飲食店のトラブル

 

一歩街に足を踏み出せば、所狭しと軒を連ねているのが飲食店ですよね。

ひと昔前までは、中華料理に焼き肉、レストランや居酒屋など限られた種類の店舗しか見掛けませんでしたが、

現在ではファミリーレストラン等のチェーン店から、味自慢のラーメン店、世界各国の料理を提供するお店に、オーガニックフードを扱う料理店まで、ありとあらゆる食べ物を気軽に食することが出来るようになりました。

しかしながら非常に便利になった反面、「お客さんVSお店」、「お客さんVSお客さん」という飲食店を舞台にしたトラブルの数も急増していますから、読者の方の中にも「飲食店で酷い目に遭った」という経験をお持ちの方も少なくないはずです。

そこで本日は「飲食店のトラブルに関する法律問答をお届け!」と題して、レストランや居酒屋などでありがちな揉め事についての法律上の解釈をお話して行きたいと思います。

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飲食店で発生する様々なトラブル

さて、一言で「飲食店で起こり得るトラブル」と言っても、その態様は実に様々なケースがありますので、以下ではその代表例を挙げながら解説をして行きたいと思います。

 

迷惑な客

飲食店で食事をしている際に非常に迷惑なのが、大声で騒いだり、スマホの動画を大音量で再生したりする厄介なお客さんたちです。

お店によっては店員さんが注意するといった光景を目に致しますが、相手が「柄の悪い方々」だったりした場合には、見て見ぬフリを決め込むケースも多いでしょう。

なお法律上、こうした迷惑行為が度を越したものであった場合には「威力業務妨害罪(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)」の罪に問われる可能性があります。

また、注意を受けた腹いせにテーブルを壊しせば「器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)」、店員を脅す様な発言があれば「脅迫罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)」が適用される可能性もあるでしょう。

 

予約キャンセル

続いてご紹介するのが、レストランなどの予約をキャンセルした時の問題です。

人気店ともなれば、何か月も前に予約をしておかねば席が確保出来ないケースもありますが、急用が入ってしまったり、病気になってしまうなどの事情で当日お食事に行けない場合もありますよね。

もちろん、数日前のキャンセルであればお店も笑って許してくれるのが常ですが、当日にドタキャンなんて事態になれば、キャンセル料を巡ってトラブルに発展するケースもあるでしょう。

お店の予約は法律上、お客さんとお店の間で締結された「契約」と解釈されるものとなりますから、「当日のキャンセルは料金の50%を頂きます」などの条件を事前に店側が提示していた場合には、その取り決めに従ってキャンセル料(違約金)の支払い義務が発生することになります。

また、例え事前にキャンセル料の提示がなされていなくとも、既にお店が食材を仕入れてしまった場合や、他のお客さん予約を断っていたケースでは、同じくキャンセル料の支払い義務が生じることになるでしょう。

但し違約金の支払い義務はあっても、「予約したコースの2倍の金額を支払え!」なんていう法外な請求は認められません。(事前にキャンセル料を提示していた場合も同様)

 

オーダーミス

お店が混雑している時などに、よく発生するのがオーダーミスの問題です。

注文していたのとは別の料理が運ばれて来たり、頼んだはずの料理が出て来ないなんてことは、しばしばあるでしょう。

もちろん、料理が出てこない場合については、代金を支払う義務はありませんが、問題は間違って運ばれた料理を食べてしまったケースとなります。

実は料理のオーダーについても、「お客の注文に対して、お店が料理を提供する」という契約関係があると解釈されることになりますから、食べる前であれば「店側の債務不履行(注文された料理を提供する義務の違反)」でキャンセルが可能です。

しかし、間違って運ばれて来た料理を食べてしまった場合には、「お店の債務不履行を容認した」との解釈が成り立つことになるので、キャンセルは厳しいでしょう。

ただ、『それでも納得が行かない!』という方に関しては、「違う料理だとは気付かずに食べてしまった!」と主張することも可能ですが、見た目で明らかに違う料理と判る時には、大人しく料金を払うのが得策かと思います。

