電車の法律

 

通学や通勤、そしてレジャーへと、生活の様々なシーンで利用することとなるのが電車という交通機関です。

安価な料金で、素早く目的地に辿り着くことが出来る電車は、現代人にとって最早無くてはならい交通手段と言えるでしょう。

しかしながら、大勢の人間を一気に乗せて走る電車の車内や、様々な人間が行きかう駅の構内では、日々様々なトラブルが発生しているのも事実です。

そこで本日は「電車の法律知識をお届け致します!」と題して、電車を利用する際に知っておくと非常に便利な法律のお話を届してみたいと思います。

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車内や駅構内で発生するトラブル

電車で発生するトラブルと言えば、最近流行りのチカン冤罪事件などが頭に浮かぶことと思いますが、実はまだまだ多くのパターンが存在しているものです。

そこで本項では、トラブルの内容ごとに法律的な解説を加えて参りましょう。

 

キセル乗車

スイカなどの電子マネーが主流となった現在では、すっかり発生件数も減少している様ですが、一昔前までの電車トラブルと言えば「キセル乗車」が代表的なものでした。

定期券がまだ紙で作られていた時代には、印字された有効期限を改ざんするなどの手口で、運賃の支払いを誤魔化そうとする輩を多く見掛けたものです。

こうしたキセル乗車は、鉄道運行に関する規定を定めた鉄道営業法18条、19条の違反行為となり、鉄道会社は通常の運賃の2倍の額を請求出来るというルールになっています。

また、特に悪質なケースでは警察に引き渡されることとなり、詐欺罪などで起訴される可能性もあるでしょう。

なお読者の方の中には、「キセル乗車を咎められたが、誠心誠意謝罪することで許してもらえた」という経験をされた人もいるかもしれませんが、鉄道営業法上のキセルの罪は親告罪となっているため、法による裁きを与えるか否かは、鉄道会社の意思に任されているのです。

 

強引な割り込み

朝の通勤ラッシュの際などには、到着する電車を待っているホームに長蛇の列が出来ることも珍しくありません。

そして、こうしたシーンで時折登場するのが、電車待ちの列に割り込もうとする不届き者たちです。

もちろん、そんな厄介者に対しては厳重に注意を行うのが筋ですが、中には割り込んだおきながら『逆切れ』を起こす輩も存在します。

実はこうした強引な割り込みをしておきながら、大声で怒鳴るといった行為は、刑法上の軽犯罪法違反となります。

軽犯罪法違反は、「1日以上30日未満の拘留又は1000円以上1万円未満の科料」という軽い罰則しかありませんが、罰せられた場合には『広い意味での前科』として扱われますから、サラリーマンなどの場合にはしっかりと社会的な制裁を受けることになるでしょう。

※軽犯罪法の詳細については、過去記事「軽犯罪法違反について解説致します!」をご参照下さい。

 

満員電車への無理な乗り込み

そして満員電車に乗り込む際に発生するトラブルと言えば、押した、押されたなどの乗客同士のトラブルとなります。

もちろん、「押されて不愉快だった」「足を踏まれた」程度のことであれば、当人同士で決着を付ければ済むことですが、『転倒して怪我をした』なんて場合には当然法律上の問題が発生することになるでしょう。

満員電車という押し合い状態の中で、誰かに怪我を負わせた加害者が問われる罪は「過失傷害罪(30万円以下の罰金又は科料)」となりますが、無理やり車内に乗り込むために、ダッシュで助走を付けてタックルをした場合などには「重過失致死傷罪(5年以下の懲役若しくは禁錮、又は100万円以下の罰金)」に問われる可能性もあります。

更に攻撃を加えるつもりで、故意に相手を押した場合などには、傷害罪や殺人未遂罪の適応を受ける可能性も有り得るでしょう。

※過失傷害については別記事「過失傷害に関する法律問答をお届け!」にて詳しく解説しております。

 

駅員とのトラブル

また、朝の殺気立った駅のホームなどでは、駅員に対してケンカを吹っかける輩も存在します。

単に電車の遅延に対してクレームを付けるくらいであれば問題はありませんが、駅員の胸ぐらを掴むなどの行為に及んだ場合には「威力業務妨害罪(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)」に問われる可能性が出て来るでしょう。

なお、こうしたお話をすると「文句を言う分には問題ないのだな」と思われるかもしれませんが、公共の場で大声で暴言を吐けば軽犯罪法 に抵触する可能性がありますし、「殴るぞ!」なんて言えば脅迫罪が成立することもありますから、くれぐれもご注意下さい。

