運転の法律

 

運転免許を取得する際には、教習所に通うなどして、運転に関する様々な知識を身に付ける必要があります。

もちろん、基礎的な運転技術の取得や交通標識の種類を暗記することは、非常に意義のあることですが、実際に免許を取得して運転を始めると「こんなの教習所で習っていない・・・」なんて局面にしばしば遭遇するものです。

そこで本日は「運転の法律知識をお届け!」と題して、教習所では詳しく教えてくれない、ドライバーさんに役立つ法律問答をお届けしてみたいと思います。

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意外に知られていない運転の法律知識

自動車を運転する上での必要な法律知識と言えば、交通ルールに係わる道路交通法の内容や、万が一事故を起こした時のための自賠法などが頭に浮かぶことと思いますが、知っておくべきことはまだまだあります。

そこで以下では、知っておくと便利な交通関連の法律知識をお届けして行きましょう。

 

煽り運転

自動車を走らせていると、時折遭遇するのが、背後から幅寄せ(煽り行為)をして来る不届き者です。

追い越し車線をのんびり走行しているのならともかく、それなりのペースで車の流れに乗っているにも係わらず、後ろからぴったり距離を詰められるのは非常に不愉快なものですよね。

また、質の悪い相手ですと、車線を変更しても執拗に煽りを続けて来ますから、非常に怖い思いをしたと言う方も少なくないでしょう。

因みにこの煽り運転は、道路交通法26条に規定されている車間距離不保持に該当し、高速道路なら3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金(一般道なら5万円の罰金のみ)という罰に処せられることになります。

なお、煽り運転をした挙げ句に、相手が事故を起して、怪我等を負った場合には危険運転致死傷罪に問われる可能もあり、このケースでは最大で懲役15年の罪を課せられるのです。

※解説した刑事処分以外にも、行政処分の対象となります。

※危険運転致死傷罪については別記事「危険運転致死傷罪について解説致します!」をご参照下さい。

 

急ブレーキ

続いてご紹介するのが、急ブレーキに関する法律問答となります。

前項にてお話した煽り運転をされた時などは、「急ブレーキで対抗する!」という方もおられるでしょうが、こちらも道路交通法で罰せられる可能性があります。

法令(24条)によれば、急ブレーキは危険回避の場合以外には行ってはならない行為と定められており、違反した場合には3年以下の懲役または5万円以下の罰金を課せられることになるでしょう。(別途、行政処分もあり)

また、「相手を焦らせてやろう」と故意にブレーキを踏んだ場合には、危険運転致死傷罪はもちろん、殺人罪などに問われる可能性もあるのです。

因みに東名高速で発生した、煽り運転をした挙げ句、追い越し車線で後続車を停車させた事件では、加害者に厳罰を望む世論が高まっているものの、直接被害者に車をぶつけた訳ではないため、危険運転や殺人罪の要件を満たしていないというのが実情となります。

しかし、今後の交通事故の問題に大きな影響を及ぼす裁判となりますので、本ブログでは引き続き判決の行方を見守って行くつもりです。

 

危険な落とし物

運転をしていると、時折見掛けるのが路上に放置された落下物です。

軍手や靴などであれば、例えタイヤで踏み付けも、それ程の問題はありませんが、これが木片や機械部品であれば、大事故に繋がる可能性だってあります。

また時には、自転車やタイヤ等が落ちているケースがある様ですから、運転の際は前方に出来る限りの意識を集中しておく必要があるでしょう。

但し、夜間の高速道路などでは、視界の悪さから落下物を回避することは非常に困難ですから、こうした状況では「運を天に任せるしかない・・・」というのが実情かと思います。

なお、こうした危険な落し物をしていった者には「法律による厳しい罰則」が待っており、道路法43条違反なら1年以下の懲役または50万円以下の罰金となりますし、道路交通法75条違反となれば3ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金に処せられるのです。

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高速道路での低速走行・路肩走行など

休日のドライブや旅行、帰省となれば、避けて通れないのが「高速道路の通行」となりますが、この際にも多くの注意すべき点があります。

高速道路の違反と言えば、「速度超過や車線変更での違反くらいでしょ?」というお声も聞えて来そうですが、事はそう単純ではありません。

 

最低速度

運転初心者にとって、アクセルをグングン踏み込むのは恐怖感を伴うものですが、高速道路では時速50キロという最低速度が定められています。

違反した場合は行政上の処分のみとなりますが、車の流れを阻害する行為は、大事故にも繋がる可能性もありますので、是非ご注意頂きたいものです。

 

路肩走行

大型連休の渋滞時などに見掛けるのが、車線ではない路肩を走行する不届き者たちです。

確かにトイレを我慢していて、「あと少しサービスエリアに辿り着ける」なんて時には、思わず誘惑に負けそうになるものですが、これは立派な犯罪行為となります。

違反をした際の罰則は行政処分のみに止まらず、最高で3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金という刑事責任を問われることもありますから、是非ご注意下さい。

