軽犯罪法違反

 

真面目に社会生活を送っておられる方にとっては、「自分が犯罪を起こす」なんてことは通常考えられない事態であるかと思います。

そして、万が一罪を犯すとしても交通違反程度が関の山だろうし、今流行の痴漢冤罪でも降り懸かって来ない限り、警察のお世話になることなど有り得ないとお考えのはずです。

しかしながら日本の法律の中には「軽犯罪法」なるものが存在しおり、その規定をじっくり見て行くと、極普通の生活をしていても罪に問われる可能性が充分にあることに気付かされます。

そこで本日は「軽犯罪法違反について解説致します!」と題して、この法律を詳しく解説して行くことに致しましょう。

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軽犯罪法とは

ではまず、「そもそも軽犯罪法とは何か」という点から、ご説明を始めさせて頂きます。

軽犯罪法とは、昭和23年に施行された「治安の維持などを目的とする軽微な犯罪を取り締まるための法律」です。

そして条文においては全部で33種類の行為を禁止する旨が定められており、これに違反した場合には「1日以上30日未満の拘留又は1000円以上1万円未満の科料」という罪に問われることとなります。

こんなお話しをすると「それ程重い罰ではないのね!」なんて思われるかもしれませんが、科料は広い意味では前科と解釈される罪ですし、数日間拘留されれば、会社などに事情が知られる可能性も充分に有り得ますから、決してバカにすることは出来ないのです。

なお、違反行為については次項で細かく解説しますが、警察がその気になればかなりの確率で逮捕されてしまう内容も含まれているため、条文においては「濫用しないこと!」という注意書きがなされています。

また濫用防止という意味で、「逃亡の可能性がある又は住所不定である場合」もしくは「後日下される出頭命令に従わない場合」を除いては、逮捕出来ないルールになっているのです。

よって例え罪に問われることとなっても、自宅がある場合にはその場で解放され、後日、警察や検察に呼ばれるというのが通常の流れとなります。

因みに軽犯罪法においては、犯罪の手助けする行為(幇助)や犯罪を煽る行為(教唆)も違反行為とされていますので、この点にも充分にご注意下さい。

 

軽犯罪法を解説!

では具体的に、どの様な行為が軽犯罪法違反のなるのかを見て行きましょう。

 

空き家に忍び込む行為

近年では廃墟探検などを趣味にしている方も多い様ですが、これは立派な軽犯罪法違反となります。

またヤンキーなどが廃屋のたむろしたり、空き家を秘密基地と称する遊び場にすることも同様ですから、注意が必要でしょう。

なお、廃船などに忍び込むことも禁じられていますから、不法投棄されいる自動車などに乗りこんだりする行為も罰せられる可能性があります。

 

武器を携帯する行為

武器を持ち歩き禁じる法律としては「銃刀法違反」が有名ですが、軽犯罪法でも処罰の対象となります。

また銃刀法違反では、刃渡り6cm超の刃物が規制の対象となるのに対して、軽犯罪法ではあらゆる武器が取締り対象となっているのが特徴です。

よって木刀やバットはもちろん、ハサミやドライバーなどでも取締りの対象となる可能性があります。

もちろん軽犯罪法の条文では「濫用禁止」が謳われていますから、仕事などで工具を持ち歩いている場合に咎められることはないはずですが、深夜に意味もなく徘徊しているケースでは絶好の取り締まり対象となってしまいますので注意が必要です。

因みに条文には「器具を隠して携帯していた者」と記されていますが、手に持って歩いていれば確実に職務質問を受けることになるでしょう。(例え隠していなくても迷惑防止条例違反に問われる可能性が大)

 

建物への侵入が可能な器具を持ち歩く行為

前項と少々似た内容となりますが、建物への侵入に利用出来る器機も規制の対象となります。

バールや金槌などが主な物となるでしょうが、ガラスカッターやヤスリなどでも、罪に問われる可能性があるでしょう。

 

ホームレスをする行為

こちらはちょっと意外かもしれませんが、ホームレスについても規制が存在します。

但し条文には、「働く能力がありながら職業に就く意思を有せず」という一文が入っていますから、身体が不自由であったり、持病を持った者は罪に問われません。

また当然、「ホームレスの罪」ですから、家が有ってプラプラしている人は対象外となります。

 

