現在の我が国では、2分間に1組の割合で離婚が成立していると言われています。
もちろん、後で後悔するような離婚の仕方はお勧め出来ませんが、その選択によって男女が別々の道を歩み、新たな幸せを掴むことが出来るのであれば、離婚は決して嘆くべきことではないでしょう。
但し離婚するまでのプロセスについては、「結婚の何百倍も大変」なんて言葉も聞かれる通り、棘の道と言わざるを得ません。
すんなり話し合いによる離婚が成立すれば良いのですが、養育費や財産分与などで揉めてしまい、調停・裁判などのイベントを経験した方からは、「すっかり燃え尽きてしまった」なんて声も聞かれます。
しかしながら、離婚は新たな人生のスタートでもある訳ですから、離婚が成立したからといってのんびり構えている訳にも行きません。
そこで本日は「離婚後の手続きと法律問題を解説!」と題して、離婚後にするべきことと、これに伴って発生する法律問題について考えてみたいと思います。
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離婚成立後に行うこと
では早速、離婚が成立した後に行うべきことをお話して行きましょう。
協議離婚の場合については夫婦が話し合いの結果、離婚届を役所に届け出て、これが受理さることで離婚成立となります。
しかしながら、話し合いがこじれてしまい、調停や裁判となっている場合には、少々事情が変わって来るでしょう。
調停の場合ならば「離婚の合意」、裁判であれば「離婚する旨の判決」をもって、離婚は成立し、夫婦は他人に戻る訳ですが、これだけでは戸籍上の問題は解決しません。
そこで調停や裁判が終わった際には、調停調書や判決文を持って、改めて役所に離婚届を提出する必要があるのです。
離婚届の提出期限は調停や裁判が完了した日から10日以内となりますが、書式は通常の離婚届となりますし、相手の署名・捺印も不要となりますので、作業としてはそれ程難しいものではないでしょう。
離婚届の提出が完了したら、女性の場合には自分の戸籍や子供の戸籍などについて、様々な手続きを執らなければならないのですが、その詳細については事項にてご紹介することに致します。
そして戸籍上の手続きが完了すれば、これから住まう地域の役場へ行って、住民登録や印鑑登録の変更、国民保険や運転免許証の変更などを進めて行くという手順になるでしょう。
離婚後の姓と戸籍の問題
さて、前項の中で保留させて頂いていた姓や戸籍に関するご説明をさせて頂きましょう。
離婚が成立した場合、女性は元の夫の戸籍から離脱することになり、ここで二つの選択肢が生まれます。
一つは結婚前の戸籍へと戻るという選択であり、もう一つはここで新たな戸籍を作り、そこで世帯主となる道です。
なお、苗字に関してどちらの道を選択しても結婚前の姓に戻る(復氏)こととなりますが、仕事の関係などで離婚前の苗字を名乗り続けたい場合には、離婚から3ヶ月以内に役場で手続きを執ることで引き続き元夫の姓を名乗ることが可能となります。
また、前の夫との間に子供が居た場合ついては、例え女性が親権を取得していようとも、子供は元夫との籍に入ったままとなりますし、当然苗字も夫の姓を名乗ることになってしまうのです。
もちろん、夫が親権を有している場合にはそのままでも支障はないでしょうが、女性が親権者となっていたり、監護者(子供を育てるだけの権利者)となった場合については由々しき問題となります。(監護権等については別記事「親権や監護権について解説致します!」を参照)
そこでまず行うべきは、子供の姓を女性の苗字に改める手続きとなります。
この際、子供の年齢が15歳以上であるならば、子供が自ら家庭裁判所に申し立てて姓の変更を行う(氏変更許可の申立て)こととなりますが、14歳以下の場合には法定代理人、つまり親権者がこの手続きを行わなけばならないのです。
当然女性が親権者ならば問題はありませんが、監護権(子供を育てる権利)だけを有している場合には、子供が15歳になるのを待つか、親権者であり法定代理人である元の夫にお願いして手続きをしてもらうしかありません。
そして次のステップが、結婚前の戸籍に戻るにしろ、新しい戸籍を作るにしろ、子供の戸籍を前の夫から自分の籍に移すという作業です。
こちらも子供が行う場合は15歳以上である必要がありますし、幼い場合は親権者(法定代理人)が申立てを行う必要があります。
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親権や養育費のトラブル
ここまでのお話で、離婚後にすべき手続き面については、おおよそご理解頂けたことと思いますが、発生し得る問題はまだまだあります。
特に問題となるのが、子供が居た場合に生ずる親権や、養育費絡みのトラブルとなるでしょう。
親権について
まずは親権のお話から開始させて頂きますが、協議にしろ、調停・裁判にしろ離婚に際して自分が親権を取得したからといって、油断してはいけません。
子供を引き取れなかった相手がどしても子供を諦めきれず、様々な手段を講じて来る可能性もあります。
もちろん、不当な手段で子供を連れ去れば、家庭裁判所に申し立てを行うことで、様々な対策を講じることが可能ですが、自分自身の生活態度が「親権を持つ者として相応しくない」なんて訴えを起こされると厄介です。
