親と子供の法律知識

 

この世で最も親しく、そして身近な関係であるのが「親子」ですよね。

もちろん成長し、配偶者が出来たりすれば、親と子の距離は離れて行くものですが、そこに至るまでの期間は「家族」とうい言葉だけでは表せない親密な関係にあるのが通常でしょう。

しかしながら、この親子関係を法律的に見てみると、親は子供に対して親権という義務と権利を有していますし、子供が未成年者の間は法定代理人という立場となりますから、「親子だから何でもOK」とは行かない面も多く存在しているのです。

そこで本日は「親と子供の法律知識をお届け!」と題して、親が子に、そして子が親に対して有する権利や義務について解説してみたいと思います。

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子供の財産について

一言で「親と子の法律知識」と言っても、親権者と未成年者の間には様々な権利関係が存在しているものです。

そこでまずは、親が有する「親権」の中でも大きな意味を持つ財産管理のお話から始めさせて頂きたいましょう。

 

未成年者の財産を処分する場合

法律は親権を持つ「親」に、子供(未成年者)の財産の処分や法律行為(契約等)を代わりに行う権利を与えています。(法定代理人)

そして、その代理権は父・母の両親が揃っている時には、両名が同時に持つとしているのです。

よって、子供の財産を親が処分しようという際には、父・母両名の承諾が必要となるのが原則であり、片親の承諾無しに行われた財産処分は無効となります。

但し、何も知らずに財産を買い入れた第三者の権利も守る必要がありますから、「両親の承諾が無いことを知らなかった、知り得なかった善意の第三者」に対しては、無効を主張出来ないルールとなっているのです。

また、子供が持っている資産を親が買い取ろうとする場合にも注意が必要です。

親は未成年者の法定代理人ですから、一見親さえ「良し」とすれば、子供の資産を親が買い取っても問題は無さそうに思えますが、法定代理人は「子供のためになることを最優先」する義務があります。

しかしこのケースですと、資産を安く買い取ることが「親(法定代理人)自身の利益」となってしまいますから、『果たして資産の買取が、本当に子のためになるのか?』という疑問が生じる訳です。(利益相反)

よってこうした場合には、家庭裁判所に申し出て、親以外の代理人(特別代理人)を選定してもらい、その者が「子供の資産を親に売って良いか?」の判断をすることになり、特別代理人なしでの売買は無効となります。

なお、未成年者の兄弟・姉妹間の資産売買を、親が取り仕切る場合も同様の手続きを踏む必要があるでしょう。(えこ贔屓する子供に有利な売買となる可能性があるため)

因みに、「幼い子供が、親の欲しがる様な資産を持ってことなんてあるの?」という疑問をお持ちの方もおられるかもしれませんが、祖父や祖母が遺言などで不動産を孫に渡すというパターンは意外に多いものです。

また法律は、遺言において孫に資産を渡し、その管理を親権者にさせない方式を認めていますから、親の使い込みが心配な方はこちらの制度を利用するのがお勧めでしょう。

 

未成年者の買い物

ここまで未成年者が有する財産の管理・処分についてお話して参りましたが、本項では子供の買い物について解説して行きます。

財産処分にあれだけの制限があるのですから、子供がする買い物についてもそれなりのルールがあるのは当然でしょう。

法律上、未成年者は制限行為能力者として扱われますから、原則買い物についても親である法定代理人の同意がなければ無効となってしまいます。

こんなお話をすると、「では子供が一人でコンビニで買い物をしても無効なの?」という疑問が湧いて出来ますが、親が好きに使いなさい渡した「お小遣い」に関しては有効と扱われるのです。

また、親が「本を買って来て」、「野菜を買って来て」と渡したお金で行った買い物も無効とはならない上、こうしたケースでは「親権者の一方が許可すれば良い」とされています。

しかし、これが「全く親には内緒で買い物をした」という場合については、法律が定める通り『無効』となってしまうのです。

例えば未成年者が親に内緒でテレビを購入し、それが後日親にバレた場合には、この取引は無効になりますから、売買から5年以内であればテレビを返還してお金を返して貰える上、例えテレビに傷が付いていた場合でも、販売店は文句が言えないことになっています。

ただ、これではあまりに販売店に不利な条件ですよね。

そこで法律は、未成年者が承諾を得ないで行った買い物について、その親(親権者)に1ヶ月以上の期間を設けて「契約の取り消しを行うか」の催告を行うことが出来るとしており、これに返答がない場合には「契約を取り消せない」と定めているのです。

