業務妨害とは

 

ニュース番組などを見ていると、実に様々な事件・事故が報道されています。

特に近年では、非常に凶悪な事件も普通に発生していますし、お客がお店の店員に絡むなど、一昔前までは考えらえなかった様な事件も増えている様です。

なお、こうした報道を見ていると「警察は傷害の容疑で取り調べを行っています」と言った、様々な犯罪の種類がアナウンスされますが、そんな罪の中でも最も発生件数が多いのが「業務妨害」という犯罪であると言われています。

確かに、先程例に挙げた「店員に絡む」という行為は間違いなく業務妨害罪となるでしょうし、時には「爆破予告」なんていう犯罪でもこの罪で犯人が逮捕されているケースがありますから、『どうしてこれが業務妨害なの?』と首を傾げてしまうことも多いはずです。

そこで本日は「業務妨害とは?という疑問にお答えします!」と題して、偽計業務妨害罪や威力業務妨害罪などについて解説してみたいと思います。

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業務妨害を罰する法律

では早速、業務妨害罪についてご説明して行こうと思いますが、実はこの犯罪には大きく分けて、偽計業務妨害罪や威力業務妨害罪という2種類が存在しています。

そこで本項では、この二つの罪について各々解説を加えて行きたいと思います。

 

偽計業務妨害罪

まずは偽計業務妨害(きけいぎょうむのうが)という罪からお話を始めましょう。

最早、報道番組などですっかりお馴染みのこのワードですが、法律としては刑法233条に規定されている罪となります。

刑法の文言を見てみると「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損(きそん)し、又はその業務を妨害した者」を罰すると書いてあるのですが、ここでは少々解説が必要でしょう。

最初に気になるのは「人の信用を毀損」という部分になるかと思いますが、ここでいう「信用」とは『経済的な評価』を意味します。

なお、他人の信用を傷付けるという意味では、刑法230条の「名誉毀損罪(3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金)」と似ていますが、名誉毀損が「Aさんは不倫をしている」等の人格に係る評価を傷付ける罪であるのに対して、

233条では「Aさんのお店は人の食べ残しを他の客に提供している」と言った、本人の経済活動に対する攻撃に適応されることとなっているのです。

そして次のポイントとなるのが「どんな手段を用いて信用を傷付けるか」という点となりますが、これは「虚偽の風説」や「偽計」となりますから、事実に基づかない嘘や噂、誤った情報などを広めるといった方法が対象となり、これを用いて業務を妨害すれば偽計業務妨害罪となります。

因みにこちらの刑法233条では、条文の前半の「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し」という部分に基づいた信用毀損罪という犯罪についても規定していますから、一つの条文にて「信用毀損罪」と「偽計業務妨害罪」の2つ罪を定義していることになるでしょう。

また条文には「人の信用を」との表現がありますが、この場合の人には個人はもちろん法人も含まれるとされますから、当然「対会社への行為」についても処罰の対象です。

罰則については信用毀損罪・偽計業務妨害罪共に3年以下の懲役又は50万円以下の罰金と定められています。

 

威力業務妨害罪

前項の刑法233条に対して、刑法234条では「威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による」と記されています。

よって、「虚偽の風説を流布し、又は偽計」という手段が『威力』に代わっても、個人や法人の経済活動の評価を傷付けたり、業務を妨害すれば罰則の対象ということになる訳です。

なお、違反した場合の罰則については、偽計業務妨害罪と同じ3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となります。

さて、ここで問題となるのが『威力とは一体何なのか?』ということになるでしょう。

ここでいう威力とは、相手の業務を妨害するに当たって、加害者が直接行う行動全般を意味することとなります。

つまり、店先などで暴れたり、暴言を吐いて騒ぐ行為はもちろん、いたずら電話を掛けたり、スパムメールを送り付けるなどの手段も「威力」に該当すると判断されるのです。

そして更に判りやすくご説明するならば、「情報を用いて業務を妨害する以外の全て行動」が威力とみなされることとなります。

 

業務妨害の要件

前項までの解説にて、偽計業務妨害罪や威力業務妨害罪の違いについてご理解頂けたことと思いますが、本項ではこの2つの罪の成立要件などについて解説して行きたいと思います。