当然裁判所は、子供の養育を最優先して判断を下してくれますが、仕事が忙しく子供を一人で自宅に放置していたり、自由の身になったからといって奔放に異性と遊び回っている場合などは、親権の停止や喪失という憂き目に遭う可能性だってあります。
子供を引き取った以上、我が子の未来を何よりも優先して、日々の生活に臨むべきでしょう。
養育費について
親権に続いて、養育費に関するお話しをさせて頂きましょう。
ご存じの方も多いとは思いますが、養育費とは子供を育てるために必要な費用となりますから、離婚に際する慰謝料や財産分与とはかなり趣を異にするものとなります。
養育費は通常、子供が成人するまでの期間について、離婚した相手方から支払われるものとなりますが、これはあくまで子供の成長のための費用を分担するという趣旨ですから、元夫が子供を引き取った場合については、女性でも養育費を負担する義務が生じるのです。
そして調停や裁判によって養育費の取り決めがなされている場合については、調停調書や判決が強力な執行力を持っていますから、万一相手方の支払が滞った際には、裁判所を通して「履行勧告」や「履行命令」を発することが出来ますし、最悪の場合には地方裁判所に申し立てての強制執行にて、預金口座の差押えや給与の差押えも可能となります。(詳細は別記事「強制執行とは?という疑問に解り易くお答えします!」を参照)
しかしながら、これが協議離婚の場合では口約束や簡単な確認書を交わしただけというケースも多く、養育費の不払いに苦しめらる方も少なくないのです。
こうした憂き目に遭わないためにも、養育費の取り決めを行う際には強制執行が容易に出来る公正証書を用いるのが得策です。(詳細については別記事「公正証書とは?という疑問にお答えします!」を参照)
なお時折、離婚に際して「養育費はいらない!」なんて約束をしてしまう方がおられますが、こうした約束をしてしまうと後々養育費の請求を行うのが難しくなってしまうケースも少なくありません。
ただこれは、あくまで「養育費はいらない!」という言葉を発した当事者のみのことであり、実際に養育費を必要としている子供には無関係なお話ですから、「子供が別れて暮らす親に養育費を請求する」という形態をとれば、支払いを受けられる可能性は高くなるでしょう。
因みに養育費と似た言葉で、「扶養料」という言葉がありますが、子供から別れた親への請求はこの「扶養料」としての性格が強く、扶養料については成人した後でも未成熟な子供(未成熟子)には支払義務ありとするのが通常です。(大学に通っており経済力がないケースも未成熟子と判断される)
よって養育費は成人するまでとするのが通常ですが、扶養料ならば成人を迎えた大学生であるという場合でも、支払いを命じる判決が下る可能性があります。
また、離婚時に取り決めた養育費だけでは、子供に万全の扶養を行えないという場合もあるでしょう。
こうしたケースでは、家庭裁判所に養育費の増額を求める訴え起こす(まずは調停からですが)ことも可能となりますが、反対に相手が再婚して子供が出来た場合や、勤めていた会社が倒産した場合などは、逆に減額請求の訴えを起こされる場合もあるでしょう。
再婚にあたって
そして最後の解説となるのが、再婚にあたっての法律問答ということになります。
離婚が成立し、落ち着いた生活が戻ってくれば、新たな恋が花開くこともあるでしょうから、「再婚を考える」という機会もあるはずです。
もちろん、再婚をしてはいけないなんてルールは存在しませんが、女性の場合は時期的な問題が生じる可能性があります。
実は民法上、女性は離婚した日から100日間は原則再婚することを禁じられています。
これは離婚時に妊娠していた場合、お腹の子が前の夫の子か、新しい夫の子であるかが、判らなくなってしまうのを避けるためです。
何とも不公平なルールという気もしますが、少し前までは300日間再婚不可とされていましたから、これでもかなりの緩和がなされています。
また、例え100日以内であっても、この100日間に出産した場合と、再婚時に妊娠していないことを医師の診断で証明出来る場合に関しては、このルールは適応されませんから、急いで再婚したい場合には是非ご参考にして頂ければ幸いです。
因みに「戸籍と姓に関する項」にて、離婚後に子供の氏名変更や戸籍の変更をするというお話を致しましたが、女性の場合は再婚を機に、子供を新しい夫の養子に迎え入れることで、氏名変更も籍の変更完了出来ますから、これはなかなか便利な方法と言えるでしょう。
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離婚手続きと法律問題まとめ
さてここまで、離婚手続きとそれに伴う法律問題について解説して参りました。
離婚をするだけでも非常に神経をすり減らすものですが、その後の処理も非常に大切であることをご理解頂けたことと思います。
離婚は非常に苦しいイベントではありますが、その後の頑張り次第では、人生に新たな光明をもたらすチャンスともなりますから、正しい知識を身に付けて適切な対象を行って頂ければ幸いです。
ではこれにて、「離婚後の手続きと法律問題を解説!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
参考文献
自由国民社編(2015)『夫婦親子男女の法律知識』自由国民社 472pp ISBN978-4-426-12069-6
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