DV防止法とは

 

愛し合う男女が結婚し、新たな家庭を築いていくことは、古くから繰り返されて来た人間の営みであり、多くの人が望む幸せの形です。

もちろん他人同士が一つ屋根の下に暮らす訳ですから、ケンカや争い、時には相手の浮気などのトラブルが発生することもあるでしょうが、これが「妻への暴力」なんてお話になると問題は非常に深刻なものとなるでしょう。

近年ではDV(ドメスティックバイオレンス)という言葉も広く知られる様になり、各メディアにも深刻な社会問題として取り上げられることが多くなりましたが、統計データを見てみれば「DVの被害件数は年々増加している」のが現実です。

そこで本日は「DV防止法とは?という疑問にお答えします!」と題して、DV問題の概要や、被害者保護に関する法律知識をお届けしてみたいと思います。

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DVとは?

ではまず、「そもそもDVとは何てあるか?」という点から解説を始めて参りましょう。

ドメスティックバイオレンスという言葉を日本語に訳してみると、domestic(家族の、家庭的な)violence(暴力)という意味になります。

最近では「ドメスティック」という言葉だけでも、何やらマイナスな印象を持つ方も多い様ですが、英語圏ではdomestic animal(家畜)などの使われ方をする極一般的な形容詞に過ぎません。

また、日本では「夫が妻に振う暴力」というイメージが先行していますが、子供が親に対して振う家庭内暴力や幼児虐待、老人虐待なども広い意味ではDVと呼べます。

しかしながら、実際に警察などに寄せられる相談内容を見ると、我が国ではDV被害の90%以上が「夫から妻に向けて」のものとなっていますから、この解釈も決して誤りであるとは言えない側面もあるようです。

なお、DVという「殴った・蹴った」という暴力行為が頭に浮かびますが、定義としては言葉の暴力や性的な暴力、無視を続けるなどの精神的な暴力も、これに含まれるとされます。

因みに、夫婦喧嘩をしていて一度だけ「夫に頬を叩かれた」ことについて「DVを受けた!」と訴え出る方も多いようですが、裁判所や警察も『軽度且つ、正常な夫婦間で起きたこと』については、罪に問わないというのが基本姿勢となっているようです。

過去の判例を見ても、全治3日程度のケガを負わせた様な事件では、暴力を振った夫の責任を認めない判決を出しています。

また反対に、法的に争うとなれば確実に相手を罰することが出来るような暴力を受けながらも、「暴力を振われる自分に責任がある・・・」という想いから、被害の届出をしない女性も多いようです。

但し、問題が深刻化していけば、相手から一生もののケガを負わされることも考えられますし、エスカレートした暴力により命を落とすという事件も増えつつありますから、DV問題については社会的に厳格な対応が求められる時代になっているのです。

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DV防止法

そんな時代背景から平成13年に施行されることとなったのが、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」であり、現在では「DV防止法」として広く認知されることとなっています。

しかしながら、この法律の名前は知っていても、一体この法律で何が禁じられ、相手にどんな制裁を加えることが出来るのかについては、あまり詳しく知られていないのが実情である模様。

そこで本項では、このDV防止法について判りやすく解説して行きたいと思います。

 

DV防止法の概要

ではまず、この法律の概要からご説明を始めましょう。

「配偶者からの暴力の防止及び被害者の・・・」という正式名称からも判る通り、この法律で規制されるのは、あくまで『配偶者からの暴力等』であり、彼氏・彼女などの恋人から被害を受けたケースは対象外となります。

但し、離婚した後も別れた相手に「つきまとう」という被害も非常に多いため、元夫や元妻に対しては規制の対象としています。

またDVとして定義付けられている内容については、物理的な暴力以外にも、言葉の暴力や精神的な暴力も対象となっているのです。

 

