未成年の子を持つ親にとって、非常に気になるのが「子供がグレてしまわないか?」という不安ですよ。
現在でも、暴走族などは全盛時程の規模ではないにしろ存在していますし、昔の様に「見るからに不良」という子供は減ったものの、見た目は普通の学生などが突如凶行に走るなんてケースも数多く報じられていますから、親の心配の種は尽きません。
また子供が女の子ともなれば、素行の悪い男子と付き合い始めることもあるでしょうし、お金欲しさに道ならぬ道に走る可能性だって否定は出来ないはずです。
もちろん、子供を非行に走らせないためには、コミュニケーションを密に取り、子供の悩みや苦しみに理解を持つことが何よりも大切なのでしょうが、これは努力すれば誰でも出来るというものでもありませんから、親としても実に頭の痛いところでしょう。
そこで本日は「非行少年・少女の法律問答をお届け!」と題して、子供がグレてしまった際の処遇や法律問題についてお話してみたいと思います。
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補導について
一言で子供がグレるといっても、その方向性は様々です。
悪い仲間と遊びまわったり、朝帰りしたり、家出をしてしまったりと、そのパターンはいろいろですが、こうした行動をとる子供を最初に待ち受けるのは「補導」というイベントでしょう。
読者の方の中にも、特別悪いことをしていないのに警察官に声を掛けられた経験をお持ちの方も少なくないとは思いますが、まずはこの補導についてご説明致します。
よく耳にする「補導」という言葉ですが、警察官がこの補導を行う法的な根拠は、少年警察活動規則という国家公安委員会が定めた規則と、警察法2条に定められた犯罪防止条項によるものです。
警察法2条は単に犯罪を未然に防ぐという内容だけですが、少年警察活動規則には、非行少年に対して警察官は指導や助言、時には補導することが許されています。
但し、この規則は法律ではありませんから、「補導はあくまでも任意であり、警察署に連行されるような強制権はない」なんて説明のされ方をする場合もありますが、原則として深夜徘徊などの場合は保護者が居ないことを理由に「保護目的の補導」が許されていますから、実質逃れることは困難でしょう。
なお、「未成年者は補導されても逮捕されることはない」なんて情報も見掛けますが、重大事件を引き起こした場合などは確実に逮捕されますから、この点もご注意頂ければと思います。(但し、逮捕後の処遇は成人と異なります)
また補導には、街頭補導と継続補導の二種類が存在し、街で警察官が声を掛けて来るのが街頭補導、これに対して継続補導は、問題があると考えられる子供を継続的に補導していくというものになりますから、同じ補導でも少々意味合いが異なるものとなるでしょう。
因みに、警察官の間では「補導を行うのは最小限に留める」というルールが存在している様ですが、市町村が積極的に青少年犯罪を減らしたいと考えている地域では、別途条例により補導の要件を定めている場合もあります。
こうした地域では、他の地域よりも積極的に補導を行うこととなるでしょうから、こうした情報を子供に知らせることが、非行の抑止力となるかもしれません。
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非行少年の処遇
さて、何度も補導を繰り返しているような子供が次に引き起こす可能性が高いのが、万引きやケンカなど法律に触れる行為となるでしょう。
大人であれば警察に逮捕され、刑事訴訟法に定めらてた手順で問題が処理されていくことに(詳細は過去記事「逮捕されたらどうなる?気になるその後を解説!」を参照)なりますが、これが未成年者となると少々その流れは異なるものとなります。
なお、未成年者の犯罪については、子供の年齢が13歳以上か否かによって大きく変わる部分もありますので、以下では年齢別にその後の処遇などを解説して行きます。
13歳以下の場合
未成年者が罪を犯した場合の処遇を定めた法律は「少年法」と呼ばれるものとなります。
近年では未成年者による重大事件が頻発しているため、大きな事件が起こる度により厳しい方向へと改正が加えられ続けているのが現状です。
まず13歳以下の少年・少女が罪を犯した場合には、法律上、触法少年(しょくほうしょうねん)として手続きが行われることとなります。
触法(法に触れる)という表現からは、何やら罪が軽そうなイメージも湧いてきますが、これは年齢によって呼び名を変えるためのみに付けられたネーミングとなりますから、重い罪を犯していても呼び名は同様です。
原則少年法は、「罪を犯した未成熟な子供に、更生の機会を与える」べく作られた法律となりますから、大人に比べてかなり甘い処遇が特色であり、特に13歳以下については非常に寛大な内容となっています。
もちろん、犯罪を行った場合には警察に補導(強制力を伴う補導ですから、実質は逮捕)されることとなりますが、13歳以下の場合は原則、児童相談所に通告されるという道程を辿るでしょう。
そして通告を受けた児童相談所は、対象の児童(保護者)に対して訓戒や指導を与えたり、時には里親制度を利用して第三者の家庭に子供を住まわせたりといった処置を取ります。
また犯した罪の重さによっては、児童自立支援施設等に入所させられる場合もありますし、11歳以上で特に重大な犯罪を起こした場合には家庭裁判所を経由して、少年院に送致されるケースもあるのです。
14歳以上
次に14歳以上の少年・少女についてのお話となりますが、原則警察から検察、そして家庭裁判所へと送致されることとなります。
「送致」というと、身柄を拘束されているイメージがありますが、軽い罪の場合は書類送致という形式で自宅に戻され、後日家庭裁判所に出頭することになるでしょう。
反対に罪が重い場合には、身柄送致(身柄を拘束される)という方法が執られ、鑑別所に留め置かれた上で、家庭裁判所の審判を受けることになります。
家庭裁判所では犯した罪の内容を精査することとなりますが、場合によっては不処分・審判不開始という判断が下され、放免となる場合もあるでしょう。(一定の訓戒や指導は行われる)
但し、罪が重いと判断した場合には、保護観察・児童自立支援施設等送致・少年院送致などの審判を下されることになる上、更に悪質となれば検察に送致され、刑事処分の対象となる可能性もあるのです。
因みに、14歳~17歳までの年齢の者は、刑事裁判に掛けられたとしても、減刑措置を受けられることとなっており、無期懲役以上の刑に処せられることはありません。
なお、18歳以上となればこの減刑措置は適用されず、死刑を言い渡される可能性も出て来ます。
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非行少年まとめ
さてここまで、子供がグレてしまった場合に必要となる法律知識をまとめて参りました。
本記事をお読みになると、「罪を犯したのに子供には随分甘いな」との感想をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
しかしながら法律は、非行少年に関しては実際に罪を犯していなくとも、虞犯(ぐはん)事由を理由にして、保護的措置や保護処分を行えることも定めています。
虞犯(ぐはん)事由とは、このまま生活を続ければいずれは罪を犯すであろう行為を指す言葉で、暴走族や暴力団員と行動を共にしていたり、家に帰ってこない、家庭で暴力を振うなどの兆候があれば、実際に犯罪を起こす前でも踏み込んだ措置が行えるという訳です。
こうした制度から見ても、法律は少年少女をまず悪の道に踏み入れさせないことを第一義とし、犯した罪については少々肝要な姿勢を執っているというのが実情でしょう。
将来のある子供を「如何に更生させていくか」、「犯した罪を如何に厳しく罰していくか」の綱引きが、今も少年犯罪を巡って繰り広げられているのです。
そしてこうした司法の在り方は、子供を持つ親にも大いに参考になる面もあるかと思いますので、道を踏み外した子供には上手に鞭を使い、正しい道へと導いて上げたいものですよね。
ではこれにて、「非行少年・少女の法律問答をお届け!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。
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