 

追い越し車線のノロノロ運転

冒頭にて「煽り運転は絶対に控えるべき行為である」と申し上げましたが、場合によっては煽られる側にも問題があるケースもあります。

例えば高速道路の追い越し車線は、遅い自動車を追い抜くための車線となりますから、ここを低速で走行し続ければ、これは大変な迷惑行為となるでしょう。

また法令上も、意味のない追い越し車線の走行は違反行為とされており、行政処分に加えて5万円以下の罰金という刑事上の処分を下される場合もあります。

 

ETCのバーを破壊する行為

高速道路を運転している際、思わず「ドキッ」とさせられるのが、料金所に設置されているETCのゲートなのではないでしょうか。

料金所が近付いて来ると「減速!」という看板が何度も目に入って来ますが、自分では充分に減速しているつもりでも、なかなかゲートが開いてくれずに、焦った経験は誰もがお持ちのことと思います。

もちろん、意図せずETCパーを破壊してしまった場合には、自分から申告することで罪に問われることはありませんが、例え自分の車が傷付いた場合でも修理代が支払われることは滅多にありませんし、運転者は破損したバーの修理代を負担しなければならないのです。

因みに料金を踏み倒すつもりで、ゲートを強行突破した場合には、道路整備特別措置法58条により、30万円以下の罰金を科せられることになります。

 

私有地への駐車

休日に行楽地など出向くと、目的の施設の駐車場はもちろん、周囲の時間貸し駐車場まで全て満車状態なんて光景をよく目に致します。

通常であれば、駐車場が空くまで順番待ちをするのが当然ですが、中にはコンビニエンスストアのパーキングや、周囲の月極め駐車場などに無断で駐車してしまう不逞の輩もいる様です。

また近年、道路交通法が改正になった際には、ネットなどで「駐車違反の取り締まりを受けるよりは、無断で私有地に駐車する方が安全である」という酷い情報が流布していましたが、こうした行為は自身の身のためにも避けるべきでしょう。

もちろん、公道外ですから駐車違反での取り締まりを受けることはありませんが、他人の所有地を勝手に利用する訳ですから、損害賠償や慰謝料等の請求を受ける可能性は充分にあります。

特に月極め駐車場の場合は、真の契約者が存在する訳ですから、訴訟を起こされる可能性は非常に高いと言えるでしょう。

因みに、駐車場などで見掛ける「無断駐車は罰金●万円」等の看板は裁判でも有効との判断を下される可能性が高いですから、裁判費用などを含めれば「とんでもなく高額な駐車料金を支払うことになる」という結末を迎えることになるのです。

 

私道でのトラブル

前項にて、「私有地への無断駐車は民事訴訟の対象となる」とのお話を致しましたが、こんな話をすると『私道なら大丈夫なのでは?』なんて質問をして来る方がいらっしゃいます。

確かに私道であれば、他に契約者が居る訳ではありませんし、道路交通法も適応されないイメージがありますが、これは大きな間違いです。

例え私道であっても「(不特定多数が通行する)」道路では、道路交通法が適用されるルールとなっており、確実に駐車違反の罪で罰を受けることになるでしょう。

もちろん「公共の用に供されていない」のであれば、民事訴訟のリスクのみで済みますが、これを争点とした裁判の判例を見ても、駐車した側を支持する判決は殆どありませんから、絶対に駐車は控えるべきです。

 

駐車場でのトラブル

私道のお話が出たついでに、駐車場内でのトラブルについても解説しておきましょう。

基本的に駐車場も私有地内の施設ではありますが、行楽施設やスーパーなど不特定多数が出入りする駐車場は「公共の用に供されている私道」と判断されます。

よって、こうした駐車場内で事故を起こした場合には、公道と同様に道路交通法によって裁かれることとなるのです。

また例え月極め駐車場であっても、駐車台数が多い場合には同じく私道の扱いとなりますから、注意が必要でしょう。

行楽地の駐車場では、ふざけて無免許の子供にハンドルを握らせる親や、飲酒運転などを行う者がおりますが、自動車は扱い次第で凶器にもなることを肝に銘じておくべきです。

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運転の法律知識まとめ

さてここまで、教習所では教えてもらえない運転に係る法律知識をまとめて参りました。

取り扱って来た内容の中には、「長年運転をしているけど、知らなかった」なんて知識も含まれているかもしれませんが、時には『知らなかったでは済まされない事態』が発生する可能性も充分にありますから、この機会に覚えておいて頂ければ幸いです。

今や運転免許は「持っていた当たり前」の時代ではありますが、その根本に立ち返れば「特別に運転を許可された者のみに与えられる資格」となりますから、その許可の重みを噛み締めながらハンドルを握るべきでしょう。

ではこれにて、「運転の法律知識をお届け!」の記事を締め括らせて頂きます。

 

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