逮捕されたら

 

人生の中で、どうしても避けて通りたいイベントの一つに挙げられるのが「逮捕」という事態なのではないでしょうか。

もちろん、好き好んで逮捕される方はおられないでしょうが、「逮捕なんてされるのは限られたごく一部の方々」なんて考えは、現代社会では通用しなくなりつつあるようです。

例えば交通事故などにおいては、被害者に大きな怪我をさせてしまえば逮捕されてしまうケースは充分に考えられますし、自分は何もしていないのに無実の罪を擦り付けられる痴漢冤罪等、平凡な生活を送っている善良な市民にも、逮捕されるという非常事態が降り懸かって来る可能性があります。

そこで本日は、「逮捕されたらどうなる?気になるその後を解説!」と題して、逮捕から裁判に至るまでの流れや、そんな際に行ってならない行動などについて、解説してみたいと思います。

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逮捕後の流れ

では早速、逮捕されたその後にどんなイベントが待っているかについて見て行きましょう。

また、傷害罪や窃盗罪など、一言で逮捕といっても様々なパターンがありますが、今回は皆様が直面する可能性が最も高い「交通事故」でのケースを例に挙げてみましょう。

 

事件発生

会社の忘年会に出席したあなたは、周りの人間に煽られてついついお酒を飲んでしまいますが、その日はたまたま自家用車にて出勤していました。

しかし飲んだのはビール数杯でしたから、コンビニでコーヒーを煽り、少々休憩を挟んでからハンドルを握ることにします。

お酒を飲んでいるという後ろめたさもあり、なるべく慎重な運転を心掛けますが、信号の無い交差点で一時停止を無視して飛び出して来た自転車と接触事故が発生。

心の中に様々な思いが錯綜しますが、まずは救急車と警察に連絡を入れます。

 

警察到着・逮捕

程なく警察が到着し、事情聴取が開始されますが、あなたが発するアルコールに臭いに気付いた警官は、その場で呼気検査を実施。

あなたは飲酒運転の現行犯で逮捕されることになりました。

なお、被害者はそれなりの怪我を負ってはいるものの命に別状はなさそうです。

 

留置・取り調べ

逮捕された時間が深夜であり、被害者も病院に搬送されましたので、取り調べや実況見分は翌日ということになり、あなたは留置所の中で一夜を過ごすことになります。

なお、こうした取り調べなどで警察に拘束される期間を「留置」と呼び、その時間は最大で48時間までとされています。

この段階であなたは「被疑者」と呼ばれる立場になり、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合には先にお話した48時間を限度に留置されることになるでしょう。

因みにこの時点で、あなたには弁解の機会が与えられますし、取り調べで不用意な発言をしたくないのであれば黙秘も認められます。

また、弁護士に依頼する権限も与えられていますから、今度の展開を有利にするためにも一刻も早く弁護人を付けるようにしましょう。

そして取り調べ期間中には実況見分や調書の作成が行われ、あなたの供述などを基に供述書が作成されることとなりますが、時にはあなたの主張に反する内容の調書にサインをするよう求められることもあります。

ここで迂闊にサインしてしまうと、裁判で正式な証拠として採用されることになりますので、こんな場合は絶対にサインをしないようにしたいところです。

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送検

さて、次に待っているのが検察への送致となります。

最近では人気テレビドラマなどで検察官という職業がクローズアップされていますが、あの検察官の下に身柄を移されるのです。

検察に引き渡された後も、弁明の機会が与えられ上、今度は検察官による取り調べが開始されます。

ここでも逃亡の恐れなどがある場合には、追加で24時間の留置が可能。

また、検察官が更なる拘束が必要と判断すれば、裁判所に「勾留」を請求することが出来、この場合は最大で10日間の勾留が可能となります。

なお、10日間の勾留でも取り調べが終了しない時には、検察官は更に10日の勾留延期請求を行うことが出来ますから、合計で20日間身柄を拘束される可能性があるのです。

因みに勾留中の身柄は、拘置所に置かれるのが一般的とされていますが、拘置所のスペース不足の関係などから引き続き警察の留置場に置かれるケースも少なくなりません。

留置場にしろ、拘置所にしろ、親族などとの面会は許されていますが、どちらも回数や時間に制限がある上、警官の立会いが必須となるでしょう。(弁護士との接見は立会いなしで行えます)

