親の金を盗む子供

 

人生の中で得ることの出来るものの中で、最も素晴らしいとされているのが「子供」という存在です。

愛する人との間に授かった我が子はそれだけでも「宝」と呼べるでしょうが、お腹を痛め、幼い頃から生活を共にしていると「大切」なんて言葉では決して表現しきれない、自分の一部のような感覚さえ覚えることでしょう。

しかしながら、成長すると共に親に対して「暴言を吐く」、「お金を盗む」、そして時には「暴力を振う」といった、困った子供に成長するケースも決して「ない!」とは言えませんよね。

そして子供が親に対して害を及ぼした際には、法律は如何なる方法で親を守ってくれるのでしょうか。

そこで本日は「親の金を盗む子供、親を殴る子供の法律問答!」と題して、子供が親に及ぼす犯罪行為について、法律的な解説を行ってみたいと思います。

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親の金を盗む子供

さて、非常に多くの親御さんが経験されていることと思われるのが、「子供が親のお金に手を付ける」というトラブルです。

「買い物をお願いしたら、おつりを返さない」という可愛いものから、「隠しておいた現金が数万円レベルで消えている」という笑えない事態まで、その深刻度は様々でしょうが、

酷い場合には、「親のカードを盗み出して、勝手に預金を引き出す」といった出来心では済まされない事態に陥っているご家庭もあることでしょう。

そして、こんな酷いケースでは「警察に突き出してやりたい!」と思われる親御さんもおられるかもしれませんが、法律上、子供が親のお金を盗んでも罰せられること出来ません。

これは刑法244条にある「親族相盗」に関する規定によるもので、配偶者(夫や妻)、そして直系血族(祖父母・子供・孫)、同居の親族(一緒に住んでいる兄弟・姉妹)が窃盗を行っても、刑法上これを罰するは出来ないとしているのです。

因みに他人であれば、窃盗罪は「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」という厳罰に処せられますから、これはなかなかに寛大な措置と言えるでしょう。

なお、同居しておらず、直系血族でもない親族(叔父・叔母等)が被害に遭った場合については、盗まれた本人が告訴(警察や検察に対して、犯罪被害に遭ったことを告発する行為)すれば、罰せられることとなります。

但し、ここで注意が必要なのは親族相盗だからと言って、 「罪にならない」という意味ではない点です。

あくまでもこの規定は「罰せられない」と定めていますから、警察に捕まることはなくとも、罪は罪となります。

なお横領罪や恐喝罪、詐欺罪なども罰せられないことと解釈されますから、「親を脅してお金を出させる」、「事故を起こしたと嘘を付いて、お金を騙し取る」という行為も同様の扱いとなるのです。

但し、「親が他人から預かっているお金を盗む」というケースでは確実に罰を受けることになりますし、「子供が仲間と一緒に、親のお金を盗む」というケースでは、子供は罰を逃れるものの、友人たちは逮捕されることになるでしょう。

もちろん「積極的に子供を罰して欲しい」と願う親は少ないでしょうが、生活が困窮する程の被害を受けても、警察が動いてくれないという事実だけは知って必要があると思います。

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親を殴る子供

子供の親への窃盗に続いては、親への家庭内暴力のお話となります。

前項の解説をお読みになられた後では、「もしや親を殴っても罪にならないの?」とも思われるかもしれませんが、流石に暴力沙汰は罰を受けることになるでしょう。

子供が親を殴る行為も、広い意味ではDV(ドメスティックバイオレンス)に分類されますが、日本のDV防止法は配偶者と元配偶者のみが対象となりますから、この法律で罰することは出来ません。

よってシンプルに、傷害罪などが適用されることになるでしょう。

また暴力を振った上で金銭を奪う行為は、前項の親族相盗には該当せず、強盗罪で逮捕されることになります。

なお、子供が未成年であるケースでは少年法の適応を受けることとなりますから、原則刑事事件として罰せられることはありませんが、家庭裁判所に送致される可能性は充分にありますし、暴力の度合いがあまりに激しい場合には、14歳以上であれば刑事事件として扱われるケースも出てくるでしょう。

因みに少年法では例え罪を犯していなくとも、「犯罪に至る危険性がある」と判断される「虞犯(ぐはん)行為」があった場合には、保護的措置や保護処分を課することが出来るとされており、家庭内暴力は立派な虞犯行為となりますから、こちらの制度を利用して対策を行うのも一つの手段かと思います。

そして日常的に家庭内暴力を受け続けている場合などには、例え実の親であっても「勘当したい!」なんて気持ちになるものですが、現在の日本の法律で親子の縁を切ることは出来ません。

但し、こうした事由がある場合には家庭裁判所に申し立てることにより、相続人から対象の子供を排除する手続き(予定相続人の廃除請求)は可能となりますから、お困りの際にはこちらを利用するのも良いでしょう。

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親の金を盗む、殴る子供まとめ

さてここまで、親を殴ったり、お金を盗むといった子供に対する法律知識を解説して参りました。

子供は何より大切な宝物であることは間違いありませんが、あまりに度を越した場合には毅然とした態度で接し、時には法律の力を借りることも必要かもしれません。

親としては、子供がこうした態度に出るのは「自分の責任」と考え、甘んじて我慢してしまうことが多い様ですが、社会の厳しさを教えるのも愛情です。

親に向けられた行為が、「他人に向けて」とエスカレートし、取り返しの付かない事態になる前に、しっかりと対応して頂ければと思います。

なお家庭内暴力等に止まらず、非行行為に歯止めが掛からない場合には、少年犯罪の処遇について詳しく書いた「非行少年・少女の法律問答をお届け!」の記事をご参考になさって下さい。

ではこれにて、「親の金を盗む子供、親を殴る子供の法律問答!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

 

参考文献

自由国民社編(2015)『夫婦親子男女の法律知識』自由国民社 472pp ISBN978-4-426-12069-6

 

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