なお、未成年が「成年である」との嘘をついた場合に関しては、「取り消しが出来ない」と判断しています。

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子供が起こした事件・事故

未成年者の財産に関する事項に次いでは、子供が起こした事件や事故などについて、親権者がどんな責任を負うのかについて考えてみましょう。

財産処分などの解説を見て行くと、親権者は未成年者の行いについて様々な責任を負いますから、事件・事故などに対しても当然責任が及ぶ様に感じますが、この点は「非常に限定的となっている」というのが正解です。

子供が起こした事件などについてポイントとなるのは、「その未成年者に責任能力があるか否か」という点であり、責任能力があるならば、それは子供自身の責任となるでしょう。

では「一体何歳から責任能力があるのか?」という点が気になるところですが、判例を見ると12歳から13歳くらいがボーダーラインとなっている模様。

但し、ケースによってはもっと幼い年齢でも責任能力を認めた例もありますし、その逆に13歳以上でも責任能力なしとしたケースもありますので、起こした事件の性質と本人の成熟度合もかなり考慮される様です。

そして「子供に責任能力あり」とされた場合には、原則、親が子供の代わりに損害賠償の義務を負わされることはありません。

しかしながら、子供が無免許でバイクの乗り回しているのを見て見ぬフリをしていたり、凶器を準備しているのを注意しなかった場合には、子供に責任能力があっても「監督不行き届き」として監督責任を追及されることがありますので注意しましょう。

また事故に関しては、親名義の自動車やバイクで子供が起こした事故、子供名義でも維持管理を親が行っていた車両での事故は、自賠法による運行供用者として親が賠償責任を負うことになります。(詳細は別記事「子供が交通事故を起こした!巻き込まれた!時の法律知識」をご参照ください)

因みにここまでお話した内容は民事上の責任についてであり、刑事事件となった場合には子供本人がその責任を負うことになるでしょう。

 

扶養や勉強について

我が国の法律は、家族がお互いに助け合う「扶養の義務」を課しています。

もちろん子供が成長して社会人となり、親が歳をとれば、子供も親に扶養義務が生じることになりますが、子供が幼い内は親が子供の面倒を見るのが当然です。

よって、親は良いものを食べているのに、子供に貧しい食事を与えている場合などは、この扶養の義務違反となり、虐待などの罪に問われる可能性も出て来ます。

では、「一体どの程度の生活をさせていれば、扶養義務を果たしていることになるのか?」という点が気になって来るかと思いますが、実は民法には具体的な記述はされていないのが現実です。

ただ、これまでの判例などを見ていくと「子供にも親と同等の水準の生活をさせるべき」という見解が示されていますから、余程の格差を付けない限りは問題なしということになるでしょう。

また教育については、憲法でも国民に学ぶ権利を保障していますから、少なくとも義務教育は必ず子供に受けさせる必要があり、これに違反すると学校教育法により罰金などの刑に処せられます。(学校教育法144条)

しかしここで問題となって来るのが、「高校や大学といった高等教育を子供に受けさせる義務が親にあるか?」という点です。

この点に関しては、やはり民法にも規定はありませんが、仮に親子間で調停や審判を受けるとなった場合には、「親が有する資力(経済状態)」と「子供の学力」が争点になるでしょう。

お金が有り余っているのに大学に進学させないというのは問題ですが、生活に余裕が無いのに、勉強する気がない子供が「大学に行かせろ」というのを認める訳には行きませんから、裁判所の判断はこうした事情を考慮して下されるはずです。

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親と子供の法律知識まとめ

さてここまで、親と子供の間での法律知識をまとめて参りました。

親は生まれた時から、子供の面倒を見続けていますし、子供も物心付いた時から当たり前に親と暮らしていますから、両者の関係はついつい「なあなあ」になってしまいがちですが、法律はこうした親子関係にもしっかりルールを定めていることをご理解頂けたことと思います。

親子間の陰惨な事件の多い時代ですから、親子の仲が良いだけでも非常にありがいたことですが、こうした法律知識を身に付けておけば、なお更円滑な親子関係を築くことが出来るのではないでしょうか。

ではこれにて、「親と子供の法律知識をお届け!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

自由国民社編(2015)『夫婦親子男女の法律知識』自由国民社 472pp ISBN978-4-426-12069-6

 

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