刑事裁判とは

 

サスペンスもののドラマや、法廷を舞台とした映画などで見掛けるのが、刑事事件の裁判シーンですよね。

また、最近の報道番組などでは、裁判の様子を解り易くCGで表現するなどしていますから、法廷の様子もイメージし易くなっていることと思います。

しかしながら、「実際に法廷でどんな審理が行われているか?」、「どんな順序で裁判が進行していくか?」などの細かい点については、全く判らないという方も少なくないはず。

そして現在では、交通事故や痴漢冤罪などで、一般の方が法廷に立たされる可能性も充分にありますから、刑事裁判の流れを知っておいても、決して損は無いように思えます。

そこで本日は、「刑事裁判とは?という疑問にお答えします!」と題して、裁判の流れやポイントについて解説してみることに致しましょう。

なお、逮捕されからの勾留・起訴といった裁判までの流れについては、別記事「逮捕されたらどうなる?気になるその後を解説!」にてご説明しておりますので、そちらをご参考にして頂ければと思います。

スポンサーリンク

 

刑事裁判の流れ

では早速、刑事裁判の流れについてご説明して行きましょう。

逮捕後に起訴され、裁判までの期間を拘置所で過した後に、裁判が開始されます。

刑事事件の場合には、国選弁護人と呼ばれる弁護士を付けることも出来ますから、今回は「弁護士がありき」でお話をさせて頂くこととします。

 

裁判開始

裁判開始前、被告人は先行して法廷入りすることになります。

そして開始時刻となると、裁判官が入場して来ますから、この際には立ち上がり、礼儀正しく一礼をしましょう。

 

人定質問

次に行われるのが、「被告人が本人に間違いないか」を確認するための人定質問となります。

裁判官は被告人に対して、年齢や住所などを質問して来ますから、ここでは不遜な態度を取らず、礼儀正しい対応を心掛けたいものです。

 

検察官の起訴状朗読

人定質問で本人であることが確認されれば、次は検察官による起訴状の朗読が開始されます。

「何月何日何時頃、何処どこの場所で事件が発生し、それに対して何の罪に問う」といったドラマなどでもお馴染みのシーンが展開される訳です。

 

裁判官からの告知

起訴状が読み上げられ、裁判の内容が確定したところで、裁判官より被告人に注意事項の告知が行われるます。

まずはお馴染みの「黙秘権があること」、そして「法廷での発言は全て証拠として採用され、判決に係って来る」ことを告げられるのです。

 

罪状認否

起訴状の朗読で裁判で争われるポイントが示され、裁判官からの注意事項説明が終われば、いよいよ被告人が事件に対しての主張を行う機会が与えられます。

まずは検察が読み上げた起訴状の内容について、「認めるか、認めないか」の返答を、被告人自ら行わなければなりません。

 

検察側・被告側の冒頭陳述

さて、検察官が読み上げた起訴状の内容について、被告人側が意思表示を行った訳ですから、次は検察側の追撃が始まります。

起訴状の中では、事件の概要がザックリと説明されていただけでしたが、検察の冒頭陳述では、より細かな事件の経緯が説明されることになるでしょう。

そして検察側の陳述が終われば、被告側にも陳述の機会が与えられることになります。

但し、刑事裁判では被告側が罪を認めているケースも多いため、こうした場合には被告人側の冒頭陳述が行われないこともあるのです。

スポンサーリンク

 

検察側の立証・証拠調べ

さて冒頭陳述が終われば、検察官は具体的な証拠を挙げながら、自分の陳述が事実に基づいていることを立証して行くことになります。

証拠には様々な種類があり、書類や遺留品などに加え、証言をしてくれる証人を出廷させて立証を行うことも可能です。

つまり、ドラマなどで良く見掛ける「証人尋問」はこの立証・証拠調べの際に行われることになります。

なお証人への質問は、まずは検察が行い、その後に裁判官や弁護人が行うのが通常です。

 

