成年後見人制度とは

 

人間誰しも、齢をとれば物忘れが激しくなり、判断能力も低下して行くものです。

そして認知症などを患えば、自分一人の力で生きて行くの困難になることでしょう。

また年齢を重ねなくても、事故で頭を強く打った場合などには、高次脳機能障害などの後遺症により、正常な判断能力を失う可能性も出て来ますよね。

実はこうした状態に陥った方のために、法律は成年後見人等の保護制度を設けているのですが、社会的にはこれらのシステムがまだまだ浸透しきれていないのが現実です。

そこで本日は「成年後見人制度とは?という疑問にお答えします!」と題して、成年後見人や補佐人、補助人などについて解説を行ってみたいと思います。

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成年後見人制度って何だろう

ではまず最初に、「成年後見制度とは一体何なんか」という点から解説を始めて行きましょう。

成年後見制度の概略をザックリ説明すれば、「何らかの事情で正常な判断能力を失った方に対して、後見人というバックアップ役を付けて上げる制度」となります。

もし認知症を患った方が、悪意のある者の言いなりになって自宅を売ってしまえば、住む処を失って路頭に迷うことになりますよね。

また、こうした状態(判断能力が欠いた状態)の方が行った自宅の売買などは、法律上無効という扱いになるのですが、認知症であることを知らずに物件を買ってしまった方も、後から無効と言われては困ってしまうものです。

そこで法律は、こうした判断能力が無い方を認定(登記)すると共に、本人に代わって法律行為を行える者(成年後見人)を擁立すること定めることにしました。

そして、この制度を導入することにより、判断能力を欠いた方の財産を保護すると共に、「そうとは知らずに取引等を行ってしまう」というトラブルも未然に防げる様にした訳です。

なお、後見人が付けられている人(被成年後見人と呼びます)だからと言って、コンビニで買い物をするなどの日常的な買い物等まで無効になる訳ではなく、その効力はあくまでも財産処分など重大な事項に限られます。

因みに成年後見人に与えられる権利は、本人に代わって契約などを行う「代理権」となりますから、例え成年後見人の同意などがあったとしても、本人が行った法律行為は無効となるのです。

この様に成年後見人には、本人に代わる絶大な権限が与えられる訳ですが、中にはその権利を濫用し、私腹を肥やす者が出て来ないとは限りませんよね。

そこで家庭裁判所は、必要に応じて成年後見人の動きをチェックする成年後見監督人を置くことや、自宅などの財産を処分する際には、裁判所の許可を必要とするといったルールを定めています。

二種類の成年後見人

ここまでのお話にて、成年後見制度の概要についてはある程度ご理解頂けたことと思いますが、実は成年後見人には大きく分けて2つのパターンが存在しています。

そしてこの種類の違いによって、実際の運用がかなり異なるものとなって来ますので、本項ではこの点を解説して行くことにしましょう。

法定成年後見人

その名の通り、法律で定められた成年後見人を指す制度です。

例えばある人が認知症になり、その家族などが後見人を付けたいと考えれば、家庭裁判所に申し出て、審判を受けることになります。

そして裁判所は本当に後見人が必要であるかの審査を行い、必要と判断すれば後見人の指名まで行うことになるのです。

もちろん申立てを行った家族が後見人の候補者として立候補することも出来ますが、当人と家族の間に確執などがある場合には、弁護士や司法書士など外部の人間を指名して来ることも有り得ます。

この様に後見人の選定を裁判所のに任せて行うパターンを法定成年後見人と呼んでいるのです。

任意成年後見人

続いてご紹介するのが、法定成年後見人とは反対に当人(被法定成年後見人)の意思で後見人を決める任意成年後見人となります。

もちろん当人が後見人の指名を行うには、しっかりと判断能力がある状態でなければなりませんので、こちらのパターンでは認知症などを発症する前に選任しておく必要があるでしょう。

なお任意成年後見人の選任は、当人と後見人となる者との間で契約(任意後見契約)を締結することで完了となりますが、契約に当たっては公正証書を用いるのがルールです。

因みに、この任意後見契約さえ済んでしまえば「手続きは完了!」とお考えの方も多いかと思いますが、実はこの契約だけでは任意後見は機能していません。

任意後見契約は本人がまだ判断能力がある状態で結ばれるものですから、本人に問題がないのに後見人が権限を持つというのは制度の主旨と矛盾しますよね。

よって任意後見契約が発動するのは、本人の判断能力に問題が生じてからとなる上、その判断を下すのも家庭裁判所でなければならないのです。(親族等が裁判所に申立てを行い、判断を仰ぐ)

その上、裁判所は任意後見人が暴走しない様に、成年後見監督人を置くのが通常ですから、必ずしも「自由を後見人に指名出来る」という制度ではありません。

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保佐人とは?

ここまで、後見人についての解説を行って参りましたが、我が国の法律は後見人以外にも、判断能力が衰えた方のために保佐人・補助人という地位を用意しています。

そこでまずは「保佐人」についてのご説明から始めさせて頂きましょう。

成年後見人が必要となるのは「判断能力が著しく欠如している場合」となりますが、保佐人が付けられるのは「判断能力が十分でない場合」となります。

よって、後見人を必要とする程には重篤でないが、判断能力に問題がある場合に付けられるのが保佐人ということになるでしょう。

また、後見人と保佐人では与えられる権限も大きく異なっており、後見人が「法律行為の代理権」を与えられるのに対して、保佐人は以下の法律行為に対する『同意権』を与えられることになります。

つまり、契約等をするのはあくまで本人であり、保佐人はその行為に同意を行う立場です。

  • お金や不動産の貸し借り
  • 他人の保証人となる行為
  • 不動産等の重要財産の売買
  • 訴訟行為(和解を含む)
  • 相続や贈与に関する事項
  • 建物の新築や大規模増改築
  • 長期の賃貸借契約を結ぶ行為

但し上記の同意権については、裁判所の判断でその一部を「代理権」に変更することも可能です。

補助人とは?

続いてご紹介するのが補助人についての解説となります。

補助人は、保佐人よりも更に判断能力が残っている方に付される者であり、表現としては「判断能力が欠ける場合」というのが妥当でしょう。

そして補助人に与えられる権限は、前項でご紹介した保佐人に与えらえる同意権の一部となります。(何に関して権利を与えるかは裁判所の判断)

なお、保佐人の場合と同様に、裁判所の裁量で同意権を代理権に変更することも可能です。

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成年後見人制度とは?まとめ

さてここまで、後見人や保佐人・補助人等についての解説を行って参りました。

高齢化が深刻な社会問題となりつつある我が国では、今後益々、こうした制度の活用が期待されることになるはずです。

但し、後見人制度も万全とは言えない部分もありますから、必要に応じて民事信託等と組み合わせて利用して行くべきでしょう。(民事信託の詳細ついては別記事「民事信託とは?相続等に役立つ新制度を解説致します!」をご参照下さい)

ではこれにて、「成年後見人制度とは?という疑問にお答えします!」の記事を閉じさせて頂きたいと思います。

 

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