まず前提となるのが、これらの業務妨害罪は原則「故意」に行われた行為しか、罪に問われないということです。

よって飲食店で不注意から店員さんにぶつかって、料理を床にぶち撒いてしまった場合などには、この犯罪は成立しないこととなります。

また、もう一点注意が必要となるのは、この法律が言う「業務」とは、経済活動だけに限らないという点となります。

例えば、お葬式や結婚式、入学式や卒業式、お祭りに文化祭などの行事を妨害する行為を行った場合にも、業務妨害罪は成立するのです。

更には警察の業務にも適応される可能性がありますから、「●●駅に爆弾を仕掛けた」なんて嘘の犯罪予告などを行った場合には、警察に不要な警備をさせたという理由で犯罪が成立することもあるでしょう。

なお業務妨害罪に「未遂」はありませんから、「妨害をしようとした」というだけでは罪に問われることはありません。

因みに、この業務妨害罪は親告罪ではありませんから、業務妨害を行っている現場を警察官に発見されれば、その場で逮捕となる可能性もあります。

こうして業務妨害罪の成立要件を見て行くと、会社やお店の営業、そして式典などの邪魔をした際には、殆どのケースで業務妨害罪が成立してしまうことになりますから、

ニュース番組などで「業務妨害罪の疑いで逮捕されました」という報道の数が多いのも、なるほど納得と言ったところでしょう。

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業務妨害の事例

では最後に、「これまでどんな行為が業務妨害罪の適応を受けて来たのか」を見て行きましょう。

 

飲食店での激し過ぎるクレーム

店員さんなどに粗相があれば、思わずクレームを言いたくなってしまうのは当然ですが、あくまでもやり過ぎは不可です。

相手が謝罪しているにも係らず、大声で怒鳴り散らしたり、他のお客さんが逃げ出すような行動を行えば、当然処罰の対象となります。

 

ネット掲示板への誹謗中傷の書き込み

「某ハンバーガーショップの肉にはネズミの肉が使われている」なんて都市伝説がありますが、こうした根も歯もない噂を不特定多数が閲覧するネットの掲示板などに書き込めば、当然ながら偽計業務妨害罪となります。

但し、本当に虫が混入していたなどの事実があった場合には、「偽計」とはなりませんし、SNS等で極限られた人数(数人)に噂を広める分には犯罪とはなりません。

 

卒業式での国歌斉唱拒否

これは非常に有名な判例となりますが、卒業式での国歌斉唱を拒んだ教師が威力業務妨害にて処罰されています。

 

いたずらデリバリー

嫌がらせ手段の一つとして行われることがあるのが、この「いたずらデリバリー」です。

こちら手法は嫌がらせをしたい相手に、「ピザ10枚」なんていう非常識な偽オーダーを行うことを指しますが、これは完全に業務妨害行為となるでしょう。

但し、嫌がらせをされた相手(品物が届いた相手)ではなく、偽の注文を受けたデリバリー業者しか、訴え出ることが出来ないのがルールです。

 

店先での花火

コンビニの駐車場などで、花火をして遊ぶ「柄の悪い若者」も存在する様ですが、こちらも罪に問われることになるでしょう。

また、こうした行為を行った者は「店の営業を邪魔するつもりはなかった」なんて言い訳をするのが常ですが、ここで気になるのは「業務妨害罪は過失では成立しない」という犯罪の成立要件の問題です。

確かにこの場合、「営業を妨害するために花火を行ったか、否か」を証明するのは難しいものがありますが、花火をするという行為自体を「過失」と認定するには無理がありますから、やはり罪を逃れることは出来ないでしょう。

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業務妨害とは?まとめ

さてここまで、業務妨害罪についてお話をして参りました。

解説をお読みになってお判りのこととは思いますが、この犯罪の特徴は「ほんの出来心のつもり」や、「軽い腹癒せと考えて行った行動」が、罪に直結してしまうという点です。

それ故に逮捕者が非常に多い罪となっている訳ですが、逆を返せば「人としてのモラルが問われる罪」とも言いかえることも出来るでしょう。

また、業務妨害罪はもう少しエスカレートすると、「脅迫罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)」や「器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)」が適応される可能性もありますから、頭に血が上りやすい方は充分にご注意頂ければと思います。

因みに、業務妨害罪は刑法上の罪ですが、同時に民事訴訟による損害賠償請求を受ける可能性もあります。

その上、民事訴訟の場合には例え過失であっても賠償命令が下りますから、会社や店先ではくれぐれも慎重な行動を心掛けたいところです。

ではこれにて、「業務妨害とは?という疑問にお答えします!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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