公共の場での乱暴な発言

軽犯罪法においては公共の場所で、乱暴な言葉を発し、他人に迷惑を掛ける行為が禁じられています。

公共の場という定義ですから、電車やバス、デパートや駅の構内など、規制されるスポットは非常に多いこととなるでしょう。

なお、街中で絡まれた際などには、この条項を憶えておくと大変に便利です。

因みに「殴るぞ!」など発言に対しては脅迫罪(2年以下の懲役又は30万円以下の罰金)が適応され、「バカ!」などの暴言は侮辱罪(拘留又は科料)となる可能性がありますが、軽犯罪法なら「この野郎!」といった乱暴な発言のみでも成立する可能性があります。

 

街灯などを消す行為

今の時代ですと、あまりピンッと来ない規定かもしれませんが、軽犯罪法は街灯を消す行為も禁じています。

また他人の玄関灯や、お店の電飾看板などを消す行為も罰則の対象です。

軽犯罪法が施行された終戦直後の日本は治安も悪く、薄暗い通りも多かった為に設けられた条項であると考えられます。

 

河川等に船などを停泊させる行為

もちろん正式な許可を受けて停泊している船は罰せられませんが、時折川などで見掛ける得体の知れない船は規制の対象となります。

但し、条文には「交通を妨げるような行為をした者」と書かれていますから、邪魔でない場合は罰則の対象とはなりません。

 

非常時に公務員の指示に従わない行為

地震や火災、そして交通事故の現場において、警察官や消防士の指示に従わない行為は軽犯罪法違反となります。

また、事故現場などにおいて警察官や消防士などから手伝いを頼まれ、これを拒む行為も処罰の対象です。

よって火事場などに野次馬として押しかけ、「後ろに下がってください!」といった指示に従わない行為は法令違反となりますのでご注意下さい。

 

延焼の危険がある場所で火気を使用する行為

雑木林や草の茂った河原などで焚火をしたり、ガソリンスタンドや燃料保管庫の近くで花火などをする行為は軽犯罪法で禁じられています。

よって草木が生えた公園等で花火をして遊んだり、バーベキューをする行為は罰せられる可能性がありますので、ご注意頂きたいところです。

 

不注意な投石などの罪

当然、人に石などを投げつけることは犯罪となりますが、「人がいるかもしれない場所」に投げるだけでも軽犯罪法違反となります。

当たれば大怪我をする石やゴルフボールなどはもちろんですが、水風船など危険性の低いものでも罰せられる可能性はあるでしょう。

また条文には「注ぎ、又は発射した者 」と書かれていますから、水鉄砲や窓から飲み物を捨てる行為も取締りの対象です。

なお、万が一に人に当たって怪我などを負わせれば、「過失致死傷罪(30万円以下の罰金又は科料)」が適応される可能性があるでしょう。

 

凶暴な犬などを野放しにした罪

近年ではペットを家族の一員と考える方々も増えて来ていますが、他人に危害を加える可能性がある犬などを放し飼いにした場合には、罪に問われる可能性があります。

なお、実際にペットが他人を噛んでしまった場合などには「過失致死傷罪(30万円以下の罰金又は科料)」が適応されることになります。

 

割り込み等の行為

こちらもご存じの方は少ないと思いますが、「割り込み」も軽犯罪法違反となることがあります。

但し条文には「著しく粗野若しくは乱暴な言動で迷惑をかけ、又は威勢を示して」と書かれていますから、ちゃっかり割り込んだ場合には適応されません。

「オラオラ!」と人を怒鳴り付け割り込んだ場合には、罰則の対象となるでしょう。

 

警官の命令を無視して大きな音を立てる行為

テレビやステレオを大音量で流し、これを警官に注意されたにも係らず、無視を決め込んだ場合には軽犯罪法違反となります。

別記事「嫌がらせに対処する法律知識をお届けします!」では、騒音を起こす嫌がらせに対しては迷惑防止条例などが適応される旨をご説明致しましたが、これには行政が定める騒音基準をオーバーしている必要があります。

それに対して軽犯罪法では、「警官が注意して、これを無視する」だけで罪に問うことが出来ますから、騒音で迷惑を被っている方には非常に便利な法令となるでしょう。

 