DV防止法で出来ること

そして実際に配偶者から暴力等の被害を受けた場合、この法律はどの様に被害者の身を守ってくれるのでしょう。

被害者が、まずしなければならないことは、自分が被害を受けたことを公的機関に申し出ることです。

DV防止法では、「警察」及び「配偶者暴力相談支援センター(運営する行政によって名称は異なる)」または公証人役場を申し出先と規定していますが、やはり手っ取り早いのは警察となるでしょう。

そして警察に届け出た後は、自分が住んでいる地域を管轄する地方裁判所に申立てを行うことになります。(申立て先を家庭裁判所だと思っている方も多いようですが、これは誤り)

申立て後は、まず申立人(被害者)が裁判所から呼び出され、事情を聞かれた後、相手方(加害者)も呼び出しを受けることになりますが、被害者と加害者が鉢合わせするようなことは無いように配慮されるはずです。

そして双方の話を聞いた裁判所が、「このままでは危険」と判断した際には、下記の2種類の保護命令の内、どちらか一方が下されることとなります。

 

接近禁止命令

この命令を下された加害者は、被害者に対して6ヶ月の間、接近することを禁じられます。

接近の中には、自宅や勤務先への訪問はもちろん、周囲を徘徊する行為も禁止されますから、文字通り「見えないバリアー」を張ることが出来るのです。

また必要に応じて、電話やメールでの連絡や、子供に対する接近、そして親族に対する接近もブロック出来ますから、この命令はなかなかの優れものと言えるでしょう。

なお、6ヶ月の期間が終了しても、再び加害者が危害を加える恐れがある場合には、具体的な被害が無い場合でも、再度、裁判所が接近禁止命令を出すことが可能です。

 

退去命令

そしてもう一つの保護命令が、退去命令と呼ばれるものです。

こちらは被害者と加害者が同居しており、加害者がいると家から脱出出来ない場合に用いる命令であり、加害者を家から2ヶ月間退去させることが可能。

あくまで脱出の時間を稼ぐ命令となりますから、2ヶ月の間に新たな住いを見付け、引っ越しを行う必要があります。

なお緊急避難を目的としているため、原則2度目の退去命令の発動を行うためには、新たに加害者から危害を加えられたという事実が必要になるでしょう。

但し、一度目の退去命令でどうしても引っ越しが出来なかった事情がある時などは、同じ被害を理由にしての二度目の退去命令を行うことが可能です。

因みに、引っ越した後も加害者が付き纏って来る様な場合には、前項の接近禁止命令にて対応することになります。

 

また、上記の保護命令に加害者が違反した場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられることになりますから、強引な相手に対しても一定の抑止力を発揮してくれるはずです。

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DV防止法まとめ

さてここまで、DV防止法とドメスティックバイオレンスを巡る問題について、お話して参りました。

DV防止法については、施行当初から様々な問題点が指摘されていますが、その後も法改正を繰り返しており、現在ではかなり痒いところ手が届く様になりつつあると思います。

しかしながら冒頭でも申し上げた通り、最も危険なのは既にDV被害を受けながらも、自分が被害者であるという認識が無い方々です。

こうした傾向にある方は加害者に対して強い愛情を持っており、「自分が居ないと、相手がダメになる」という強い思い込みを持っているケースが多い様ですが、暴力を振う以上は、相手があなたを愛していないことは確実でしょう。

どうか勇気を持って、弁護士や警察への相談に踏み切って頂きたいものです。

なお、近年ではDVを受けていないのに、離婚理由などにするために「殴られた」などの嘘を付く者も多い様ですが、DV防止法においては虚偽の申立てについて過料に処すると定めていますし、場合によっては更に重い罪に問われる可能性もありますから、是非ご注意頂ければと思います。

ではこれにて、「DV防止法とは?という疑問にお答えします!」の記事を締め括らせて頂きます。

 

 

参考文献

自由国民社編(2015)『夫婦親子男女の法律知識』自由国民社 472pp ISBN978-4-426-12069-6

 

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