贈与とは

 

社会生活を営んでいると、「贈与」なる言葉を耳にすることがあります。

そして、「贈与とはお金や不動産などを、人に上げること」というザックリとした意味は知っているものの、「自分には縁のない話だ・・・」なんてお考えの方も多いはずです。

しかしながら、この贈与という行為は多くの方々が日々の生活の中で何気なく行っていることも多い、非常に身近な法律行為だったりも致します。

そこで本日は「贈与とは何か?わかりやすく解説致します!」と題して、贈与という行為について詳しく解説してみることに致しましょう。

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贈与とは何か?

ではまず、贈与とは如何なる行為を指すかという点から解説してみたいと思います。

冒頭でもお話した通り「人に物を上げる行為」という認識は皆さんもお持ちかとは思いますが、法律的に贈与を説明するならば「相手に対して物を無償で上げる意思表示を行い、相手がそれを承諾することで成立する契約行為」ということになるでしょう。

こうした定義は民法549条にしっかりと定められていますから、友人に「ガム上げるよ」と言って、相手がガムを受け取れば、それは立派に贈与という契約が成立したことになるのです。

この様なお話を聞くと、お酒を飲んだ勢いで「あの服上げるよ!」と友人に行ってしまったことや、飲み屋の女性に「時計買って上げるよ」なんて言った約束も、『契約として成立しているのでは?』と不安になって来てしまいますよね。

そこで次項では、この贈与契約が法律上、どんな扱いをされているのかについて解説して参ります。

 

民法上の贈与のルール

民法は贈与について、以下の様な定めを行っています。

 

口約束について

多くの方々が最も気になっておられるであろう「口約束での贈与契約」に関しては、贈与する側の人間(贈与者)は貰う側の人間(受贈者)に対して何時でも契約の撤回を行うことが出来ると定めています。

また、反対に貰う側の人間についても、「やっぱり要らない」と言えば、約束を何時でも反故にすることが出来ます。

よって、口約束で行った物を上げる約束は守らなくて良い反面、後から相手「要らない」と言って来た場合にも、「貰ってくれるって約束したじゃないか!」とは主張出来ない訳です。

但し、例え口約束でも約束を反故に出来ないケースもあります。

それは既に対象物が相手の手に渡っている場合です。(履行されている)

ですから、実際に時計などをプレゼントしておいて、後から「返して欲しい」という訴えは原則認められません。

 

書面による贈与

では相手と書面を交わしている贈与について、法律はどの様な扱いをしているのでしょうか。

実はこの書面による譲渡については、例え履行前であったとしても撤回出来ないというのが、法律上の解釈となります。

また書面についても、書き方などには特別な決まりがありませんから、場合によっては紙ナプキンなどにふざけて書いた落書きでも、有効と判断されてしまう可能性があるのです。

但し、あくまでも贈与は好意による契約となりますから、例え書面による贈与でも、相手に信頼関係を破壊するような行為(暴力を振われた等)があった場合には、契約の撤回が認められることもあります。

 

他人物贈与

さて、これはイレギュラーなケースとなるかもしれませんが、まだ自分の物ではないものについての贈与は、どの様に扱われるのでしょうか。

因みに『まだ自分の物ではない贈与』とは、「もし懸賞で当たったら、賞品を君に上げるよ!」なんて約束をするです。

実は民法には他人物贈与に関する規定は存在していないのですが、判例によると、こうしたケースでも贈与は有効と判断されています。

但し、「手に入らなかった場合には、義務を果たす必要はない」という解釈になりますから、贈与者に負担が発生することはないでしょう。

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贈与税とは

民法における贈与の考え方をご理解頂いたところで、ここで一旦税法についてお話してみたいと思います。

我が国では、こうした贈与に対しても課税を行う制度を採っており、その納税義務者は財産を受け取った人間(受贈者)です。

また、数ある税金の中でも非常に高い税率が課せられることで知られており、200万円までが10%、600万円を超えれば40%、3000万円を超えれば55%という驚くべき規定となっています。(但し、家族間贈与などには様々な税制優遇があります)