警官や自衛隊員等を対象にしたコスプレ行為

「何それ?」と思われるかもしれませんが、もし街中に偽物のコスプレ警官などが徘徊していれば、様々なトラブルが予想されますよね。

よって、こうしたコスプレは原則法令違反となってしまいますから、マニアの方には是非自粛をお願い出来ればと思います。

 

嘘の通報をする行為

近年では「犯罪に巻き込まれた!」と自作自演の通報を行う者が多いと聞きますが、こうした行為は立派な軽犯罪法違反となります。

また、面白半分で「火事だ―!」なんて嘘の通報を行うことも同様に処罰の対象になるでしょう。

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中古品を偽名で販売する罪

リサイクルショップや古本屋さんなどで中古品の買取りを行ってもらう際、氏名や住所を書かされるものですが、ここで偽名を用いる行為は軽犯罪法での処罰の対象となります。

また、近年では利用する方が減っている様ですが、質屋に品物を預入れる際も同様です。

これらの規定は盗品の販売を規制するために設けられいますが、買取りを行う業者には更に厳しい罰則が課せられますから、免許証などの提示が必須となるのは致し方ないことかと思います。

 

怪我人や遺体の通報義務

自分の庭や、所有する地所に怪我人や病人が倒れている場合や、遺体が放置してあるのを通報を行わないことは罰則の対象となります。

もちろん遺体があるのを放っておく人は居ないでしょうが、怪我人などが迷い込んで来た場合には、トラブルに巻き込まれるのを恐れず、即座に通報するべきでしょう。

また、認知症を患ったお年寄りなども通報の対象となることを憶えておいて下さい。

 

遺体の移動

こちらもあまり遭遇する機会のないシュチエーションかもしれませんが、万が一遺体を発見した場合には、決して手を触れずに警察に一報を入れましょう。

 

露出行為

変態さんが得意の露出行為は「公然猥褻罪(6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金等)」や「迷惑防止条例」にて裁かれることとなりますが、お尻や太ももを露出させて、他人に不愉快な思いをさせただけでも軽犯罪法で罪に問われる可能性があります。

よって大切な部分をしっかり隠していたとしても、宴会での裸踊りなどには注意が必要でしょう。

また女性でも罰則の対象となりますから、オシャレやカッコイイ系のファッションのつもりでも、他人が不快に感じレベルの露出は犯罪となります。

 

こじきをする行為

こじきと聞くと、先にご紹介した「ホームレスをする行為と何が違うのだろう」と思われるかもしれませんが、実は二つの行為には大きな違いがあります。

ホームレスは「仕事をせずに家もない状態」のことですが、こじきとなると「物乞い」という要素が加わって来るのです。

つまり街中で、「お金をめぐんで欲しい」などと訴えることが『こじき行為』と定義され、軽犯罪法での禁止事項となります。

なお、条文では「又はこじきをさせた者」と規定していますから、子供に物乞いをさせる行為も規制の対象となるでしょう。

 

のぞき行為

軽犯罪法では、のぞき行為も罰則の対象と規定されています。

但し条文では「人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所」と定めていますから、電車の車内やデパートなど公の場での盗撮・のぞき行為は対象外です。

しかしながら、迷惑防止条例は公共の場での「のぞき行為」を禁じていますから、こうしたケースでは条例違反で罰を受けることになるでしょう。

因みに、刑罰としては軽犯罪法違反よりも、迷惑防止条例の方が遥かに重いものなります。

※のぞき行為の詳細は別記事「プライバシーと法律について考えます!」をご参照下さい。

 

儀式の妨害行為

お祭りや節分等のイベント、結婚式・お葬式など冠婚葬祭において、大騒ぎしてこれを妨害したり、イタズラを仕掛ける行為は軽犯罪法違反となります。

近年では「荒れる成人式」などが問題となっていますが、こうした行為は処罰の対象となる可能性があるのです。

 

川や水路の流れを堰き止める行為

先に解説した「河川等に船などを停泊させる行為」と少々似たものがありますが、こちらは水の流れ自体を堰き止めた場合に適応されるものとなります。

川遊びのつもりで石を積んだ場合にも罰せられる可能性がありますので、ご注意頂きたいところです。

 

公の場での排泄行為等

立ち小便が「犯罪」というのは有名なお話ですが、その根拠はこの条項によるものとなります。

もちろん大きい方も罰則の対象となりますが、実は唾を吐くのも同様です。

また、タバコのポイ捨てなども、この規制によって罰せられますから、決して行うべき行為ではありません。

 