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線路への立ち入り

駅のホームで電車を待っている際に、うっかり線路内に物を落としてしまうことがあります。

こんな場合には、駅員さんに声を掛け、マジックハンドなどで落し物を取ってもらうの通常ですが、時折「自ら線路に飛び降りる」という迷惑な方もいらっしゃいますよね。

こうした線路内への立ち入りは鉄道営業法37条違反となり、10,000円未満の科料に処せられることになります。

また、電車が駅に近付いてるタイミングの場合には、更に罪の重い「往来妨害罪(2年以下の懲役または20万円以下の罰金)」や「往来危険罪(2年以上の有期懲役)」に問われる可能性もあるのです。

更に線路に立ち入ったことにより、電車のダイヤに大きな影響が発生した場合には「威力業務妨害罪(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)」が成立した上、高額な損害賠償を請求されることになるでしょう。

 

緊急停止ボタン

前項でお話した「線路内への立ち入り」などを見掛けた場合には、事故を防ぐためにホームに設置された「停止ボタン」を押す必要があるでしょう。

また、電車の車内にも同じく緊急停止ボタンが付いていますので、走行中の車内で事件が発生した場合にも、これが押されることがあるかと思います。

もちろん緊急停止が必要な場合には、このボタンを押した者が罪に問われることはありませんが、これが「いたずら」だった場合には、当然ながらそれなりの責任を負わなければなりません。

因みに、こうした行為をした際に問われる可能性がある罪は「威力業務妨害罪(3年以下の懲役又は50万円以下の罰金)」となり、鉄道会社からの損害賠償請求も覚悟するべきです。

 

電車への飛び込み

電車を利用している際に、時折耳にするのが「人身事故が発生しました」というアナウンスなのではないでしょうか。

もちろん、ホーム内に侵入して来た電車にお客が接触したなんてケースもあるでしょうが、「自ら命を断つべく、電車に飛び込んだ者の仕業」である場合も少なくありません。

当然、こうした行為は道義的にも許されるものではありませんが、電車を利用する他の乗客が被る迷惑は計り知れないものがありますから、「人として絶対に避けるべき行い」と言えるでしょう。

なお、天国に旅立った本人は気楽なものかもしれませんが、鉄道会社の損害賠償請求は残された家族へと行われることも覚悟しておくべきです。

こんなお話をすると「相続放棄すれば良い!」なんて反論もあるかもしれませんが、家族が起こした不祥事について「自分が責任を負う!」という遺族の方は非常に多い様ですし、相続放棄をすれば自宅などの資産を家族に残すことも不可能となります。

※詳しくは「自ら命を絶つ前に知っておくべき法律知識」の記事をご参照下さい。

 

痴漢・盗撮

そして最後にご紹介するトラブルが、近年増えつつある痴漢や盗撮に関するものとなります。

まず盗撮については、駅や電車の車内という公の場で行われる犯罪となりますから、各都道府県が定める「迷惑防止条例(行政によって異なるが罰金や懲役刑もあり)」にて罰せられることとなるでしょう。(のぞきや盗撮に関する詳細は別記事「プライバシーと法律について考えます!」をご参照下さい)

また、痴漢に関しても少々相手の身体に触れた程度のものなら、盗撮と同じく迷惑防止条例の適応を受けますが、脅し文句を告げたり、凶器をチラつかせた場合には「強制わいせつ罪(6ヶ月以上10年以下の懲役)」に問われる可能性もあります。

但し、最近では被害者の誤認や悪意による冤罪事件も増加傾向にありますので、この点には大いに注意が必要でしょう。

別記事「チカン冤罪から逃れる方法を解説!」では、痴漢に間違われた際の対処方法について詳しく解説しておりますので、ご心配な方は是非ともこちらの記事をご確認頂ければと思います。

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電車の法律知識まとめ

さてここまで、電車の車内や駅のホームで発生し得る法律上の問題について解説を行って参りました。

人間が二人以上集まれば、必ず争いが起きると言われていますから、電車の車内や駅構内は正に「恰好のトラブル発生源」と言える訳です。

こんなお話を聞くと、電車を利用するのが少々恐ろしくもなって来ますが、通勤・通学をする上で避けては通れない道ですから、出来る限りの法律知識を身に付け、緊急事態に備え頂きたいと思います。

ではこれにて「電車の法律知識をお届け致します!」の記事を締め括らせて頂きたいと思います。

 

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