特殊詐欺

 

現在、ニュース番組などで毎日の様に報道されているのが、振り込め詐欺等に関する話題です。

王道のオレオレ詐欺に始まり、架空請求に還付金詐欺など、日々新手の詐欺が増え続けていると言いますから、正に「油断も隙もあったものではない」のが我が国の現状と言えるでしょう。

また、政府や警察も特殊詐欺の撲滅を目指し、様々な努力を行ってはいますが、事件の発生件数こそ減少したものの、被害額については増加を続けているとのデータもありますから、決して気を緩めることは出来ません。

そこで本日は「特殊詐欺とは?身近に潜む犯罪の法律問答をお届け!」と題して、この憎むべき詐欺犯罪についての法律知識をお届けしたいと思います。

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特殊詐欺とは?

近年、報道番組などでよく耳にするのが「特殊詐欺」なる用語となります。

ひと昔前までは、テレビなどでも「オレオレ詐欺」というワードが頻繁に使われていましたが、一時期から「振り込め詐欺」と表現される様になり、今では特殊詐欺と呼ばれることが多いようですが、これら用語の違いは一体何なのでしょう。

そこで本項では、まずこの手の詐欺犯罪の類型についてご説明して行きたいと思います。

 

特殊詐欺

冒頭でもお話した通り、電話などを利用して詐欺を行おうとする者たちの手口は、日々巧妙化、多様化しています。

最初に世間を騒がせたオレオレ詐欺が広く認知され始めると、「借りてもいない借金を取り立てる」といった手口や、「お金を返すのに、保証金の振り込みが必要である」なんて嘘を用いての犯行が増え始めて行きました。

そこで警察は、こうした詐欺犯罪に対して「振り込め詐欺」という名称を付けることにしましたが、その後も「高収入のバイトをするのに登録料が必要である」といったものや、「パチンコ必勝法を授ける」等の詐欺手法が増え続け、振り込め詐欺という定義だけでは収まらない事態となってしまったのです。

こうして経緯から新たに命名されたのが『特殊詐欺』という名称であり、「振り込め詐欺」と、新たに増えた「その他の詐欺」を全てひっくるめた呼称として用いられるようになって行くのでした。

 

振り込め詐欺

前項でお話した通り、特殊詐欺という括りの中の一種に数えられるのが、「振り込め詐欺」なるものです。

そして更に、この振り込め詐欺には大きく分けて4つの類型が存在していますので、以下ではその詳細をご説明して参りましょう。

 

オレオレ詐欺

言わずと知れた振り込み詐欺の代表格が、このオレオレ詐欺です。

ターゲットには高齢者が選ばれることが多く、離れて暮らす息子や孫などに成りすまして電話を掛けて来た犯人が、

「会社のお金を使い込んでしまったので、今日中に補填しなければならない」、「痴漢をしてしまい、示談金が必要」なんて嘘で、現金を指定口座に振り込ませるように誘導して来ます。

 

支払え詐欺

こちらもお馴染みの手口となりますが、インターネットにて「アダルトサイトの有料コンテンツを閲覧した」、「有料出会い系サイトに入会した」など、謂れの無い理由で料金を請求する詐欺の手法となります。

 

貸します詐欺

具体的な件数は少ないものの、多くの方々が騙されているのがこちらの手口となります。

非常に条件の良い融資を申し出て、「審査が有料となる」などの口実でお金を騙し取るのが主な手法です。

 

返します詐欺

税金の還付や、公共料金の過払い分返却などの名目で、被害者に連絡を入れる手法です。

但し、実際に返金するには「事前に保証金を支払わなければならない」なんて理屈の通らない話をして来るのが王道ですが、意外にも騙されてしまう方が多い模様。

話しの入り口が「お金を返す」という意外性が、この手口の「肝」となっている様です。

 

その他の詐欺

特殊詐欺の一部ではありますが、振り込め詐欺には含まれない詐欺が、このジャンルに分類されます。

主な手口としては、

  • 未公開株売ります詐欺
  • 女性を紹介します詐欺
  • パチンコ・スロット必勝法詐欺
  • 高収入アルバイトあっせん詐欺

などがあり、高齢者以外がターゲットとされることが多い様です。

 

