自転車事故

 

小さなお子さんから、お年寄りまで、誰もが気軽に運転することが出来るのが自転車です。

近年では、運動不足解消にと通勤で自転車を利用する方も増えて来ている様ですし、本格的なスポーツサイクルを購入してツーリングを楽しんでおられる人も多いでしょう。

しかしながら、所謂ママチャリと呼ばれるタイプの自転車でも、大人が本気で漕げば時速20キロ近くの速度を出すことが可能ですし、これがロードバイクともなればその速度は30~40キロにも達すると言われていますから、

万が一他人と接触する様な事態が起これば、これは最早凶器と呼ぶ他はない代物となってしまうのは明らかですよね。

また、増え続ける自転車の事故を抑制するために「法改正が行われた」との話も耳に致しますから、自転車を運転する側としては、これは非常に気になるお話かと思います。

そこで本日は「自転車事故と道路交通法について!」と題して、最も身近な乗り物『自転車』に関する法律問答をお届け致しましょう。

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自転車の法律上の扱い

冒頭でもお話した通り、自転車と言えば「誰もが気楽に運転出来る、便利な移動ツール」という認識をお持ちの方が殆どでしょう。

事実、自転車は運転に当たって免許を取得する必要もありませんから、街に目を向ければ、ヘルメットを被った幼稚園児が遮二無二ペダルを漕いでいる姿もよく見掛けますし、歩くこともままならないお年寄りが、ヨロヨロと自転車を走らせている姿も目に致します。

しかしながら、そんな自転車について道路交通法は、これを軽車両として扱う旨を明記しており、法令違反や事故が発生した場合には、その規定に則り罰せられることとなっているのです。

また自転車には単なる「自転車」と「普通自転車」という区分があり、普通自転車については「長さ190cm以内、幅60cm以内」であることや、その構造についても一定の規格が設けられています。(国内で販売されている殆どの車両は普通自転車です)

なお、普通自転車の規格に当てはまらないものは、例え「自転車通行可」と書かれた標識のある歩道でも、車道を走行しなければなりません。

因みに近年流行の電動アシスト自転車についても、普通自転車との扱いを受けることになりますが、その出力等には厳格な基準が設けられており、違法改造などによって規定以上のパワーが出る車両については原動機付自転車(所謂、原チャリ)として扱われることになるでしょう。

 

自転車事故について

さて、そんな自転車ですが、これを運転する者が事故を起こした場合にはどの様な扱いを受けることになるのでしょう。

前項でもお話した通り、免許も不要で、購入したその場から乗り回すことの出来る代物であるだけに、事故を起こした際の責任も「軽い」と思われがちですが、これは大きな間違いです。

実は交通事故を起こした際の自転車の扱いは、自動車による事故と殆ど変らないものとなります。

よって被害者が怪我をしたり、死亡した場合には、被害者側より慰謝料や損害賠償金等の請求を受けることになるでしょう。

なお、賠償金額については実際の判例でも1億円を超える賠償命令が下っているケースがありますから、自転車とは言え、その責任は極めて重いものとなっているのです。(賠償額の詳細については過去記事「交通事故の損害賠償について解説致します!」をご参照下さい)

因みに事故を起こしたのが小さなお子さんであった場合でも、両親への監督責任の追及を逃れることは出来ませんのでご注意下さい。

また、ここまでは事故を起こした場合の民事上の責任についてのお話でしたが、人身事故となってしまった場合には加害者に対して刑事責任も追及されることになります。

詳しくは次項で解説致しますが、飲酒運転の場合や信号無視のケースでは懲役刑となる場合もありますし、状況次第では「重過失致死傷罪(5年以下の懲役若しくは禁錮、又は100万円以下の罰金)」に問われるケースもあるでしょう。(詳しくは別記事「過失傷害に関する法律問答をお届け!」にて解説しております)

但し、自転車の場合には自動車運転死傷行為処罰法の適応はないため、悪質な場合でも危険運転致死傷罪に問われることはないはずです。

 

自転車と道路交通法

では続いて、自転車と道路交通法の関係についてお話をして参りましょう。

近年、道路交通法が改正され、「自転車の交通ルール違反に関する罰則が強化された」なんてお話を聞きますが、実はこの法律で定められた自転車への罰則規定は元々軽いものではありません。

 

自転車に関する道路交通法の罰則

そこでまずは、以前から道路交通法に定められた罰則規定の数々を見て行きましょう。

 

飲酒運転

自動車では当たり前ですが、自転車の運転でも飲酒は厳禁です。

違反した場合の罰則は5年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。

 

信号無視

こちらも当然ながら違反行為となり、3月以下の懲役または5万円以下の罰金に処せられます。

 