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髪の毛や異物

近年、マスコミ報道などで頻繁に耳にするのが食品への異物の混入ですが、飲食店で料理を注文した際にも、時折、髪の毛やビニール片が入っていることがありますよね。

通常は店員さんに指摘をすれば、新しい料理に交換して貰えるものですが、これは「提供した料理に欠陥があったので、新しい商品と交換が行われた」と意味合いになります。

但し、ここで問題となるのが「交換しただけでは済まされない欠陥」であった場合となります。

つまり、混入していた異物が石で歯が欠けてしまった場合や、食中毒の症状が出てしまった場合です。

もちろんお店側には、提供した料理について責任(製造物責任)がありますから、混入した異物と症状に関連性が認められれば、お客が負った損害を賠償しなければなりません。(治療費や入院費など)

なお、お客の側は治療費が掛かったことや、病気・怪我を負った証拠を示さなければなりませんから、医師の診断書や医療費の領収証などを保管しておく必要があるでしょう。

但し、「サラダに虫が入っていて、それ以降は生野菜が食べられなくなった」などの精神的な損害については、立証が非常に困難であるため賠償が受けられない可能性が高いですし、「貝の身の中に真珠が入っていて、歯が欠けた」等の店側の落ち度が少ない事例に関しては、充分な賠償金を受け取れない可能性があります。

 

会計間違い

食事が終わり、お店を出る際には「お会計」というイベントが待ち構えていますが、ここでも様々なトラブルが発生します。

例えば、自分が注文した覚えのない料理が会計に含まれており、必要以上のお金を払ってしまったというケースがこれに当たるでしょう。

その場で気が付けば、店員に申し出ることも可能ですが、一端家に戻ってしまうと「果たして返金してもらえるのか?」と不安になってしまうものですよね。

もちろん時間が空いてしまうと、お会計を担当した店員さんの記憶も曖昧になりますので、交渉が難航する可能性も高まりますが、今時の飲食店の多くは注文の履歴を保存しているはずですから、後日でも精算に応じてもらえる可能性が高いと思われます。

なお、お店が意図的に高額請求をしている場合には、詐欺罪が成立する可能性も出て来ます。

また反対に、お店からの請求額が少な過ぎるケースもありますが、こうした場合にはお店側の誤りをしっかり指摘し、正しい金額を支払うのが義務です。

これを怠り、意図的に安い会計を済ませた場合には、お客さんの方が詐欺罪に問われる可能性が出てきます。

 

無銭飲食

食い逃げを「経験済み」という方は数少ないでしょうが、飲食店の方にとっては非常に大きな問題であるかと思います。

法律に詳しい方はご存じかもしれませんが、実はこの「食い逃げ」を行った者が問われる罪は、窃盗罪ではなく「詐欺罪」です。

但し詐欺罪は成立要件が少々複雑なのが特徴であり、中でも問題なのが「犯人が明確な騙す意志を持って行動していなければならない」という点となります。

よって最初から無銭飲食をしようと企んで、食い逃げに臨んだのであればともかく、普通に食事をしようとしたが、実はお金が足りなかったなんてケースでは、例えお金を払わずに逃走しても罪に問われない可能性があるのです。

お店を経営されている方にとっては、非常に納得の行かないお話であるとは思いますが、これが日本の法律の実情となります。

なお、仮に食い逃げ犯に刑事上の責任が追及出来なくとも、民事上の責任を逃れることは出来ませんから、身分証明書などを確認して、後日法的手段にて代金を回収することが可能です。

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飲食店のトラブルまとめ

さてここまで、飲食店で起こり得るトラブルについての法律的な解釈について、お話をして参りました。

何気なく食事をして支払いを済ませていると、全く気にならないようなことも、こうして一つ一つ見て行くと、様々な側面が見えて来ますよね。

生きている以上、様々なシーンでトラブルが舞い込んで来るものですから、正しい知識を身に付けて的確な対応が行えるようにしておきたいものです。

ではこれにて、「飲食店のトラブルに関する法律問答をお届け!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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