自ら命を絶つ

 

近年、その数を増やし続けているのが、自ら命を絶ってしまう方々です。

「恋に破れて」、「大切な人の後を追って」、「人生に絶望して」と、その理由は様々でしょうが、例えどんな理由があろうとも、その行為を肯定することは出来ませんし、美化することもあってはならないことでしょう。

人はどんなに抗っても、いずれは「あの世に旅立つ宿命」にありますし、生きていたくても、「生きられない方々が大勢いる」のが現実なのですから、命を無駄にした上、人に迷惑を掛ける行為は絶対に踏みと止まるべきです。

そこで本日は「自ら命を絶つ前に知っておくべき法律知識」と題して、法律という側面から、命を絶つ行為がどれだけ他人に迷惑を掛けるのかを解説してみようと思います。

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自ら命を絶つのは犯罪か?

ネットの掲示板などを見ていると、時折見掛けのが「自ら命を絶つのは犯罪なのか?」という類の質問です。

実は法学上、この問いには二つの説が存在しています。

一つ目は「自ら命を絶つことは間違いなく違法行為であるという説」であり、亡くなった者に罰則がないのは、亡くなることで責任が免除されているという考え方です。

またもう一方の説は、「違法行為ではない」としてはいるものの、それはあくまで『犯罪として要件を満たさない』からという理由によるもので、どちらの説に立ったとしても「犯罪である」若しくは「限りなく犯罪に近い行為である」という解釈になるでしょう。

 

協力した者も罰せられる

この様に亡くなった本人が罰せられることは無いものの、法律上も決してプラスには解釈されない「自ら命を絶つ行為」ですが、これを補助した者には厳しい罰が用意されています。

まず、命を断つことを勧めるような言動等を行った者は、教唆罪(きょうさざい)という罪に問われることとなり、6ヶ月以上7年以下の懲役、または禁錮刑に処せられる可能性があるでしょう。

また当事者に対して道具を提供したり、行為に適したスポットを教えたりするだけでも、幇助罪(ほうじょざい)という手助けした罪で教唆罪と同様の刑罰に処せられるのです。

なお、命を絶つ者に「頼まれて手を下す」ことも嘱託殺人罪という犯罪ですし、「こちらから命を絶って上げようか」と提案して、事に及ぶ行為も承諾殺人罪と呼ばれる犯罪行為となります。(二つを合わせて同意殺人罪と呼びます)

つい先日も、嘱託殺人罪の判決を下された加害者に対して、納得のいなかい被害者の遺族が高額の損害賠償を求める裁判(民事訴訟)を起こしたことが話題になりました。

この事件に対して、「頼まれたて犯行に及んだのに、何だか加害者が可哀想」との意見も耳に致しますが、残された遺族の気持ちを考えると、とても加害者に同情する気にはなれません。

自ら命を絶つという行為は、家族や身の回りの人間にも、大きな傷みを与える行為なのです。

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道連れは立派な犯罪

自ら命を絶つ行為のパターンとして、昔から知られているのが「心中」と呼ばれるものです。

「道ならぬ恋に落ちたカップルが・・・」、「世を儚んだ夫婦が子供を道連れに」なんてお話も時折耳に致しますが、首謀者が生き残った場合には当然罪に問われることとなります。

この場合についても、大人同士が合意の上で行為に及んでいるのであれば、前項でお話した嘱託殺人罪や承諾殺人罪といった「同意殺人罪」が適応されることとなるのが原則ですが、単なる殺人罪が適応されることもあるでしょう。

例えば「後から自分も・・・」と約束して、相手が命を絶ったのにも係らず、自分は思い止まってしまったというケースでは、一切手を下していないにも係らず「殺人罪」が適応されています。

また共に命を絶つ相手が、判断能力の無い幼い子供であったり、認知症を患ったお年寄りであった場合には、例え合意があったとしても、生き残った首謀者は確実に殺人罪に処せられるでしょう。

「世を儚んで共に命を絶つ」という話しにロマンティックなイメージを抱く方もおられるでしょうが、それは幻想に過ぎません。

 

遺族が直面する現実

そして、自分の都合で命を絶った方の親族や周囲の方々は、その後様々なトラブルに巻き込まれて行きます。

例えば走行中の電車へダイブした場合には、鉄道会社から残された家族に対して損害賠償が請求されることは有名なお話です。

請求される金額については、あまり語られることがありませんが、数百万円というのが相場となっており、都心部でラッシュの時間帯に事に及べば、1000万円近い賠償命令が下ることもあるでしょう。

こうした遺族への損賠賠償の請求に対して「非人道的だ」なんて非難の声もありますが、1人の身勝手な行動によって数千、時には数万員の乗客が迷惑を被る訳ですから、再発を防止するためには「止むを得ない措置」なのだと思います。

また遺族が相続放棄をすれば、賠償金の支払い義務を逃れられるかもしれませんが、「家族が起こした問題の責任を執る」というご家族も多く、自身の軽率な行動が「大切な家族を貧困のどん底に落とす」という結果を招くことになるのです。

なお電車の場合以外でも、アパートや賃貸マンションで事に及べば、大家さんからの損害賠償は逃れることが出来ませんし、親族が所有する物件ならば、経済的な価値は著しく低下することとなります。

そして山奥で命を断つ行為も、捜索に要した費用は親族に請求されますから、どんな方法を選択しても家族や周囲の人間には迷惑でしかないのです。

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自ら命を絶つ行為まとめ

さてここまで、自ら命を絶つと言う行為についての法律知識をお届けして参りました。

本人的には悲劇の主人公のつもりなのでしょうが、「自ら命を絶つ」という行いは、周囲から見れば「迷惑この上ない行為」であることは是非自覚して頂きたいものです。

また、事に及ぶ方の多くの方が「自分には生きる価値がない」なんて考えをお持ちの様ですが、これは「奢り」と言わざるを得ません。

この世に「自分には生きる価値がある」なんて本気で思える方は殆どおられませんし、自分に価値を持たせたいからこそ、日々努力を重ねているのです。

そして価値がないと嘆く方には反対に、「今まで人の役に立つような生き方を、本当にして来たのですか?」という疑問を投げかけてみたくなります。

どうせ無駄に捨てる命であるならば、人のため、社会のために役立つことに、その命を懸けてみては如何でしょうか。

その方が意味もなく他人に迷惑を掛けるよりは、ずっと満足の行く「旅立ち」を迎えられる様な気が致します。

ではこれにて、「自ら命を絶つ前に知っておくべき法律知識」の記事を締め括らせて頂きます。

 

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