一時停止無視

「止まれ」の標識や赤点滅信号を無視した場合には、3月以下の懲役または5万円以下の罰金刑となります。

 

歩道の通行

自転車は原則、車道を走るのがルールですから、これに違反した場合には3月以下の懲役または5万円以下の罰金となります。

近年では、自転車が歩道を走れるエリアも増えてはいますが、こうした場所を除いては違反行為となりますのでご注意下さい。

また、歩道を走れる区間でも徐行運転、歩行者を優先することが義務付けられており、これに違反した際には2万円以下の罰金または科料となります。

 

夜間の無灯火走行

夜間、無灯火の自転車の運転は危険極まりないものです。

違反した場合には、5万円以下の罰金となります。

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右側通行

自転車は法律上軽車両の扱いを受けますから、当然道路の左側を通行する義務があります。

これに違反した場合には3月以下の懲役または5万円以下の罰金となるでしょう。

 

スマホでの通話や操作

当然、自転車を運転しながらスマホで通話をしたり、ラインなどの操作を行うのも違反行為となり、5万円以下の罰金というペナルティーを課せられます。

また、ヘッドホンで音楽を聞きながらの走行も同様の罰を受けることになるでしょう。

 

二人乗り

道路交通法では、原則二人乗りは禁止となっています。

そしてこれに違反した場合には、2万円以下の罰金です。

但し、子供を乗せるためのシートを装着した場合には、最大2人まで同乗させることが出来ますが、運転者の年齢は16歳以上でことが要件ですから、中学生などの場合は違反行為となります。

 

横並び走行禁止

自動車を運転している際に、非常に迷惑なのが自転車の横並び走行です。

実は道路交通法の違反行為とされており、2万円以下の罰金または科料というペナルティーを課せられます。

 

自転車横断帯を走行しない場合

交差点などには横断歩道とは別に自転車のマークが描かれた「自転車横断帯」が設けられており、自転車はこのエリア内を走行する義務を負います。

これに違反した場合には、2万円以下の罰金または科料に処せられるでしょう。

 

この様に道路交通法では、自転車に対しても「自動車の場合と変わりのない厳しい罰則」が定められています。

但し、例えこうした違反行為を警察に咎められたとしても、事故でも起こしていない限りは、刑事罰を受ける(公訴される)ことは殆どないのが実情でしょう。

しかしながら、これでは何時まで経っても自転車による事故が減少しないとの指摘から、平成27年に自転車に関する道路交通法について大幅な改正が行われることとなりました。

 

平成27年の道交法改正

この大改正では一定の道路交通法違反を行った自転車の運転手について、自転車運転者講習の受講が義務付けられることとなりました。

こんなお話をすると、「何だ講習を受けるだけか・・・」と思われるかもしれませんが、一回の講習は約3時間にも及びますし、受講費用(5700円)も運転者が負担しなければなりません。

なお、受講を義務付けられるのは、14歳以上で過去3年の間に2回以上違反を犯した者が対象であり、講習への出席を拒否した場合には5万円以下の罰金というペナルティーを課せられることとなります。

因みに取り締まりと対象となるのは

  • 信号無視
  • 通行禁止違反
  • 歩道中での徐行違反
  • 通行区分違反(右側通行など)
  • 路側帯通行時の歩行者の通行妨害
  • 遮断機が下りた踏切への立入り
  • 交差点安全進行義務違反等(自転車横断帯の無視など)
  • 交差点優先車妨害等(直進車の前を右折で横切るなど)
  • 環状交差点安全進行義務違反等(交差点内は徐行が義務)
  • 一時不停止等
  • 歩道通行時の通行方法違反(歩道内で歩行者を優先しない行為)
  • ブレーキの整備不良
  • 酒酔い運転
  • 安全運転義務違反(スマホの操作や通話、傘を差す行為)

以上の14項目です。

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自転車事故と道路交通法まとめ

さてここまで、自転車運転時の事故や道路交通法の規制についてお話をして参りました。

自動車のことを「走る凶器」なんて言い方をしますが、これは自転車にもそのまま当てはめることが出来る表現でしょう。

また自転車の交通事故で厄介なのは、加害者がそのまま逃走するケースが多いという点です。

軽い事故の場合には、被害者側も泣き寝入りしてしまうパターンも多い様ですが、自転車を人にぶつける様な輩は必ず再び事故を起こすものですから、勇気を出して警察を呼ぶようにしましょう。

なお、警察が来るまでの間に加害者が逃走した場合に備えて、防犯登録シールをスマホなどで撮影しておくのが得策かと思います。

近年の自転車を運転する者たちのマナーの悪化は目に余るものがありますから、更なる罰則の強化を図り、自転車による事故の無い世の中を実現して頂きたいものです。

ではこれにて、「自転車事故と道路交通法について!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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