因みに特殊詐欺の歴史は意外に古く、最も古いとされている事例は大正4年にまで遡ることが出来るとのこと。

なお、近年の様に一気に被害件数が増えたのは平成11年からのことですから、気が付けば20年近くもこの手の詐欺に日本国民は苦しめられ続けていることになるのです。

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特殊詐欺の罪の重さは

ここまで特殊詐欺の概要について解説して参りましたが、ここで気になるのが「事件の加害者はどの程度の罰を受けるのか?」という点です。

特殊詐欺という名称からも、この手の犯罪が詐欺罪の適応を受けるのは理解出来ますが、実はこの詐欺罪は非常に立証が困難な犯罪として知られています。

詐欺罪の立証

「オレオレ詐欺が犯罪なのは当たり前じゃないか!」とお叱りを受けてしまいそうですが、詐欺罪を適応するには「相手を騙す意思をもって、犯行に及ぶこと」が必要です。

よって、食い逃げなどの場合には、「最初から食い逃げをする気だった場合」には詐欺罪となりますが、『最初はお金を払うつもりだったが、お金が足りなかったので逃げた』という場合には、詐欺の罪に問うことが出来ません。(詳細は別記事「飲食店のトラブルに関する法律問答をお届け!」をご参照下さい)

また結婚詐欺のケースでも、「事業がピンチだからお金を貸して欲しい」と頼んで、これを踏み倒しても、『当初は返すつもりだった』場合には詐欺には当たらないのです。(詳しくは過去記事「結婚詐欺に関する法律問答をお届け!」をご参照下さい)

そして、こうした事例を見て行くと「オレオレ詐欺は大丈夫なのか?」と不安になって来ますが、他人の名を語った段階で相手を騙す気があったのは明白ですし、多くのケースで不特定多数に反復継続して詐欺行為を行われていますから、間違いなく詐欺罪が適応されることになります。

どれくらいの罪に問われるのか

さて、特殊詐欺が詐欺罪に問われることが明白となったところで、「どれくらいの罰を受けるのか?」という点の解説に移りますが、「10年以下の懲役」というのがこの犯罪の罰則となります。

こんなお話をすると、「多くの人からお金を騙し取ったにしては、罪が軽過ぎるのでは?」と思われるかもしれませんが、その点はご安心下さい。

我が国の刑法では、複数の罪を犯した場合は併合罪という罪に問われることとなり、複数の詐欺事件を起こしていた場合には懲役10年の1.5倍にあたる「懲役15年」が最高刑期になるでしょう。

また、詐欺罪の場合は執行猶予が付けられることもありますが、裁判所は特殊詐欺に対して厳しく責任を問う姿勢を貫いていますから、初犯でも実刑となる可能性が濃厚です。

 

特殊詐欺被害者の救済

この様に、加害者には非常に厳しい罰が待っている特殊詐欺ですが、お金を取られた被害者に対しての救済はどうなっているのでしょう。

実はこうした問題に対応するべく、現在では「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律(通称・振り込め詐欺被害者救済法)」という法律が施行されています。

この法律が施行される以前(平成20年以前)は、特殊詐欺の被害に遭った方々が行えることといえば、犯人を相手取った民事訴訟という手段しかありませんでした。

しかしながら、こうした詐欺事件を起こす輩に充分な資力があるはずもなく、結局は泣き寝入りをするしかないのが現実であり、こうした実情を重くみた政府は「振り込め詐欺被害者救済法」を導入することにしたのです。

因みにこの法律が定める被害者救済の手段とは、犯罪に利用されたことが判明した口座を凍結し、被害者にこれを告知するというもの。

そして該当の口座に充分な残高があれば、名乗り出た被害者の被害額に応じて補償を受けることが出来ますが、残高が少なく、他にも被害者が手を上げている場合には、人数で按分という処理の仕方がされます。

なお、この振り込め詐欺被害者救済法は犯罪に銀行口座が利用されたことが法律適応の要件となりますから、振り込め詐欺以外の特殊詐欺のケースでもこの救済制度を利用することが出来るでしょう。

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特殊詐欺まとめ

さてここまで、世間で話題の特殊詐欺について解説を行って参りました。

子供や孫を想う高齢者の心の隙や、「高収入を得たい」という人間の欲につけ込んだ詐欺犯罪は、実に憎むべきものですが、ここまで特殊詐欺が一般化して来た以上、騙される側もそれなりの防御が必要な時期に差し掛かっているのかもしれません。

オレオレ詐欺の場合なら、親族と一定の合言葉を決めておいたり、本人にしか答えられない質問をぶつけてみる(飼い犬の名前を聞くなど)等、ちょっとした努力で被害を未然に防ぐことが出来ますし、

「還付金が手に入る」などの美味しい話はまず有り得ないという警戒意識を常に持っていれば、かなりの確率でトラブルを回避出来るはずです。

特殊詐欺の撲滅を目指すのであれば、取り締まりを強化するのではなく、「騙される者がいない社会を作る」ことが何より重要なのではないでしょうか。

ではこれにて、「特殊詐欺とは?身近に潜む犯罪の法律問答をお届け!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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