被告側の立証・証拠調べ

こうして検索側の立証が終了したら、今度は被告側からの反撃を開始します。

まずは検察が示した証拠に対して、被告人にとって有利となる証拠を示し、対抗することになるでしょう。

そしてここで証人尋問が行われた場合には、検察が行ったのとは反対に、弁護士が被告に直接質問を行った後、検察官や裁判官も質問を浴びせ、事件の真相へと近付いて行く訳です。

なお、ここから少々裁判の流れのご説明から脱線したしますが、我が国の裁判の多くは傍聴人を迎え入れた公開された場で進められて行きます。

これは、閉ざされた空間で不当な裁判が行われていないことを世に知らしめるという意味です。

また、陳述や立証などを検察官や弁護士・被告人、そして時には被害者までもが法廷に出席して、裁判官の目の前で行うのは「弁論主義」という考え方に基づいたものとなります。

事件の真実を明らかにするだけなら、双方が書面で意見をぶつけ合うことでも用は足りますが、主張が対立する場合には、どちらが本当のことを言っているのかを、相手の表情や態度などから総合的に判断しようという試みです。

よって、法廷においては同じ内容を語るにしても、「如何に裁判官に良い心証を与えられるか」、「より真実味があるように発言出来るか」が大きなポイントとなって来ることになります。

もちろんドラマの法廷で見掛けるような、ドラマチックな舌戦は滅多に見られませんが、検察側・被告側共に裁判官への強烈なアピール合戦を行うこととなりますから、ある種の劇場感があるのは確かでしょう。

 

論告・求刑

こうして展開して来た裁判ですが、この段階で検察側・被告側はそれぞれ自分の意見を述べ、証拠の提出も一通り完了したことになります。

この段階で、裁判官も事件の概要をおおよそ掴んだことになりますから、このタイミングで検察は改めて事件に対する意見を述べた上で、「懲役何年を求める」などの『求刑』を行うのです。

 

弁護士の弁論

さて被告人側と検察官側の証拠が出揃い、求刑も決まれば、ここからは改めて被告側に弁解の機会が与えられることになります。

弁護士としては、ここが最後のアピールの場となる訳ですから、腕の見せ所とばかりに全力で被告人の弁護にあたることになるでしょう。

 

被告人の最終陳述

弁護人の弁論が完了すれば、最後の締め括りに被告人にも最後の陳述を行う機会が用意されます。

先程も申し上げた通り、裁判官は被告人の所作や表情なども注意深く観察して、判決を決定しますから、この最終陳述で与える印象は非常に重要なものとなるのは言うまでもありません。

弁護士が行う弁論の内容と矛盾したりするのは論外となりますから、事前に綿密な打ち合わせを行い、最後の足掻きをしましょう。

 

判決

そして最後に迎えるのが判決の言い渡しとなる訳ですが、実は裁判とは別に日に行われるのが通常です。

一般的には10日~2週間程度の期間が設けられ、最終的な結論が出ることになります。

なお、この判決に不服な場合には、2週間以内であれば上級裁判所に「控訴」を行うことが出来ます。

スポンサーリンク

 

刑事裁判まとめ

さて、ここまで「刑事裁判とは?」というテーマでお話をして参りました。

ドラマなどで見る裁判の様子とはかなり異なり、驚かれた方も多いのではないでしょうか。

また、映画の法廷劇などでは、サラリと流されてしまう展開に、「そんな意味があったか!」と驚かれた方も多いことと思います。

裁判は弁論主義を執っているだけに、どこか劇場感を感じずにはおれない側面もありますが、その反面、真実を追求するために貪欲なまでに研ぎ澄まされた制度とも言うことが出来ますから、この仕組みを作り上げた先人たちの努力には思わず頭が下がる思いです。

また平穏な生活を送っている私たちにも、何時訴訟という災厄が降り掛かってくるか分からない時代ですから、正確な知識を身に付け、緊急事態にしっかり備えて行くべきなのではないでしょうか。

ではこれにて、「刑事裁判とは?という疑問にお答えします!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

藤田裕監修(2015)『図解で早わかり 最新版 訴訟のしくみ』三修社 256pp ISBN978-4-384-04643-4

 

スポンサーリンク