになります。
こうした騒音問題については、騒音規制法への違反や民法上の不法行為責任を追及することになるでしょう。
騒音規制法によれば、各行政は地域ごとに騒音基準を定めることが出来るとしており、これに違反した場合には作業内容・時間の変更などについて勧告や命令を出すことが出来ますし、命令に違反した場合の罰則も用意されています。(5万円以下の罰金)
また、工事の騒音が周辺住人の我慢の限界を超える(受忍限度を超える)ものであるなれば、建設会社等を相手に不法行為による損害賠償を請求できる可能性も出て来ます。
但し、騒音に対する受忍限度をどこに置くかは難しい部分もあり、一般的には先にお話した騒音規制法に基づいて行政が取り決めた基準を超えるかが判断基準となるでしょう。
よって、騒音基準を超えない音について、訴訟を起こすのは困難であると言えます。
なお、振動に関しては振動規制法という法律がありますが、こちらも騒音と同じく各行政が基準を定めていますから、そのレベルを超えないものについては同様の扱いとなるはずです。
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臭気に関する問題
臭気の問題については、悪臭規制法という法律が定められています。
前項でお話した騒音や振動と同様に、各行政がこれを取り締まれることとなっていますが、臭気に関しては少々扱いが異なる点も。
まず規制の対象となるのが22種類の物質(アンモニア・トルエン等)に限られているという点です。
また22種類の中でも、「どの物質について規制対象にするか」は行政に委ねられている上、「規制区域」も指定出来るルールですから、この条件をクリアーするだけでもなかなか大変でしょう。
もし悪臭規制法による取り締まりが可能であるようならば、大気中の特定悪臭物質の濃度や臭気指数を測定して、行政からの勧告や改善命令を求めることになります。
なお、民法上の不法行為責任の追及も可能ですが、建設工事の場合は長期に渡って悪臭が発生することは稀でしょうから、こちらは少々難しいかもしれません。
住環境に関する問題
住環境の問題として争点となるのは、日照権や眺望権に係る事柄でしょう。
その他にも環境利益不当侵害防止権という権利を巡って争うことも出来るでしょうが、この権利が認められるのは高速道路の建設など、継続的な大きな住環境への侵害があった場合となりますから、マンションの建設では難しいかもしれません。
では、日照権や眺望権についてご説明して参ります。
日照権
文字通り、太陽の光を住宅などで確保するための権利となりますが、この権利を保障する法律の代表格と言えば「建築基準法」が挙げられます。
この法律では、建物を建設するものが他人の日照権を侵害しないように、高さ制限や斜線制限・日影規制など様々な建築の制限を規定しており、これに違反する建物は原則「建築確認を受けられないルール」となっているのです。
マンションの建築が開始されるということは、既に建築基準法の規制をクリアーしているということになりますから、日照権のみを主張して設計変更などを求めるのは厳しいと言わざるを得ません。
眺望権
眺望権は、現在その地域に存在する景観を守るための権利となります。
マンションが建築されることにより、「これまで見られていた風景などが楽しめなくなった」などという場合に主張する権利となりますが、簡単にこの権利を認めてしまうと、地域や街の発展が望めなくなる可能性もあるでしょう。
こうした危惧から、裁判所も眺望権を巡って判決には非常に慎重な姿勢を執っているのが現実です。
もちろん、眺望権の侵害を認めた事例はありますが、それは京都などといった観光地などがメインであり、一般的な市街地で認められるのは大変にレアケースと言えるでしょう。
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建設反対まとめ
さて、ここまで高層マンションの建設に反対する場合、どんな対抗策が講じられるかについてお話して参りました。
記事の内容をお読み頂ければご理解頂けることと思いますが、法的手段でこうした建物の建築を差し止めたり、慰謝料を請求するのは「難しい」というのが結論です。
なお、この見解が意味することは、「地域住民の権利が蔑ろにされている」というのではなく、「建築基準法を始め、我が国の法律は既に市民の住環境を守るのに充分なレベルに達しているから」というのが、その理由でしょう。
なお、マンションディベロッパーの多くは大規模な反対運動が起こった際には、ある程度の金額の慰謝料を提示して、和解に持ち込もうとするものですから、自分的に納得出来る金額が示されたなら、そこで振り上げた拳を収めるのが賢い選択だと思います。
住環境を守ることも非常に重要ですが、マンションが建つことで地域が発展し、住み良い街造りが進んでいくのも事実ですから、意固地にならず賢明なご判断をお願いしたいものです。
ではこれにて、「建設反対に関する法律知識!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
参考文献
自由国民社編(2015)『相手を訴える法律知識』自由国民社 448pp ISBN978-4-426-11951-5
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