但し、一年間で110万円までの贈与は、誰に渡しても非課税とされていますから、この範囲内であれば課税されることはありません。

因みに1000万円の価値のある物を、300万円で相手に譲り渡した場合には、「残りの700万円分は贈与に当たる」と判断されることがありますから、贈与を行う場合には税法にも注意を払う必要があります。

 

相続との関係

現代の日本では、この様な運用がなされている贈与ですが、これが相続と関連して来るとお話は少々面倒なことになります。

例えば1000万円の資産も持つ方が、生きている間に800万円を第三者に贈与したとしましょう。

もちろん、贈与税さえ払えば問題はないのですが、この方が亡くなり相続が発生すると厄介な問題が発生します。

仮にこの方に奥さんが居たとすると、本来は1000万円の資産全額を相続出来たはずなのに、800万円が他人に渡ったとなると「相続分を侵害された!」なんて話にもなりかねません。

過去記事「相続の順位や割合について解説!」の中でも解説致しましたが、この奥さんには法定相続分で1000万円、他人に財産を与えた場合でも半額の500万円については遺留分という制度でに遺産の取り分が法律で保証されているはずなのです。

こうしたケースに対応するため法律では、亡くなる一年以内に行われた贈与については、相続人に遺留分の請求を認めていますから、奥さんは贈与を受けた相手に対して一部返金を迫ることが出来るのです。(遺留分の滅殺請求権)

また、贈与が亡くなる一年より前に行われていたとしても、贈与者と受贈者双方が相続人の遺留分を侵害する可能性があることを知っていた場合には、同じく滅殺請求権を認めています。

 

生前贈与について

さて前項の解説をお読みになられて、「ある疑問」が頭を過った方もおられるのではないでしょうか。

それは兄弟姉妹がおられ、「自分以外の兄弟が親から生前贈与を受けていた場合に、相続にどんな影響が及ぶのか?」という疑問かと思います。

資産をお持ちのご家庭ならば、親が健在の内から財産を子供に分け与えるなんてことも有り得るでしょうし、一般のご家庭でも、娘さんにのみ嫁入り資金を渡したり、借金を作ったバカ息子の代わりに親が返済を行うなんてケースは耳にしますよね。

こうした生前贈与について法律は、「贈与された財産の性質によって、相続時の取り分に影響を及ぼす」との判断を下しています。

例えば、住宅取得や大学の学費とすることを目的に贈与を受けていた場合には、その受贈者は「特別受益者」と判断され、相続の際には贈与分を相続分の一部に組み込まなければならないのです。

ではここで簡単な例を示してみましょう。

仮に父親が500万円の現金の残して亡くなり、相続人の兄弟A・Bが居たとします。

そしてAは生前に父親から400万円の住宅購入資金を贈与されていたとすれば、相続財産は合計で900万円(現金500万円+Aへの生前贈与400万円)と計算され、A・Bの相続分は450万円ずつの計算です。

但しAは既に400万円を既にもらっていることなりますから、相続時の取り分はA50万円、B450万円という計算となります。

では特別受益者と判断されず、相続に影響を及ぼさないのはどんなケースなのでしょう。

判例を見てみると、親が肩代わりした子供の借金や、学生時代の仕送り、結婚式の費用などは、特別受益とみなされないことが多い様です。

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贈与まとめ

ここまで贈与という行為について解説を行って参りました。

「贈与なんて、お金持ちだけがすること」というイメージをお持ちだった方にも、この法律行為をより身近なものに感じて頂けたのではないでしょうか。

また、「人に物を上げるのにルールがあったんだ」という感想を持たれた方も少なくないことと思います。

普段、私たちは何気なく日常生活を送っていますが、 日本が法治国家である以上、その行動は全て法律による制約を受けていますから、正しい知識を身に付けて賢く暮らして行きたいところですよね。

ではこれにて、「贈与とは何か?わかりやすく解説致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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