そしてこの勾留期間中に、検察官は被疑者を「起訴するか、しないか」の判断を行うこととなります。

 

起訴

検察官の下で取り調べが行われ、「やはり犯罪を犯した可能性が高い」と判断されれば、次は起訴(公訴)されることになります。

公訴とは、検察官が裁判所に犯罪を犯した者を訴える行為となり、裁判所がこれを認めれば、いよいよ刑事裁判の始まりとなるのです。

ただ、この起訴するかどうか段階での判断は、『裁判をするか、しないか』という二択となる訳ではありません。

軽い罪に問われており、本人が罪を認めていれば「略式命令」や「即決裁判」という、より簡易的な処分とされることもありますし、「起訴猶予」と判断されることもあるでしょう。

起訴猶予とは、起訴するに足る証拠は揃っているが、罪が軽く、本人も反省しており、再犯の可能性が低い場合など行われる判断であり、不起訴処分の一種に分類される判断です。

但し、今後犯罪を犯した場合には、以前に起訴猶予を受けていることは厳しく評価されますし、前科とはならないものの「前歴」として記録に残されることとなります。

なお、不起訴処分には起訴猶予の他に、「嫌疑なし」・「嫌疑不十分」の2種があり、こちらの理由で不起訴となった場合は、晴れて社会復帰が出来ることとなるでしょう。

しかしながら、飲酒運転で相手に重傷を負わせた場合には、不起訴となるケースが少ないの実情でもあります。

こうした憂き目に遭わないためにも、検察官が起訴するかの判断を行う前に、弁護士に依頼して、被害者との示談を完了し、嘆願書を提出して不起訴としてもらえる様に働きかけてもらうなど、最大限の努力をしておきたいところです。

なお、それでも起訴されれば、あなたは被疑者から「被告人」へと変わり、裁判を拘置所で待つこととなります。

 

保釈

前項にて、裁判を迎えるまで「拘置所で待つ」とお話しましたが、場合によってはここで一端自宅に戻ることが出来る可能性もあります。

それは「保釈」と呼ばれる制度であり、起訴された被告人が願い出て、裁判所がこれを許可すれば、裁判が終了するまでの間、自宅に戻ることが出来るのです。

但し、保釈に際しては保釈保証金と呼ばれる金銭の預け入れが課せられており、この金額は個々の案件ごとに判断されることとなります。

因みに交通事故での保釈金の相場は200万円~100万円くらいが相場とされています。

また、保釈中は必ずしも自由な行動が取れる訳ではなく、遠方に行く際には裁判所の許可が必要となる上、呼出しに即座に応じなければペナルティーを課せられることになるでしょう。

そして、裁判の日を迎えれば、法廷に出向いて、裁きを受けることになるのです。

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逮捕されたらどうなる?まとめ

さて、ここまで「もしも逮捕されてしまったら?」というお題で、逮捕後に待ち構えている様々なイベントについて解説して参りました。

もちろん自分に非があれば諦めるしかありませんが、冤罪などである日突然、身柄を拘束されてしまう場合だってありますから、そんな時でも冷静な判断が下せるように、知識は身に付けておくべきでしょう。

そして危機的状況から脱するために、本ブログをお役立て頂ければ、何よりの幸いです。

ではこれにて、「逮捕されたらどうなる?気になるその後を解説!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

藤田裕監修(2015)『図解で早わかり 最新版 訴訟のしくみ』三修社 256pp ISBN978-4-384-04643-4

 

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