過失傷害

 

人間誰しも、ちょっとした不注意から人に迷惑を掛けてしまうことがあるものです。

気付かずに人の足を踏んでしまったり、向こう側に人が立っていることを考えず、思い切りドアを開けてしまったりと、こうした経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

もちろん、「うっかり」をしてしまった際には、誠心誠意の謝罪をするしかないでしょうが、もし相手が怪我をしてしまった場合には、謝るだけでは済まない場合も出て来ますよね。

そこで本日は「過失傷害に関する法律問答をお届け!」と題して、不注意から人に怪我をさせてしまった場合の法律知識をご紹介してみたいと思います。

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過失による怪我

冒頭でもお話した通り、人間である以上は「うっかり」は避けられないものがありますが、人を傷付けてしまった以上は謝るだけという訳にも行きません。

そして我が国の刑法では「過失で他人に怪我を負わせた者を罰する罪」が大きく分けて4種類存在していますので、以下で詳しく解説して参りましょう。

なお、相手に傷を負わせたのが過失(うっかり)ではなく、故意(わざと)であった場合には、当然ながら「傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)」や「殺人罪(死刑又は無期懲役、若しくは5年以上の懲役)」が適応されることになります。

また本記事では刑事上の責任にスポットを当てていますが、これに加えて民事上の責任が問われる(損害賠償を請求される)可能性がある点もご注意下さい。

 

過失致死傷罪

まず最初にご紹介するのが、最も罪の軽い過失傷害に関する罪です。

その罰則の内容は30万円以下の罰金又は科料と非常に軽い上に、被害者が告訴(訴え出た)した場合のみ成立する親告罪となっています。

こんなお話をすると「それは罰が軽過ぎるのでは?」というご意見も聞えて来そうですが、過失致死傷罪は極々過失の度合いが少ない事件でしか適応されないのが特徴です。

例えば、歩いている途中に誤って小石を蹴飛ばしてしまい、飛んだ石が人に当たってしまったケースなどがこれに当てはまるでしょう。

但し、通常の注意を払っていれば起きるはずのないシュチエーションでの事故については、以下の更に重い罪に問われる可能性があります。

 

重過失致死傷罪

過失致死傷罪よりも更に重い罰を課せられるのが、こちらの重過失致死傷罪となります。

因みに罰則は、5年以下の懲役若しくは禁錮、又は100万円以下の罰金です。

但し、ここで難しいのは「何をもって過失と重過失を区別するか」という点になるでしょう。

この点について判例は、「事故を起こした者が、事前に人を傷付ける可能性があることを把握していたか、否かである」としています。

よって、道を歩いている際に石が転がっており、「もしかしたら人に当たるかもな・・・」なんて考えながら石を蹴ったのであれば、ここに「重過失あり」との判断が下されるでしょう。

なお、重過失致死傷罪との認定を受ける代表例が自転車による事故です。

自転車に乗る以上は「運転の仕方次第で、他人に怪我を負わせるリスクがあることを認識しているはず」ですから、事故は自ずと「重過失あり」との判断となります。

また、落とし穴を使ったドッキリなどで人に怪我をさせた場合にも重過失となる可能性が高いですから、「下手したら怪我するかも」と予想出来る行為は全て当てはまると考えるべきでしょう。

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業務上過失致死傷罪

続いてご紹介するのが業務上過失致死傷罪です。

「業務上」と聞くと、仕事をしている中で発生した事故というイメージを描いてしまいますが、法律がいう「業務」は仕事だけに限りません。

実は一昔前まで、自動車事故で人に怪我をさせてしまった場合には、ほぼ全てのケースで業務上過失致死傷罪が適用されていました。(現在では次項でご紹介する過失運転致死傷罪が適用されます)

そして、日曜日のドライブや子供の送り迎えなど、完全にプライベートで発生した事故についても「業務」とみなされていたのです。

つまり法律が言う「業務」とは、『反復継続される危険性が高い行為』のことであり、事故を起こせば確実に人を傷付けることが明確で、毎日ではないにしろ反復される自動車の運転は全て「業務」と判断されていました。

因みにその罰則は、5年以下の懲役若しくは禁錮、又は100万円以下の罰金となります。

但し先程も申し上げた通り、現在では自動車による事故は除外されていますから、工事現場で通行人に怪我をさせてしまった場合や、医療ミスを起こしたケースにて適応されることが多いでしょう。

 

過失運転致死傷罪

そして最後にご紹介するのが、過失運転致死傷罪という罪です。

この犯罪は平成25年に施行された「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下 自動車運転死傷行為処罰法)」にて規定される『出来立てホヤホヤ』のものとなります。

過失運転致死傷罪と聞いて『危険運転致死傷罪とは違うの?』と思われた方も多いかもしれませんが、実は危険運転致死傷罪も同じく自動車運転死傷行為処罰法にて規定されている犯罪です。

この法律が施行される以前は、飲酒運転の加害者に対しても業務上過失致死傷罪が適応されており、「これでは罪が軽過ぎるのでは?」なんて議論がしきりに行われていました。

こうした世間の声に応えて危険運転致死傷罪が誕生しますが、「危険運転ではないにしても、より交通事故に関する罪を重くすべし」との世論から自動車運転死傷行為処罰法が施行され、同時に危険運転致死傷罪も、この法令に組み込まれることになったのです。

なお、過失運転致死傷罪の罰則は7年以下の懲役もしくは禁錮、又は100万円以下の罰金と、業務上過失致死よりかなり厳しいものとなっています。

因みに危険運転致死傷罪については、別記事「危険運転致死傷罪について解説致します!」にて詳細な解説を行っておりますので、そちらも是非ご参照下さい。

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過失傷害まとめ

さてここまで、過失で人を傷付けてしまった場合の法律知識を解説して参りました。

例え「うっかり」とは言え、人を傷付けてしまった以上は、時として社会復帰が困難な程の罰が与えられる可能性があることをご理解頂けたことと思います。

また我が国の法律では、行為の危険度が上がる毎に、そして加害者の過失の度合いが上がる毎に、罪の重さを絶妙にコントロールする仕組みとなっていますから、これはなかなか良く出来たシステムとも言えるのではないでしょうか。

例え自分に悪気はなくとも罪は罪ですから、他人に充分な気遣いをしながら、日々の生活を送って行きたいものです。

ではこれにて、「過失傷害に関する法律問答をお届け!」に関する記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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