汚物や動物の死骸を指定の場所以外に捨てる行為

例えごみ捨て場であっても、動物の死骸や排泄物を捨てることは禁止されているのが通常ですから、こうした行為は軽犯罪法の適応対象となります。

「伝染病の発生などを防ぐ」という観点からも重要な規制となりますから、ルールは必ず守って頂きたいものです。

 

付きまとい・押しかけ・通行妨害行為

他人に付きまとったり、家に押しかける行為、通れないように立ちふさがる行為は、軽犯罪法にて罰則の対象となります。

但し現在では、ストーカー防止法や迷惑防止条例が施行されていますので、軽犯罪法で取締りを行うことは稀でしょう。

なお、イタズラの王道であるピンポンダッシュは、「押しかけ」の一種とみなされますから、絶対に行わない様にして下さい。

 

共謀行為

「共謀」というと、近年世間で騒がれている「共謀罪」が頭に浮かびますが、それとは少々趣が異なるものとなります。

世間でいう共謀罪は、テロ対策として組織犯罪を取り締まる法律となりますが、軽犯罪法は個人が行う犯罪が対象です。

例えば3人の人間が泥棒を行おうと計画し、実行犯は2名で、もう1名は進入に利用する道具を購入しただけだとしましょう。

この場合、道具を買った人間はあくまで「買い物をしただけ」となり、通常は罪に問うことが出来ないのですが、軽犯罪法ではこうした共謀者も罰則の対象となるのです。

 

動物を嗾(けしか)ける行為

飼っている大型犬などを利用して、相手を威圧してくる不逞の輩がいますが、軽犯罪法はこれも規制対象としています。

またペットを使って、相手のペットを怯えさせる行為も罰則の対象となりますから、ご注意下さい。

 

仕事や商売の邪魔をする行為

当然のことながら、他人の仕事や商売を邪魔する行為は、処罰の対象となります。

もちろん、度が過ぎる場合には信用毀損罪や業務妨害罪に問われることになりますが、これらの規制は「未遂」による適応がないため、軽犯罪法で対処するケースもあるでしょう。

 

立ち入り禁止場所への侵入

世間を歩いていると「立ち入り禁止」という看板等を目にしますが、これを無視すると軽犯罪法で罰せられることになります。

また条文では「他人の田畑」への進入も合わせて禁じていますから、田んぼでザリガニを採る行為等も罪に問われる可能性があるでしょう。

 

看板等へのイタズラ行為

世間には酔った勢いで、「看板を蹴飛す」「持ち帰る」なんてイタズラをする者がいるようですが、これも処罰の対象となります。

また、他人の表札を奪ったり、汚したりする行為も同じく罰せられ、場合によっては「器物損壊罪(3年以下の懲役又は30万円以下の罰金)」や「窃盗罪(10年以下の懲役又は50万円以下の罰金)」に処されることもあるでしょう。

 

軽い詐欺行為

誇大広告や偽りの説明をして商品を販売する行為などは、軽犯罪法違反となります。

内容が悪質な場合には詐欺罪などが適用されることになりますが、比較的罪の軽いものや、他の法律では違反行為とならないケースについては、この法律で罰せられることになるでしょう。

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軽犯罪法違反まとめ

さてここまで、軽犯罪法の違反となる行為についてまとめて参りました。

記事をお読み頂ければお気付きのことと思いますが、軽犯罪法を盾に警察が少しその気になれば、普通に生活しているだけでも逮捕される確率はかなり高いものとなるはずです。

それ故に条文でも「濫用禁止」が明言されているのでしょう。

但しその反面、軽犯罪法は私たちが自分の身を守る上で非常に便利な法律ともなりますから、街中で絡まれた際などには、軽犯罪法を根拠として警察に取締りを依頼するなど、積極的に活用して行きたいものです。

なおこれは余談ですが、数年前まで軽犯罪法の条文には「動物虐待」に関する罪が規定されていたのですが、こちらは動物愛護法という法律が施行され、更に厳しいペナルティーが科せられることとなったため、削除されることとなりました。

ではこれにて「軽犯罪法違反について解説致します!」の記事を締めくくらせて頂きたいと思います。

 

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